こんばんは!STRUX塾長の橋本です!
今回の「大学入試の志望校別対策シリーズ」は、これまでずっと対策をお伝えしてきた早稲田大学と双璧をなす(といったらもしかしたらいらぬ対立が生まれるかもしれないのですが)「慶應義塾大学」の入試対策について。今回は中でも「文学部」をピックアップして見ていきましょう。慶應義塾大学の対策の根幹となる「小論文」についてもしっかり触れていますから、是非参考にしてください!
慶應義塾大学文学部(一般選抜)の試験情報
期日 | 2月15日 |
共通テスト | 不要 |
科目 | 独自試験:英語・小論文・選択科目 (地理歴史:世界史B・日本史B・から選択) |
2021年度入試より一般選抜において主体性評価などの自己評価を出願時に提出することになっています。
慶應義塾大学では文系学部のほとんどはこの3科目受験となっています。商学部・経済学部は「数学」を利用する方式もありますが、これらは国公立志望の人の併願として使うことも多く、レベルは高くなっています。なんと言っても特徴は小論文ですが、文学部の小論文は比較的オーソドックスな読解と意見の論述であるため、対策もしやすくなっています(後述)
併願のパターン
小論文があるため併願に悩むのですが、いくつかのパターンを紹介しておきましょう。
絶対に慶應に行きたい!慶應の他学部で併願するなら
「慶應に憧れているから、絶対慶應に行きたい!」「慶應でいくつか受けるつもりだけど……」という人は多いのではないでしょうか。慶應義塾大学の中でいくつかの学部を併願するとしたら、なるべく小論文の傾向が近いところを受験するのが得策でしょう。学部自体に選択肢がそこまで多くないので難しいところですが、内容を気にせず受けるのであれば「法学部」「経済学部(B方式)」が候補となります。法学部も経済学部も進学後の学習内容は大きく異なるため、このあたりは考慮して受ける必要がありますし、法学部は倍率も高いため難易度も必然的に高くなります。
併願は「経済学部」のみに絞り受験するというのは一つの手です。入試形式・難易度ともに適切なレベルでしょう。
場合によっては、現役生の場合「慶應に絶対受かりたい、慶應にしか行くつもりがない」ということで慶應の対策に特化することも可能ではあります。その場合古文や漢文に全く触れなくて良い代わりに、浪人した際に手広く受けるとなったら改めて古文漢文を学び直す事になってしまいます。
文学部系で他に受験するなら、共通テストを利用しない形式で絞るのもありだが……
慶應より下のレベルで併願校を決めていく場合、慶應の形式がそもそも特殊であることを一定程度考慮しておく必要があります。共通テストも不要な大学・学部であれば明治大学や法政大学が挙げられますが、いずれも文学部では古文・漢文ともに必須になるため、これらの科目を一定程度勉強しておく必要があります。
成蹊大学や専修大学などになってくると、文学部でも漢文が不要になってきます。少しでも入試科目を減らしたいという場合、かつ大学にこだわりがない場合はこれらの大学を押さえに入れておくとよいでしょう。ただそれでも古文の学習は必須になります。
理想としては早い段階に古文・漢文のキホンは固めておき、マーチレベルの大学の古文・漢文の直前対策をなるべく軽くしておくことですね。
ぶっちゃけ「早稲田との併願」はどう?
