大学入学共通テストとは?
2025年入試から変わるポイントも解説
大学入試の経験がない方でも、ニュースなどで「共通テスト」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
名前の通り多くの大学受験生が共通の問題を解く入試なのですが、「実際に入試でどう使うの?」「全員受けないといけないの?」といった疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、まずはそもそも「共通テストとはなにか?」というところからお伝えしながら、あわせて2025年度入試から変更になるポイントも丁寧にお伝えしていきます。
大学入学共通テストとは?
試験日 | 1月13日以降の土日 (2025年度は2025年1月18日(土)および19日(日)) |
受験科目 | 7教科21科目から選択 |
出題傾向 | すべてマーク式 思考力・判断力・表現力が重視される問題も |
「大学入学共通テスト」は、センター試験に変わって2021年度から実施されている共通入学試験で、様々な大学で共通して利用できるテストのことです。1月中旬に実施され、ほとんどの国公立大学ではこの「共通テスト」の点数と大学ごとの「個別試験」の点数で合否を判定しますし、私立大学でも一部利用するところがあるなど、多くの受験生が受験するテストになっています。
出題される受験科目は7教科21科目で、この中から志望校で必要になる科目を選んで受験します。2日間に分けて実施され、1日めに地理歴史・公民・国語・英語、2日めに理科・数学・情報が実施されます。
これら7教科それぞれが科目に分かれており、この科目の中から、志望大学で求められる科目を出願時に選択し、それをすべて受けることになります。
問題形式はマークシート式で、下記に記載されているような思考力・判断力・表現力が重視される出題が増えています。
共通テストの受験方法
多くの高校生・受験生が受ける試験のため、共通テストの出願は高校でまとめて行われます。
ただ、高校に通っていない人や浪人生は自分で出す必要があるため注意が必要です。
基本的には9月後半に願書の提出と受験料の振り込みがあるため、忘れないようにしましょう。
出願について詳しくはこちらの記事も参考にしてください。
共通テストって受験しないといけないの?
多くの高校生・受験生が受けるとはいえ、「全員必ず受験しないといけない」というわけではありません。私立大学だけを受験する人がその一例で、たとえば「絶対慶應義塾大学に行きたいから、慶應しか受けない」という人は、慶應義塾大学では共通テストを利用した入試を実施していないため、共通テストを必ずしも受ける必要はありません。この他にもほとんどの私立大学では、共通テストを利用しない、各大学の試験のみで合否を判定する入試が一般的な選抜になっています。
ただ、私立大学でも後述のように「共通テスト利用入試」と呼ばれるものがあったり、早稲田大学の一部学部や青山学院大学など共通テストの点数が必須になっていたりするところもあります。
また、国公立大学では共通テストの点数が必須で、ほとんどの大学で共通テストの点数と個別試験の点数の合計で合否を決めます。そのため、国公立大学を目指す人は必ず受験することになります。
共通テストを使う場面
このように、多くの受験生が受ける「共通テスト」ですが、大学受験ではどのような場面で使うのでしょうか?
