大学受験の国語・現代文入試で出題される「漢字の書き取り・読み」問題、みなさんはどのくらい対策しているでしょうか。
「今までは学校でも漢字の練習をしていたけど、高校でもやるべきなの?」「大学受験で漢字の勉強ってどのくらいやっておくべきなの?」といった疑問から、漢字の対策をとりあえず先延ばしにしてしまっている、という人もいるかもしれません。
そんな方に向けて、今回の記事では大学受験における漢字対策の必要性がどのくらいかということ、そして具体的な勉強法についてお伝えしていきます。
そもそも大学受験で漢字の勉強はすべき?
高校受験までは、漢字で落とすのはもったいない、確実に点を取ろう、と言われていたかもしれませんが、何を覚えるべきかもわからず、数もものすごく多い大学受験の漢字をどのくらい対策する必要があるのでしょうか?
ほとんどの場合「漢字だけの勉強」は優先度が低い
結論から言うと、大学受験における漢字の勉強は優先度が低いといえます。
大学入試で漢字が出題されるのは、
- 共通テスト:5問(10点/200点)
- 国公立入試:0〜5問
- 私立入試:0〜10問
ほどが相場で、聞かれても10個程度になっています。
共通テストなどでは「同じ読みだが異なる漢字」の選択肢から正しいものを選ぶことになるためたくさんの漢字について知っている必要がありますが、問題数としてはそこまで多くありません。
逆に、覚えなければならない漢字の数は高校入試までと比べても格段に多く、範囲が決まっているわけでもないため実質「覚えられるだけ覚える必要がある」ということになってしまいます。
こうなると、覚えなければいけない漢字の量の割に出題される際の配点が高くないという、コスパが悪い状況になってしまうんですね。
もちろん、大学入試では1点を争う状況になることもあり、1点差で不合格になってしまったという状況も起こり得ます。数点の差で不合格になるのが大学入試ですから、「やったほうがいい」勉強であることは間違いありません。
しかし、他の科目の勉強と比べればどうしても優先度が下がってしまうため、全てをじっくり勉強する余裕がない場合などは漢字を後回しにして、英語や数学、社会の勉強を優先したほうがいいでしょう。
漢字は「共通テストの過去問」でも対策できる
このように対策の優先度自体はそこまで高くない漢字ですが、国語の共通テストを受験する人は効率的に対策をすることも可能です。
共通テストを使う場合は、共通テストやセンター試験の過去問に掲載されている漢字の問題をすべて解ける・書けるようにしておくだけで効率よく漢字を覚えることができます。
共通テストの漢字問題はこのようなもので、「同じ読みの漢字を選択肢でいくつか並べて、その中から問題の傍線部と同じ漢字を選ぶ」という問題です。
そのため、「同じ読みの漢字が5個以上あるもの」しか問題にできず、自然と出題できる漢字が限られてきます。つまり、過去問をたどると同じ漢字がこれまでに何度も出題されているということです。
共通テスト・センター試験の過去問を使えば、1年分で(問題1つ+選択肢5つ)×5問=30個の漢字テストをすることができます。30年分やれば900回、出題頻度の高い漢字のテストをすることができるため、時間がない場合は共通テスト・センター試験の過去問で出題された漢字を完璧にしておくだけでも効果的です。
このとき、毎回選択肢の漢字まで書けるかチェックして、書けなかったものは繰り返し解いて覚えるようにしましょう。
大学受験できちんと漢字を勉強すべき人
ここまで
- 漢字の優先度は低い
- 共通テスト過去問でカバーできる
という話をしましたが、中には問題集を使ってしっかり漢字を覚えたほうがいい人もいます。
それは大きく分けて
- 現代文や漢字の配点が高い人
- 小論文や記述問題が出題されるが、漢字が苦手な人
の2パターンです。
現代文や漢字の配点が高い人
- 私大などで知識問題が多く出題される
- 英語・現代文の2科目受験で国語の配点が相対的に高くなる
という場合は、漢字が占める配点が高くなるため、ある程度時間をかけて対策したいところです。
具体的には、漢字だけで大問1つ分を占めている駒澤大学や専修大学、大問1つに加えて現代文の大問中でも漢字を尋ねる学部がある学習院大学や東京経済大学、書き取り問題やそこから発展して熟語・慣用句なども問うことがある成蹊大学・成城大学などを受験する場合は、入試の難易度も高いため漢字で確実に点を取っておきたいところです。関東圏以外であれば名城大学、龍谷大学、西南学院大学なども、一定の難易度の漢字問題や語彙問題の比率が高いため注意したいところです。