「なるべくレベルの高い私立に行きたい!」ということで早稲田大学と併願することもしばしばありますが、あまりおすすめはできません。やはり慶應の入試形式が特殊で、早稲田レベルの国語(現代文・古文・漢文)で合格点を目指すとなるとある程度対策に時間を取られてしまうためです。また、早稲田の英語と慶應の英語でも求められるものが大きく違うという点も考慮すべきです。早稲田の英語の多くは量の多い長文を短い時間で処理する処理力・速読力が求められますが、慶應、とくに文学部の英語は長文1題をしっかり読み取り解答を記述することが求められます。さらに慶應文では日本語を英語に訳する形式での英作文が出題されますが、早稲田で英作文の対策をしようとすると原則自由英作文になるため、ここも注意しておきましょう。
このように傾向が異なるため、近い難易度とは言え異なる対策が必要となり、時間に余裕がなければどちらも対策をきちんとするのは難しく、中途半端になってしまうので注意が必要です。
国公立難関校との併願はおすすめ
私大との相性があまりよくない一方で、東大・一橋・京大といった最難関国公立大学と併願するには好都合です。というのも慶應文は英語・小論文など記述式の問題が多く、私大の中でも国公立の問題と相性が良いからです。私大の歴史だと一問一答形式が多く細かい知識を入れ直さないといけないのでそれだけ注意しておきましょう。
慶應義塾大学文学部の配点と目標点数
つづいて、慶應義塾大学文学部の配点と目標点数について確認していきましょう。
慶應義塾大学文学部の科目・配点
外国語 | 150点 |
小論文 | 100点 |
社会(日本史・世界史) | 100点 |
小論文が特殊な形式とはいえ、配点としては英語が一番高くなっています。
目標点数
慶應義塾大学でも例年得点状況を発表しています。社会2科目については特典の補正が実施されていますが、ここでは補正前の点数を見ていくことにします。
例年の合格最低点
- 2020年度:250/350点(71.4%)
- 2019年度:233/200点(66.6%)
各科目の受験者平均点
英語
- 2020年度:99.38/150点
- 2019年度:88.46/150点
小論文
- 2020年度:56.17/100点
- 2019年度:53.63/100点
日本史
- 2020年度:55.94/100点
- 2019年度:58.54/100点
世界史
- 2020年度:63.91/100点
- 2019年度:52.28/100点
過去2年の合格最低点はだいたい65%〜72%と比較的早稲田などと比べると高くなっています。内訳で見てもやはり英語が受験者平均としては高く(60%〜65%)、それに比べると他の科目は5%ぶんほど下がる傾向にあります。いずれにせよ英語の配点が高いため、英語できちんと得点が取れていないと厳しい戦いにはなるでしょう。
目標点の例……260点
英語 | 125/150点 |
小論文 | 60/100点 |
社会 | 75/100点 |
正直、小論文で高得点、しかも安定した点を取るのは難しいです。もちろん丁寧な対策は必須になりますが、高得点を狙うよりも他の科目(英語・社会)で8割近く狙っておくほうが確実です。英語は問題数が少なく時間もたっぷり取られているため、難易度のわりにひとつひとつ対策をしておけば高得点を取りやすい科目ですし、社会も取るべき問題をしっかり取れるようにしておけば十分高得点は期待できます。これらの2科目で8割近くをとっておき、小論文で余裕をもたせていく、という方針が基本になるでしょう。
慶應義塾大学文学部・科目別の勉強法と問題攻略
最後に、科目別の勉強方針を軽くまとめておきましょう。
時系列・やるべき科目と対策
一番悩むのは「小論文にいつから取り組むか」というところなのではないでしょうか。小論文は「すぐに点数が上がる」わけでもないですし、かといって「対策しないと悲惨な点数になる」という難しい科目。ただし、対策すれば必ず一定の点は取れるようになるので、遅くとも高3の夏前、7月ごろからは練習をしておくべきでしょう。文章を書くことが苦手、何か構成を整理して書くのが苦手という人はもう少し早く、5〜6月には手を付けたいところです。
小論文をこのペースで進めないといけないため、英語・社会はもう少し早くから取り組んでおきたいところ。併願校で古文・漢文が必要になる場合は夏以降これらも多少であっても対策をしないといけないうえ、社会も直前期には叩き上げたいということを考えると、英語は高3の7月にはすでにセンター試験・共通テストレベルは時間を気にしなければ満点が取れるレベルにしておかなければいけません。高2のうちに基礎を固めきり、高3前半で読解を仕上げるつもりで取り組んでおきましょう。
英語
慶應義塾大学文学部の英語はなんと大問が1つだけ。1500〜2000語前後の「超長文」1つが出題され、その長文を元に「空所補充」「下線部の内容説明」「和訳」などをこなしていきます。問題数自体も8〜10問程度で120分すから、時間を気にして焦りながら解くというよりも、1問1問を正確に解いていくことが求められます。
