2025年度の共通テストから実施される「情報I」。新しく科目が増えるということで不安を感じている受験生の方も多いのではないでしょうか。この記事ではそんな共通テストの「情報」の特徴と対策についてお伝えします。
- 共通テスト「情報1」については2024年段階で試作問題のみ公開されています。参考書等も限られているため、新しい参考書が出版されたり、実際に入試が実施されたりするごとに記事を更新いたします。「記事更新日時点」での情報を掲載していますので、最新の情報に随時ご注意ください。
動画でも「情報I」の勉強法をチェック!
そもそも「情報I」ってどんな科目?なぜ追加されたの?
まず大前提として、共通テストで追加される「情報I」という科目がどんなものなのか見ておきましょう。
2022年に高校に入学した高校生から、新しい学習指導要領での指導が始まり、それに関連して入試で問われる内容も変わっています。
「情報」という教科の指導はもともとの指導要領でも行われていたんですが、これをより重視して入試でも問うようにしたのが、2025年度入試からの共通テスト「情報I」というわけです。
「情報I」ってどんな科目?
「情報I」は、これまでの選択必修科目であった「社会と情報」「情報の科学」という情報教科の2科目を再編集して、2022年入学の高校生から必修になった科目です。
学習内容としては主に次のものが挙げられます。
- 情報社会の問題解決
- メディアの特性、著作権やプライバシーについてなど、情報リテラシーにまつわる内容
- コミュニケーションと情報デザイン
- コミュニケーション手段やデジタル表現について、情報デザインについての内容
- コンピュータとプログラミング
- コンピュータの仕組み、プログラミング・アルゴリズムについての内容
- 情報通信ネットワークとデータの活用
- インターネットの仕組み、データの形式やデータモデル、分析と利用についての内容
実際の授業などではこれらの内容を学習しながら、実際にプログラミングを行ったり、データの分析を行って表現を考えたりと、実践まで取り組むことになります。
どうして「情報I」が追加されたの?
「情報I」は、情報化・グローバル化が進み、人工知能(AI)の発達やIoT(ものの働きがインターネットを通じて最適化されること)の普及などが時代を大きく変えている現代において、そういった時代で今後の技術革新を担うだけでなく、情報社会との関わりについても基本を身につけてもらうために必修化されました。
Society5.0と呼ばれる今後の情報化社会を生き抜くための知識・能力を学習する科目です。
必修化されたこと、また大学での学問への接続を考えたときに身につけておいてほしい能力でもあることから、共通テストでも追加されました。
これにより、国立大学のほとんどで情報科目の受験が必要となるので注意しましょう。
共通テスト「情報I」の配点と出題内容
ここからは共通テストの「情報I」について、問題の内容をお伝えしていきます。
いずれも大学入試センターが発表している「問題作成方針」ならびに「試作問題」をもとに作成していますが、まだ一度も実施されていない試験のため、今後大きく内容や傾向が変わる可能性もある点に注意してください。
令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針|大学入試センター(PDF)
共通テスト「情報I」の設問構成と配点
共通テスト「情報I」の配点は以下のようになっています。
大問 | 内容 | 配点 |
---|---|---|
1 | 小問集合 | 20 |
2 | 情報社会の問題解決、プログラミング | 30 |
3 | コンピュータとプログラミング | 25 |
4 | 情報通信ネットワークとデータの活用 | 25 |
これだけを見ても分かりづらいですが、基本的に第1問で情報科目で習う
- 情報社会の問題解決
- コミュニケーションと情報デザイン
- コンピュータとプログラミング
- 情報通信ネットワークとデータの活用
のそれぞれから総合的に出題され、それ以降の設問でより細かい内容が問われるという形をとっています。
小問集合の配点は小さく、メインとなるのは「コンピュータとプログラミング」「データの活用」など学習内容も幅広い、実践的なものになっています。
共通テスト「情報I」の出題内容
それぞれの大問の内容についても簡単に触れておきましょう。
*出典はすべて「試作問題」「サンプル問題」
第1問:小問集合
第1問は小問集合形式になっていて、試作問題では
- 問1:情報社会の問題解決(4点)
- 問2:情報通信ネットワークとデータの活用(6点)
- 問3:コンピュータとプログラミング(6点)
- 問4:コミュニケーションと情報デザイン(4点)