国公立大学や一部私立大学の合否判定
基本的な活用法が「合否判定」。
「大学入学共通テスト」+「大学別の独自試験」の合計点で合否判定されます。
国公立大学の9割で共通テストを合否判定に利用しているため、国公立大学を受験する場合は原則受けなければなりません。
また、大学によって必要な科目が違うことにも注意が必要です。
まず大前提として、ほとんどの国立大学では6〜7教科の受験が必要です。
文系であれば
- 英語(200点)
- 国語(200点)
- 数学1A・2BC(計200点)
- 社会2科目(計200点)
- 理科基礎2科目(計100点)
- 情報(100点)
という形で、理系では
- 英語(200点)
- 国語(200点)
- 数学1A・2BC(計200点)
- 理科2科目(計200点)
- 社会1科目(100点)
- 情報(100点)
の、それぞれ1000点が必要になることが多いです。
科目数はほとんどの国立大学で変わらないのですが、場合によっては「歴史総合・地理総合のみなどでは受験できない」「物理の選択が必須」といった条件がついていることもあるため注意しましょう。
合計で「1000点満点」のテストですが、大学によって「情報だけ50点にする」「全体の点数を半分にして500点満点で計算する」など違いがあるため注意しましょう。
一部の国立大学や公立大学には、もっと少ない科目数で受験できるところもあります。たとえば東京都立大学の法学部などは、共通テストにて英語・国語・社会または数学の3教科のみ必要です。
私大ではそもそも共通テストが必須になることは少なく、2021年度入試から早稲田大学、青山学院大学、上智大学など一部の私立大学で取り入れられるようになりました。
上記のように、各大学によって共通テスト利用の有無や必要な科目が違うため、志望校の入試情報ページは必ず確認しましょう。
国公立大学の2段階選抜
もう1つ重要な使い方が、「受験者を予め選抜する」ための役割です。
「足切り」と呼ばれる「2段階選抜」のために共通テストを使用することがあります。
共通テストの点数が各大学で課せられる基準点に満たない受験生は、そもそも二次試験の受験対象外として一律不合格になってしまい、個別試験を受けることすらできません。
基準は点数で決められるよりも、定員の○倍まで、という決め方であることがほとんどです。
たとえば、定員400人の学部で1段階選抜を「4倍」としているところは、出願者の共通テストの点数で上から1600人だけが2次試験を受けられます。
だから、2段階選抜を実施している大学を受ける場合は、大前提として「1段階選抜ライン」(足切りライン)を超えているかを見極めないといけないのです。国公立大学は前期・中期・後期で1校ずつしか受験できないため、そもそも個別試験を受験できない大学に出願するのはもったいないことです。
「1段階選抜ライン」(足切りライン)は出願後に発表されるため、予備校が集める共通テストの自己採点データをもとに予想しながら出願することになります。
足切りラインギリギリなら、「それでもチャレンジしたい」と特攻してもよいですが、その分2次試験を受けられず不戦敗になるリスクもあります。
そのリスクを避けて受験校のレベルを下げてもよいですが、それだと第一志望はチャレンジできません。
受けたい大学を受けるためにも、特に国公立受験者は共通テストできちんと点を取らないといけないのです。
ちなみに、募集要項で「2段階選抜を実施する」としている大学でも、実際は例年基準以上の倍率にならないため足切りしていない、ということがあります。旧帝大や医学部などの難関大は2段階選抜がほとんど毎年行われていますが、そうでない大学の場合はまず実施状況を調べてみましょう。
大学入学共通テスト利用入試
私立大学では、個別試験のほかに「大学入学共通テスト利用入試」を利用しているところがあります。この方式を活用すれば、大学個別の試験を受験せずに共通テストの点数だけで合格することも可能です。
「大学入学共通テスト」の結果を活用する場合は主に2通りの方法があります。
・大学入学共通テストの結果のみで合否判定
・大学入学共通テストと独自試験の両方で合否判定
共通テストの利用のみの合否判定の場合、合格水準と倍率が高いので、主に志望校よりも難易度が下の大学で滑り止めで利用されることが多いです。
たとえば、第1志望で国公立大学を受験し、滑り止めとしてワンランク下の私立大学を共通テスト利用で複数校併願して受けるなどです。
「大学入学共通テスト利用入試」で受験すると各大学の受験会場に行かなくても出願出来るため、併願校が遠方の場合や現地に行かなくても受験出来るので、効率良く受験を進められます。
ただし、「大学入学共通テスト利用入試」は定員が少なく、各予備校で出している合格ボーダーも前後しやすいため、確実に合格出来るわけではないので注意してください。
主に国公立大学受験者が活用しやすい入試だと考えておきましょう。