国公立でも東京大学では毎年5問、北海道大学では7問の漢字が出題されているほか、東北大学、名古屋大学などの旧帝大、それ以外でも熊本大、広島大などで一定数の漢字が出題されます。記述問題が多いため漢字の書き取り問題も出題しやすくなっており、逆に出題が少ないのは京都大学、千葉大学などにとどまります。
また、国士舘大学や亜細亜大学、拓殖大学などでは英語・国語(現代文)のみで受験できる入試方式も多く、こういった大学では現代文の比率が高くなるため問われる漢字のレベル自体は高くなくとも、確実に取れるようにしておきたいところです。
- 漢字が多く出題される私大
- 学習院大学、駒澤大学、専修大学、東京経済大学、成蹊大学、成城大学、名城大学、龍谷大学、西南学院大学など
- 漢字が多く出題される国公立大
- 東京大学、東北大学、北海道大学、名古屋大学などほとんどの旧帝大、広島大、熊本大など
- 2科目受験で漢字の比率が高くなる大学
- 亜細亜大学、国士舘大学、拓殖大学など
ここではあくまで2023年度入試までの一例を挙げているので、必ず自分が受験する大学の過去問をチェックして、漢字が4〜5問以上出題されるようなら対策を検討するといいでしょう。
小論文や記述問題が出題されるが、漢字が苦手な人
もう1つ、漢字の勉強をしておきたいのは、小論文が出題される慶應義塾大学を受験する場合や、国公立大で記述が求められる場合です。記述であれば当然正しい漢字を正しいときに使えなければいけませんから、練習をしておくのは当然のことです。
ある程度普段から勉強をしていて、漢字に苦手意識がない場合は問題ないですが、添削などを受けて漢字のミスを多く指摘されるようであれば、早めに基本的な漢字の練習はもちろん、丁寧に漢字を書く練習や記述・論述でよく間違う漢字を洗い出しての練習をしておきましょう。
また、国公立大を受験する場合は必ず共通テストでも漢字が出題されます。共通テストの漢字問題で半分も正解できないようであれば、記述にも支障をきたす可能性が高いため、過去問等で練習しておきましょう。
大学受験の漢字勉強法
ここまで「どのくらい漢字の受験勉強をすべきか?」といった話をしてきましたが、当然時間があるなら対策したほうがいいですし、対策をするなら正しいやり方で取り組まなければいけません。ここからは、漢字を勉強するときの具体的な方法と、勉強の注意点を「書き」「読み」それぞれお伝えします。
漢字の具体的な勉強法
まず大前提として、漢字の勉強は時間をかけすぎず、1日15分程度を目安にコツコツ続けることがポイントです。1日にまとめてやるよりも、一定の範囲を何度も繰り返して取り組むようにしましょう。
漢字の「書き」の勉強法
漢字の「書き」の勉強は比較的イメージしやすいかもしれません。
- Step1
- 赤シートで隠しながら、1ページ分の漢字を書いてテストする
- Step2
- 間違えた漢字に印をつけて、意味を覚えて、5回書く
基本的には、漢字を隠してテストし、間違えた漢字は何度も書いて覚える、を繰り返す事になります。
2周め以降は、1回目で間違えた漢字のみ取り組めばよいでしょう。
漢字の「読み」の勉強法
少し悩むのが漢字の「読み」の勉強法です。読み取りは一見簡単に思えますが、その分書き取りよりも難易度の高い漢字が出題されることがあるため、普段使わない漢字や熟語だと苦戦することがあります。
- Step1
- 赤シートで隠しながら、1ページ分の読みを書いてテストする
- Step2
- 間違えたものは印をつけて、読みと意味を覚える
- Step3
- そのページの読みをすべて答えられるようになるまで、1ページを繰り返しテストする
- Step4
- 完璧になったら次のページに進む
「書き」と異なるのは、「何度も繰り返し書く」という覚え方が通用しないため、その場で繰り返しテストをして覚えていくという作業が入る点です。
このときも、最初のテストでは一度読みを書いて、「だいたい合ってたから○にしちゃおう」となってしまうのを避けましょう。
2周め以降は書いてテストする必要はないため、同様に間違えた問題だけを何度も繰り返しテストしてください。
漢字の勉強で注意したいポイント
