授業中眠くなった時の対処法は、シャーペンで自分の手を痛めつける事でした。
睡魔との戦いに勝てた覚えはありません。
こんにちは!
STRUXマガジン編集部の橋本です。
午後の授業の眠気と毎日戦っている人は、少なくないはず。
満腹感もプラスされて、自分の意思では授業中の眠気をどうすることもできません。
寝るつもりはなかったのに、寝てしまい先生に怒られた……。
そんな経験も多いのではないでしょうか?
どうしようもない眠気に、私たちは勝てないのでしょうか?
今回は、午後の授業の眠気が抑えられない理由と、その解決策についてご紹介します!
そもそも、どうして午後の授業では眠くなってしまうのでしょうか?
昼食でお腹いっぱいになっているから眠くなってしまうのだろう、と思っている人も少なくないはずです。
「食べたものを消化するために胃に血液が集中しているから、脳に十分血液が届かず、酸素が行き届かないためぼーっとして眠くなる」
……なーんてことを聞いたことがある!という人もいるでしょう。
しかし、これは間違いです。
脳は人間のとても重要な器官。そのため、脳内に血液が行き渡らなくなり酸素の供給不足になる……なんてことはまずありません。
いいえ。
この眠気の元凶は「お昼ご飯を食べて満腹になってしまったから」だけではありません!!
実は、午後の眠気はお昼ご飯を食べても食べなくても、食べる時間や食べる量をコントロールしても変わりません。
どんなに食べる時間をコントロールしても、いつもと同じ時間に眠気は襲ってくることが確かめられています。
(出典:眠気の日内変動|林光緖)
午後の授業で眠くなってしまう本当の理由はなぜでしょうか?
これから午後の眠気が起きるメカニズムをお教えします!
人間の眠くなる時間帯は2~4時、14~16時である。
そもそもこの時間帯は人間の生活リズムとして、眠くなってしまう時間帯です。
人は誰しも24時間を周期とする概日リズム「サーカディアンリズム」に睡眠と覚醒をコントロールされています。
「覚醒」とは。
脳の目覚めの程度のこと。一般的に覚醒が下がるとぼんやりした状態になり、上がると興奮した状態になるといわれています。
だから夜になると自然に眠くなり、朝になると目覚ましがなくても自然と目が覚めたりします。
そしてこの概日リズムにはいくつか種類があります。
昼過ぎの眠気を引き起こすものはその中でも、リズムを12時間を周期とする「サーカセメディアン・リズム」です。
下の図は、ヒトの眠気にみられるリズムを表したものです。
横軸は時刻で縦軸は入眠確率です。
P. Lavie. Ultradian rhythm: gates of sleep and wakefulness. Ultradian Rhythms in Physiology and Behavior, Schulz H, Lavie P, eds, Springer-Verlag, Berlin, 148-164, 1985
この図を見ると、16:00前と24:00後で入眠確率が上がっています。
つまり、夜ほどではないですが、昼過ぎにも入眠確率が上がっているんですね。
午後に眠くなるのは、この「サーカセメディアン・リズム」の影響によるものです。
食事による血糖値上昇が覚醒を妨げる
脳の覚醒は「オレキシン」という物質がオレキシン作動ニューロンによって作られ分泌されることによって起こります。
オレキシンとはアドレナリンやドーパミンなどで知られる”脳内ホルモン“といわれている物質です。
血糖値が上がると、このオレキシン作動ニューロンからオレキシンが分泌されづらくなるため、脳の覚醒が弱まります。
食事による血糖値の上昇がオレキシンの分泌を妨げて、眠気が起きているということです。
さらに現代人は飽食です。
必要以上にエネルギーとなる糖質を摂りすぎることで、オレキシンが分泌されず日中に眠気が起こってしまうというわけですね。
高校生の大半は睡眠不足
学生は人生で最も睡眠不足な時期とされています。
学生の睡眠不足について調査した結果を見ると、学年が上がるにつれ、睡眠時間は減少していく傾向にあり、高校生の睡眠時間は最も少ない傾向にあります。
「最近、睡眠不足を感じている」と答えた学生は男子 42.4%、女子 51.8%であり、半数近くが睡眠不足を感じています。
さらに、子供の生活時間の調査データによると、高校生の約半数が睡眠時間6時間を切っています。