という設問になっています。
問1では情報リテラシーについての問題として、インターネット上の情報の信ぴょう性を確かめるにはどうするかなど、比較的一般的な内容が問われています。
問2からはきちんと学習していないと取り組みづらい部分で、データの送受信でのエラー判定の仕組み(問2)や論理回路(問3)など最低限の知識は必要とする内容が出題されます。
ただ、いずれの問題も難易度は高くないため、しっかり文章を読み、あわせて授業内容をきちんと復習して取りこぼさないようにしたい設問です。
第2問:情報社会の問題解決・コミュニケーションと情報デザイン・コンピュータとプログラミング
第2問も比較的小問集合に近い内容になっていますが、第1問と比べると骨のある問題になっています。
- A:情報社会の問題解決、コミュニケーションと情報デザイン(15点)
- B:コンピュータとプログラミング(15点)
の大きく2問の構成になっており、問Aでは二次元コード(QRコード)の仕組みについて、問Bではコンピュータでのシミュレーションを活用して作成したデータの利用についてが問われています。
いずれも知識があるだけでは解くことが難しく、知っている知識をもとに実際の事例や仕組みにあてはめて考えることができるかが求められます。
第3問:コンピュータとプログラミング
第3問は一般的に「プログラミング」と聞いて想像するような、ある仕組みを動作させるためのプログラムについて組み立てていく問題です。コード・スクリプトの空欄を埋めるだけでなく、そうしたプログラムを作るまでの思考過程などが問われるため、プログラミング自体が得意であっても意外と時間の掛かる設問になっています。
第4問:情報通信ネットワークとデータの活用
第4問はいわゆる数学の「データの分析」などにも近い設問で、このあたりの単元をきちんと学習している人であればむしろ解きやすいかもしれません。
箱ひげ図や散布図の読み取りを含むデータの分析と活用について正確に理解していれば解ける問題ではありますが、実際のデータを使いながらデータ同士の関係などを正確に見極めていく必要があるため、こちらも根気強く取り組む必要がある設問です。
共通テスト「情報I」の勉強法
ここまでで共通テスト「情報I」の設問について説明しましたが、共通テストらしく、どの分野からも問題が出題され、かつ問題文も長い傾向にあるため対策にも注意が必要です。
特に後半になるにつれて「知識を知っているだけでは解けない」という問題も増えてくるため、正確に理解をした上でスムーズに情報を処理していくことが求められます。
ここからはそんな共通テスト「情報I」の勉強法についてお伝えしていきます。
入試1年前の時点ではまだ参考書が少ない
2024年の前半時点では、情報科目の参考書はまだまだ多くありません。どの出版社も共通テスト実施にあわせて参考書の編集を行っていますが、それでも2024年1月時点では10種類あるかどうか、という程度です。
その上、現段階では「とりあえず出版している」というものも多く、簡単な内容しか掲載されていない参考書や、内容に誤りを含むにもかかわらず見切り発車で出版されている問題集なども混ざりがちなので、そのなかから共通テスト対策に使える参考書を選ぶのは難しい状態です。
対策は「高3の5〜6月」からでも遅くない
「早く対策したいのに、参考書がないならどうやって勉強すればいいの?」と思うかもしれませんが、そもそも「情報I」の対策は5〜6月以降からでも問題ないということが非常に重要なポイントです。
不安に思う気持ちもわかりますが、冷静に考えて「情報I」はそもそも共通テストでしか出題されない科目な上、どの大学でも配点は全体の5%前後しかなく、それよりも配点が少ないということも普通になっています。
大学 | 配点 |
---|---|
大阪大学人間科学部 | 1230点満点のうち情報30点(2.4%) |
神戸大学法学部 | 850点満点のうち情報50点(5.9%) |
北海道大学 | 合否判定には情報の点数を利用しない |
北海道大学のようにそもそも情報の点数を使わない、という大学はほとんどありませんが、情報の点数を使うという大学でもその重要性はそこまで高くありません。
もちろん2段階選抜などでは情報の点数が重要になることもありますし、大学受験では1点以下で合否が決まってしまうということもあります。
それでも、より配点の高い英語や数学で点数を高くしていく戦略のほうが基本的には合否への影響が大きいため、情報科目の勉強の優先度はそこまで高くありません。
個別試験で使う科目や、参考書が揃っているその他の共通テスト科目があいまいなまま、情報科目だけを優先して取り組むのは受験全体を見るといい戦略とはいえいない、というわけですね。
「情報I」を早く始めるならインプットから!