「読み」「書き」の勉強に共通する注意点が3つあります。それは
- 必ず「書いて」テストすること
- 間違えたものには必ず印をつけること
- 漢字だけでなく、その熟語の意味も覚えること
の3つです。
必ず「書いて」テストすること
漢字は必ず「書いて」テストしましょう。漢字の「書き」を書いてテストするのは当然ですが、漢字の「読み」についても最初はうろ覚えや勘違い、適当になってしまうことを防ぐために書いてテストしてください。
頭の中ではイメージできても、書いてみると意外と書けないということが起こります。
間違えた漢字の「書き」も、何度も書いて覚えましょう。正しい形で繰り返し書かないと意味がないため、きちんと答えをよく見て、細かい点の有無などを間違えないようにしてくださいね。
間違えたものには必ず印をつけること
これも漢字に限らず大前提となることですが、何度も繰り返しとく時に、すでに書ける漢字を繰り返しても時間の無駄です。必ず間違えた問題だけ印を付けておいて、効率よく繰り返せるようにしましょう。
漢字だけでなく、その熟語の意味も覚えること
ただ漢字を覚えるだけではもったいありません。せっかく漢字の勉強をするのであれば、その熟語がどういう意味なのかもあわせて覚えておくのがおすすめです。
漢字の問題として出題されるのはごく一部ですが、現代文の問題文中などにはたくさんの熟語が登場しますし、小論文や記述問題で正しい意味で熟語を使えていないと当然減点されてしまいます。
意味を知らない熟語や正確に理解していない熟語は意外とあるので、意味を答えられない熟語については書き・読みを覚えるときにあわせて調べてその場で覚えるようにしてください。
おすすめ漢字帳・問題集3選
漢字の具体的な勉強法がつかめたところで、ここからはおすすめの漢字帳・漢字問題集を紹介していきます。
なるべく時間をかけずに、とはいえ最低限の量をきちんとこなせる漢字の問題集として、ここでは3冊紹介していきます。
河合塾『入試漢字マスター1800+』
一番オーソドックスでおすすめなのが、河合塾の『入試漢字マスター1800+』です。こちらの漢字問題周は「読み」「書き」でページが分かれており、難易度・出題頻度で区切られているため、レベルに応じて途中まで取り組むことも可能です。私大難関レベルまで網羅されているため、基本的にはこれ1冊を完璧にすればOKです。
上に問題、下に赤シートで隠せる答え、という構成になっているので、テストがしやすいのもメリットです。しかも熟語の意味も最初から書いてあるため、調べる手間が省けるのもおすすめポイントになっています。
- 入試で出題される漢字を1冊でクリアしたい
- 難しい漢字よりも頻出度の高い漢字を確実に取りたい
- 読みも書きも意味もすべて対策したい
詳しくはこちらも参考にしてください。
『基礎からのジャンプアップノート漢字2500』
ドリル形式で書き込みながら、基本的な漢字を押さえていきたい人には『基礎からのジャンプアップノート漢字2500』がおすすめです。掲載されている漢字の難易度は高くないため、「2科目受験の私大で漢字を落とせないけど、苦手でなかなか覚えられない…」といった場合には使いやすいでしょう。
同音異義語や対義語なども豊富に掲載されているため、漢字の苦手を克服したい、基本の基本から固めたい、中学レベルから正直怪しいという場合はおすすめです。
- 基本的な漢字から復習したい
- ドリル形式で書き込みながらサクッと取り組みたい
- 対義語や同音異義語などもきちんと覚えていきたい
『入試に出る漢字と語彙2400』
旺文社の『入試に出る漢字と語彙2400』は、旺文社得意の「入試に出る順」で漢字をまとめた問題集になっています。参考書のレイアウトとしては『入試漢字マスター1800+』に近く、問題と意味だけでなく派生語・対義語・類語なども併記されています。
四字熟語や慣用句も掲載しているため、ある程度の難易度の大学、入試での漢字の重要度が高い大学を目指していて、漢字で高得点を狙っておきたい人にはおすすめです。
- 漢字だけでなく語彙や慣用句、対義語なども1冊で固めたい
- 入試に出やすい漢字から順に取り組んで完璧にしたい
- 漢字や知識問題で高得点を狙いたい
漢字の勉強法Q&A
最後に、大学受験に向けた漢字の勉強で疑問に思いがちなこと、気をつけるべきことをまとめてチェックしておきましょう。
漢字の勉強はいつからやるべき?