眠気耐性と睡眠時間について調べた実験によれば、「眠気耐性あり」と答えた大学生と「眠気耐性なし」と答えた大学生の睡眠時間を比べると、「眠気耐性あり」の学生は6~7時間睡眠が一番多い結果になっており、眠気耐性なしの学生は5~6時間睡眠が一番多い結果になっているそう。つまり、眠気耐性がないと答える学生のほとんどは睡眠時間が6時間を切っていたということになりますね。
睡眠時間が6時間を切ると、大抵の人が日中の眠気に耐えられず寝てしまう……ということが言えそうです。
午後の授業で強烈な眠気に襲われるのは、
- ヒトの生体リズム的に睡眠がきやすいから
- 昼食によってホルモンバランスが乱れるから
- そもそも高校生の睡眠時間は少ないから
という3つの要因が重なっていることによるんですね。
たしかに「生体リズム」「昼食によるホルモンバランス」は調整が難しいですが、あの午後の強烈な眠気はほとんどが「高校生が睡眠不足だから」こそ起きています。
睡眠不足が解消されれば、生体リズムや血糖値の影響で覚醒の度合いが下がったとしても、眠気に耐える事は十分にできます。
ではその元凶となる「睡眠不足」ですが……なぜこんなにも高校生は睡眠不足になってしまっているのでしょうか??
高校生の睡眠時間が6時間を切っているといわれているので、学校に朝8時すぎに登校しなくてはいけないとすると、夜中の1時近くまで起きている人が半数近くいる事になります。
なぜそんな時間まで起きてしまうのでしょうか?
帰宅時間が遅くなり、課題や勉強で寝るのが遅くなる
高校生になると、授業も難しくなったり、課題の量も増えたりして、勉強時間が長くなってしまいます。
このため、遅くまで起きている事が珍しくないでしょう。
また受験勉強のために学習塾に通い始めたり、そもそも部活動に所属していたりすると、高校に入ってから帰宅する時間が段違いに遅くなってしまう!といった事もあります。
部活や学習塾で帰宅時間が21時近くになると、夕飯をとったり風呂に入ったりするのが22時から23時、そこから課題や勉強に時間を使うとあっという間に24時を超えてしまいますよね。
高校に入り授業の難易度や課題の量が増えたことで、勉強時間が増えたにもかかわらず帰宅時間が遅くなってしまうことが、睡眠時間を圧迫している要因の一つになっています。
携帯電話を夜遅くまで触っている。
友人と連絡を取り合ったり、SNSやYoutubeなどに時間を使ってしまったり……。
携帯を触っている時間が楽しくて、なかなかやめることができずに睡眠時間を圧迫しているといった事もここ数年でよくあります。
携帯の1日の使用時間帯をまとめた資料によれば、高校生男女の場合0~3時の時間帯での使用率が中学生とまで比べて高くなっています。
携帯を触っている時間が睡眠時間を圧迫しているのはもちろんのこと、実は、携帯を寝る前まで触っていると寝つきが悪くなり、結果的に睡眠不足につながります。
携帯電話の明かりに含まれるブルーライトは、昼に活性化を促すものになります。
そのため、夜にブルーライトを浴びるとブルーライトを含む明るい光を昼と判断してしまい、体内時計に作用して睡眠を促すメラトニンの分泌が抑制されます。
これによって、眠れなくなる・眠りが浅くなってしまうと考えられています。
寝る直前まで携帯を触っていると、いざ寝ようと思っても脳は覚醒しているためなかなか寝付けずに睡眠不足になっているんですね。
仮眠のとり方が悪い。
睡眠不足になってしまうと、日中の授業で寝てしまったり、通学中の電車で寝てしまったりします。
実は、日中寝れば寝るほど、夜の睡眠の質を下げる事につながります。
睡眠を初めてから30分ほどたつと、深い眠りに入る「深睡眠」のモードになります。
この「深睡眠」のモードになると、目覚めの際に睡眠慣性という作用が働きやすく、頭がボーッとしてしまいます。さらに、昼のうちにこの「深睡眠」モードで長い時間寝てしまうと、夜深い眠りにつく事ができず、浅い眠りばかりで睡眠不足につながります。
そして、夜の睡眠が十分でないため、また日中に寝てしまい、また夜の睡眠の質を悪くしてしまう……という負の循環に陥ってしまうのです。
高校生にとって睡眠不足は身近であり、午後の授業の眠気を加速させるような状況にあるといえます。
これを解消するために、午後の授業の眠気を耐えられる状況を日頃から作り出しておくこと、つまり、睡眠不足を解消しておくことがが重要になります。
では、具体的にどのようなことをやっていけばいいんでしょうか?