もし、それでも時間に余裕があったり、すでに個別試験の科目に目処が立っていたりする場合は、基本知識のインプットだけ少しずつ進めておくのがおすすめです。
情報の勉強は他の理科や社会の勉強と同じく、映像授業や参考書でインプットしたものを、問題演習で定着させ、共通テスト形式の演習で点数に変換するという流れで取り組むことになります。後半の問題演習で活用できる参考書はまだ多くないうえ、ほとんどの人が情報科目の復習に時間をかけていないはずなので、まずはインプットだけでも進めておくのは効果的です。
基本はインプット→問題演習
インプットとしては大きく2種類、
- 映像授業を使う方法(おすすめ)
- 参考書を使う方法
があります。
【おすすめ】映像授業を使う方法
映像授業でのインプットを活用すれば、スキマ時間も活用しながら理解を深めておくことができます。
すでに大手映像授業サービスの「スタディサプリ」では、「情報I」の講義が視聴できるようになっています。
高1・高2向けの「ベーシックレベル情報I」は、全9講、約15時間ほどの授業で全範囲を網羅することができるため、基本的な内容だけ確認しておきたい、という人にはおすすめです。
勉強法のポイントとしては、動画を見て必ず問題に取り組むことと、わからないところで悩みすぎないことです。あくまで基本のインプットなので、悩んで先に進まないよりも「とりあえず終わらせる」という意識が重要です。
- Step1
- テキストを印刷して講義を視聴する
- Step2
- 問題に取り組む
- Step3
- 間違えた部分の動画を再度視聴する
参考書を使う方法
学校の情報の授業を何も覚えていない、そもそも勉強自体が苦手、という場合は、映像授業を見る前に参考書を活用するのもひとつの手です。
『高校の情報Iが1冊でしっかりわかる本』は、名前の通り1冊でサクッと情報の全分野の考え方を理解することができるので、苦手な場合も取り組みやすくおすすめです。
ただしあくまで「最初の1冊」としての役割なので、この1冊だけではインプットは不十分であることに注意してください。
問題演習の参考書はまだ少ない
2024年前半時点で出版されている参考書はほとんどが基本のインプット向けで、共通テスト形式に合わせた問題集はほとんどありません。おそらく5〜6月ごろから出版されるようになるため、それを待って購入するのがおすすめです。
他の科目で出版されている「共通テスト対策」の参考書であれば、
- 旺文社『集中講義』シリーズ
- 駿台『短期攻略』シリーズ
などが、問題演習や一問一答形式の演習に最適なので、このシリーズが出版されるようであればぜひ活用しましょう。
これらの演習ができれば、あとは共通テスト形式の演習に取り組みます。共通テスト形式であれば
- 河合塾『総合問題集』シリーズ
- Z会『実戦模試』シリーズ
がおすすめです。過去問のない入試になるため、予想問題を徹底活用しましょう。
浪人しても「情報」の勉強が必要ってホント?
ここまでで共通テストの「情報I」について、内容と勉強法をお伝えしてきましたが、実は「情報」科目の勉強は浪人生にも関係がある内容になっています。
浪人して2025年に実施される入試を受験する人も、情報科目が必要かどうか必ず確認してください。
「情報」科目が免除にはならない!
「情報」なんて習っていない、テストしたことも勉強したこともない、という浪人生がほとんどだと思いますが、共通テストで「情報」を課す国公立大学であれば、基本的に浪人生でも「情報」の受験が必須になります。
いちおう学校でも「情報」という教科自体は履修しているはずなので、「浪人生だから情報は免除」ということにはならず、追加で情報の勉強をする必要があります。
浪人生は共通テストで「移行措置」問題を解く
ただ、現役生と同じ問題を解くわけでもありません。学習指導要領が変更になる場合には、基本的に浪人生向けに「移行措置」として旧課程の内容で作られた問題を選択できる制度が準備されます。「情報」の場合、旧課程では「社会と情報」「情報の科学」という2科目のうちどちらかは履修するカリキュラムになっているので、この2つから選んで解答できる問題を解くことができます。
具体的には、
- 第1問の1〜2、第2問Aは共通問題
- 第2問のB、第3問は選択問題
- その他の問題は旧課程オリジナルの問題
という形で、一部新課程の入試と同じ問題を使いながら、分野によっては選択問題にすることで対応しています。
勉強する分野は減ることになりますが、その分深い問題が出題される可能性もあるのが難しい部分です。
「どうせゼロから勉強するんだから全範囲勉強して、新課程の問題を解く」という選択も可能ですし、「どうせ60点くらい取れればいいから、勉強する範囲を減らすために旧課程の問題を解く」という戦略もとれます。
悩ましいところですが、基本的には新課程の問題のほうが受験者も多く、解きやすいように作られる傾向にあるのでそちらがおすすめです。
浪人生の共通テスト「情報I」対策は、次の記事でも詳しく書いています。
まとめ
今回は共通テスト「情報I」について、具体的な内容と勉強法をわかっている範囲でお伝えしました。
- 幅広い問題が出題
- プログラミングやデータの分析と利用、インターネットの仕組みや情報リテラシーなど、幅広い内容が出題される
- 参考書は6月以降
- 市販の問題集が増えるのは5〜6月以降。それまでは「スタディサプリ」などのインプットにとどめ、他の科目を優先しておこう
- 浪人生も「情報」の勉強が必要
- 浪人生も新たに「情報」の勉強が必要になるので、早めに勉強を始めておこう
入試が変わる初年度は情報も少なく混乱してしまいがちですが、重要なのはそもそも情報教科の優先度は高くないということです。大学入試はあくまで「合計点勝負」ですから、科目の優先度を間違えずに取り組んでくださいね。
学習塾STRUXでも、もちろん情報科目の対策、他の科目とのバランスについて計画を立てて指導しているので、気になる方はぜひ活用してみてください!