- 漢字の勉強はいつからスタートすべきですか?
- 早すぎても忘れるうえ、優先度も高くないので高3の夏休みなど受験直前に取り組むのがおすすめです。
何度も触れている通り、漢字の勉強自体の優先度はそこまで高くありません。そのため、大学受験に向けた漢字の勉強は受験直前でもOKです。
共通テストでのみ使うのであれば、過去問を使う時期に並行して取り組めばよいですし、私大などで漢字が重要になる場合は高3の夏休み頃から取り組んでおけばよいでしょう。
早い時期から始めても忘れてしまうことがあるため、他の優先度の高い勉強に時間を使うようにしてください。
もちろん、これより前の時期でも、普段の演習で出てきた知らない漢字の読みや意味はその場で調べて覚えておくようにしましょう。
理系だけど、漢字の勉強はやるべき?
- 理系だけど漢字の勉強はすべきですか?
- 基本的には優先度は低いので、共通テストで使うなら過去問だけを使って定着させましょう。
理系の場合や共通テストでしか漢字を使わない場合は、漢字帳などを使って時間を取って勉強する時間がないことがほとんどです。優先度も高いわけではないため、漢字の勉強をするよりも理系科目や英語に時間を割いたほうが合否には直結しやすくなります。
そのため、共通テストやセンター試験の過去問で登場した漢字をすべて書けるようにテストして覚えるということを徹底していれば、理系の場合や共通テストしか受験しない場合は基本的に十分です。
書き取りがない大学だけど、書いて練習すべき?
- 漢字は記号問題しかでないんですが、それでも書いて練習すべきですか?
- 絶対に書いて覚えましょう。なんとなくで覚えてしまったり、うろ覚えになってしまったりすることがあるので、問題形式に関わらず漢字は書いて覚えてください。
共通テストのような記号問題でしか出題されない大学は多いですが、その場合も必ず漢字は「書いて」覚えてください。
そもそも書かないことには覚えられないですし、書かずに頭の中だけで理解しようとすると細かい部分を見落として間違って覚えてしまうことがあります。
また、テストをするときも、書かずにテストをすると「だいたい合ってたから大丈夫」と、覚えたつもりになってしまうことがあるので注意してください。
大学受験の漢字勉強法まとめ
大学受験では漢字の勉強の優先度は低い、ということを踏まえて、どんな人が対策すべきなのか、対策の仕方と参考書についてお伝えしていきました。
今回の内容をまとめておきましょう。
- 漢字の勉強の優先度は低い
- 配点が低い割に覚えるべきことは多いので、他の科目を優先すべき
- 共通テストの過去問が活用できる
- ほとんどの人は共通テストやセンター試験の漢字がすべて書けるようになればOK
- 必ず書いてテストする
- 何度も繰り返しテストをすること、書いてテストをすることが「覚えたつもり」をなくす
他の科目の勉強との優先度を間違えないようにしながら、受験する大学の漢字の難易度・出題形式・配点を早めにチェックして適切な対策を行ってください。
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