概日リズムを整えることからはじめよう!
生活習慣が乱れてくると、概日リズムが乱れて夜眠れなくなり、その結果日中眠くなってしまいます。
この概日リズムを整えるには、毎朝日光を浴びることが効果的です。
日光を浴びる事で。体内時計がリセットされます。毎日決まった時間に体内時計をリセットさせる事で、夜にしっかりと眠気が発生し、概日リズムが整う事につながります。
毎朝カーテンを開ける暇なんてないよ!面倒だ!
という人は、カーテンを少しあけて朝、日光が自分の顔に当たるような部屋の配置にして、強制的に日光を浴びましょう。
窓が部屋にない・窓の位置的にできない人は、朝起きたら部屋の電気をつけましょう。
特に効果的なのはLEDライト。LEDライトにはブルーライトが多く含まれているので、脳の覚醒を促す事ができ、概日リズムを整えることにつながります。
スマホは寝る2時間前には見ない
夜寝る前は逆に、ブルーライトには気をつけましょう。
睡眠を促すメラトニンは朝の光を浴びると一旦収まりますが、その約15時間後から再び高まり、体を徐々に睡眠モードへと誘います。
朝7時に起きる人なら、22時くらいから分泌量が増えてくるはずですが、この寝る前の時間にブルーライトを浴びることで体が昼の時間と勘違いしてしまい、メラトニンが抑制されてしまうのです。
携帯だけでなく、テレビなども液晶画面をみる時間を決めてブルーライトをコントロールできるようになりましょう。
夜は携帯を充電しているはず。ベッドから手の届く位置で充電をしていると、連絡がきてついつい確認したくなり触ってしまいます。
なるだけ自分の手の届かないところに携帯を置いておくことで、寝る直前まで携帯を触ることを防ぐことができるはずです。
そして、部屋の電気は消して寝ましょう。
電気をつけて寝るとブルーライトを浴びたまま寝ることになるので、睡眠の質は確実に落ちてしまっています。
いくら睡眠量を増やしても睡眠の質は悪いため、寝起きが悪かったり、日中の眠気に耐えることができない原因につながります。
1回の仮眠は20分以内に収める。
深睡眠にならない程度での仮眠によって、午後の眠気や作業成績が改善することがわかっています。
仮眠効果が得られる最短の時間は9分と言われているので(個人差はあります)、授業の間の10分休みで仮眠しておけばしっかりその効果が得られますね。
10分間の休み時間を使って仮眠を取るだけでも、午後の授業中にうっかり寝てしまうといったことがなくなり、さらに仮眠を取ることで作業意欲や快適な気分が向上することもわかっています。
どうしても授業中眠くなってしまう人にさらにアドバイス!!
どうでもいい時間にしてしまわない。
緊張感のある授業は、眠くなる午後の授業でも自然と眠くならなかったりしますよね。
逆に緊張感なく、「つまらないな〜」「あんまり意味ないな〜」と思って聞いていると、授業中でもすぐ眠くなってしまいます。
そういうときは、午後の授業への取り組み方を考えましょう。
自分がどう授業を受ければ成績がよくなるか?
その授業の重要度を自身でも理解した上で授業に臨むことで、授業への意識が高まり、勉強へのモチベーションが上がることで眠気が抑えられることもあります。
午後の授業が眠くなってしまう理由と、その解決策をご紹介しました!
午後の授業の眠気は、高校生の睡眠不足を解決することができれば、実は耐えられるレベルの眠気です。
勉強が忙しい中でも、自分の生活習慣を意識して睡眠時間の確保や質をあげることに取り組むことはできるはずです。今回の記事を参考に睡眠不足の解消をしてみてはいかがでしょうか!