ただ、時間があるからと言ってじっくり解いているといつのまにか時間がなくなる、ということは起こります。予め「文章を読むのにどのくらい時間がかかるか」「解ける問題から確実に解いていく」ということを徹底していきましょう。
私大対策をしていて厄介になるのが英語の「記述式問題」。「下線部が示す内容を30字以内の日本語で説明しなさい」というようなものはもちろんですが、毎年必ず「100字以上120字以内の日本語で説明しなさい」という問題があるのが特徴です。こうした問題に加え和訳問題も出題されるため、「基礎英文解釈の技術100」や「ポラリス2」「ポラリス3」などでしっかり対策をしておくようにしましょう。
単語はそこまで難しくは無いため、「ターゲット1900」を完璧にしていればひとまずは十分です。英単語・英文法を高2〜高3の5月頃までに固めきり、高3の夏前には解釈、「ポラリス1」レベルまでできるようにしておきたいところです。
英作文は「和文英訳」が1つだけ出題されます。長文が苦手な人はなおさらこの部分は確実に取れるようにしておくべきところなので、「ユメサク」「英作文のトレーニング必修編」などで書ける例文を増やしておくのはもちろん、過去問で演習をしっかりしておきましょう。
小論文
文学部の小論文は例年以下のようなテーマで出題されています。
- 2020年
- グローバル化と多様性の議論・「集団に属する」ということについて
- 2019年
- メリトクラシーに関する議論・「能力」について
- 2018年
- アレントの「意志概念」などにまつわる話・「自由」について
- 2017年
- 「Living for today」という概念について・「分け与えること」について
こうしたテーマの問題が出され、設問は「300〜400字での要約」と「〇〇についてあなたの考えを述べなさい」という300〜400字での論述の2つが課されます。そのため、ただ自分の意見を整理して書く能力だけでなく、与えられた課題文を正確に理解し、要約する力も求められるわけです。この「要約」の部分で確実に点を取れるかどうかが、小論文の得点を安定させる上でのポイントです。
これらのことから、小論文を「書く」ということ以前に、まず課題文をきちんと読み取る必要があるとわかります。そのためにはなにより現代文のスキルが必要です。「システム現代文」シリーズで読み方をきちんと会得するのはもちろん、難易度の高い文章を「入試現代文のアクセス完成編」「ちくま評論選」などで読み、要約する練習をしておくべきです。もし余裕があればこれまでに触れた現代文の内容のうち社会学に近い領域の内容について軽く専門用語を調べておいたり、過去問で出た内容について背景として知っておいたりするとよりよいでしょう。
読み取ることができれば正確に要約します。要約では「具体例を排除する」「文の論理関係を崩さない」ということが重要です。いわば文章の「縮小コピー」をするつもりで練習し、必ず添削してもらうようにしましょう。
自分の意見を述べる設問も、あくまで「本文の内容を踏まえ」る必要がありますから注意が必要です。本文で述べられていたことに乗っかるのもよし、それを元に反論するのもよしですが、「本文の論理が読み取れていないな」と思われないよう意見をはっきりさせ、伝えたいことを1つに絞って書くことを忘れないようにしてください。
社会
歴史科目(日本史・世界史)は、高2の冬〜高3の春くらいには学校のペースより少し早めに「スタディサプリ」などで通史の理解を進めて、高3の夏前には一通り全範囲を終えたいです。慶應の歴史科目は早稲田大学同様に難しい単語がでるイメージがありますが、重要なのはあくまで「基本的な単語を、歴史の流れとセットで覚える」ことです。早くから一問一答で難しい単語を覚えても、歴史の流れがわかっていないと問題を解くことは出来ませんから、高3の9月くらいまでは「詳説ノート」など穴埋め形式の問題集で流れとセットで基本単語を押さえます。難しい単語もでるとはいえ基本単語が押さえられれば8割は取れる問題ですから、まずはそこで絶対に点を落とさないようにしていきましょう。
まとめ
慶應義塾大学文学部は小論文もオーソドックスでレベル的にも慶應の中でも比較的受けやすい学部です。ただもちろん相応の対策は必要で、特に英語・小論文はある程度特化した対策が必須となります。早めに志望校を決めたら、慶應特化の勉強を進められるよう早めから準備をしておきましょう。
お知らせ!
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それでは!
ライター:橋本拓磨
東京大学法学部卒。学習塾STRUX塾長・STRUX大学受験マガジン監修。日本全国の高校生に、場所によらず正しい勉強を広めて、行きたい大学に行き、将来の選択肢を広げてほしい!という思いからSTRUXマガジンを監修。
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