2025年の共通テストから変わるポイント
ここまで紹介してきた共通テストですが、2025年に実施される入試から新しい学習指導要領に合わせた仕様になります。
今回の記事でも2025年以降の共通テストについて説明をしていますが、改めてこれまでの共通テストからの変更点をまとめていきましょう。
名前はどちらも「共通テスト」ですが、科目数や傾向が違うため、過去問などを使う際は注意してください。
主な変更点は次の4つです。
- 情報教科の追加
- 社会の実施科目と選択できる組み合わせの変更
- 数学の実施科目と選択問題の変更
- 国語の問題構成が変更
情報教科の追加
大きな変更点として、これまで6教科(外国語・国語・地理歴史・公民・理科・数学)だったものが、「情報」が加わり7教科となることです。
新しい学習指導要領で情報科目が重視されることから、共通テストでも試験として課されることになりました。
以下のような問題がその一例で、「情報」と聞いて連想する情報リテラシーやプログラミングといった内容だけでなく、論理回路やデータの分析・活用といった数学に近い内容も出題されます。
学校の授業をきちんと理解した上で、少し早めに対策が必要になる科目なので注意が必要です。
多くの大学では高い配点にならないとされていますが、入試は数点で合否が変わることもあります。下調べを綿密にした上で、目標点数を取れるように準備しましょう。
社会の実施科目と選択できる組み合わせの変更
2つ目の変更点は社会で、科目割が新しい指導要領に合わせて変更になります。
「歴史総合」「公共」といった分野横断的・総合的な学習をおこなう分野がセットになり、今までよりも勉強の範囲が広がっている点に注意が必要です。
こちらも詳しくは実際の科目選択をする際に、大学の要項と合わせて確認してみてください。
旧 | 新 |
「世界史A」「世界史B」 「日本史A」「日本史B」 「地理A」「地理B」 | 「歴史総合、世界史探究」 「歴史総合、日本史探究」 「地理総合、地理探究」 |
「現代社会」 「倫理」 「政治・経済」 「倫理、政治・経済」 | 「公共、倫理」 「公共、政治・経済」 |
「歴史総合」「地理総合」「公共」 から2つ選んで解答する |
数学の実施科目と選択問題の変更
数学も同様に、新課程に合わせて科目が変更になります。
旧 | 新 | |
数学① | 「数学1、数学A」「数学1」 | 「数学1、数学A」「数学1」 |
数学② | 「数学2、数学B」「数学2」 | 「数学2、数学B、数学C」 |
上記の通り、これまで「数学2、数学B」か「数学2」か選べていたものが、一律「数学2、数学B、数学C」という科目になっています。ただ、これは従来から「数学2」で受験できる大学はそこまで多くなかったうえ、そういった大学は「数学1」のみでも受験できることが多いためそこまで影響はありません。
重要なのはそれぞれの科目で出題される範囲の変更です。
「数学1、数学A」では、これまで数学Aの範囲で「場合の数と確率」「図形の性質」「整数」の3問が出題されていて、この中から2つを選ぶ形になっていましたが、「整数」が削除され2問必答の問題になりました。
「数学2、数学B、数学C」は、「数学C」の「平面上の曲線と複素数平面」が追加され、数学Bの「数列」「統計的な推測」と数学Cの「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」の4問から3問を選ぶ形式になっています。文系の場合学校で「平面上の曲線と複素数平面」は履修しないことも多いため、それ以外の3つを選ぶことになるでしょう。「統計的な推測」はこれまであまり学習してこなかった範囲なので、対策にも注意が必要です。
「数学2、数学B、数学C」は問題数が増えているため、試験時間も60分から70分に変更になっています。
国語の問題構成が変更
国語も指導要領の変更に合わせ、現代文の比率が高まっています。
これまで大問4つ構成だったものが、1問「実用的な文章」の項目が追加され、あわせて試験時間も10分増えて90分となります。
「実用的な文章」とはレポートや報告書、議事録、企画書、法例文など文字通り日常生活の中で扱うような文章、大学進学後によく使うことになる文章です。対策は変わりませんが、これまで以上に時間がきつくなっている点に注意が必要です。
まとめ
今回は「共通テストって何?」というところを簡潔にお伝えしました。
- 共通テストは「国公立大学受験に必須」
- 私立志望なら大学によって必要度が変わる
- 入試で使わないなら受けなくてもOK
- 私立大の「共通テスト利用入試」は難しい、国公立受験者向け
- 2025年の入試から問題が変わっているので注意
これら5点が共通テストを理解する上で重要なポイントです。7教科21科目・1000点満点の試験ですが、大学によって配点も異なるため必ず大学情報も調べた上で方針を考えていくようにしてください。