こんばんは!
学習塾STRUX塾長で、ストマガを監修している、橋本拓磨です。
少しずつ出口が見えてきたコロナウイルスによる自粛期間ですが、地域によってはまだまだ緊急事態宣言が続き過ごしにくい状況は続いていますね。学習塾STRUXも4月から校舎を閉めて全てオンラインでの授業に切り替えていますが、やはり校舎のほうがやりやすいものも多くなかなか難しいところです。
僕がやっている学習塾STRUXでは、引き続き休校期間、自宅学習で悩んでいる受験生向けに相談会を実施しています。
詳しくは以下のページを参考にしてください!
そんな中で少しずつ学校が再開されていくようですが、休校期間の遅れ分がどこで取り戻されるのか?と不安になっている受験生も多いのではないでしょうか。
夏休みを短くして対応する学校が多いとは思いますが、巷では「9月入学案」なるものも少しずつ出てきていますね。
なんて思っている人は注意が必要です。
そもそも9月入学が決まったわけではないですし、現実的にすぐの実現は難しいのではないかというのが実情です。
とはいえ不確定な要素が多く不安な高校生も多いでしょう。この記事では急遽、9月入学のメリット・デメリットとその是非について皆さんにお伝えすることにしました!
そもそも「9月入学」論が出始めたのはなぜ?
そもそも「9月入学」の話は定期的に出ていました。2011〜12年頃だったと思いますが、東大が「秋入学」に移行するというプランを細かく立てているという話が直近での一番盛り上がった時期でしょうか。当時の濱田総長がいろいろな改革をしていた中での発言であったため、入学前では有りましたがしっかりと記憶しています。
ちなみにこの濱田総長によって「僕らの代だけ」12月に期末テストが実施されたり、4学期制(ターム・セメスター制)に移行したり、105分授業になったりといろいろ変わっているんですね。
そして、昨今のCOVID-19の蔓延によって、再びこの「9月入学」論が持ち出されるようになったのです。ご存知の通り多くの学校で3月から休校が続いており、学校によってはオンライン授業や課題での対応となったり、あまり対応できていない学校もあったりと、対応に差が出てしまっています。これによりきちんと教育が受けられないことが生じ、このまま進んでもどこかでしわ寄せが来てしまう、それであればいっそ9月入学にすべて移行してそこから仕切り直そう、ということを一部の識者や都府県の知事が提言するようになった、というのが事の経緯です。
そもそもなぜ9月入学?そのメリット・デメリット
そもそも9月入学そのものは昔から検討され消えてを繰り返していたことですが、9月入学にするとどのようなメリット・デメリットが有るのでしょうか?
このコロナでバタバタしている時期に性急にでも導入すべきものなのでしょうか?
9月入学のメリット:海外のスタンダードに合わせられる
一番大きく言われているメリットが海外の入学時期と揃えられることで、留学生など活発に受け入れることが出来、競争力が高まるというものです。
主に大学に言えることですが、留学生が来やすくなることで、世界から優秀な人材を受け入れることができ、それによって研究をよりレベルの高いものにすることが出来ます。
「日本の大学に留学すればこういういいことがある」というふうなブランドが付けば、この流れは加速するため、その意味でも留学生が来やすい環境にすることは大事なのです。
世界の大学を主とした学校はアメリカ・フランス・中国など9月入学となっているところが多く、4月入学なのはインドなど一部に限られます。世界の多数派に入学時期を合わせることで、留学生の選択肢に入りやすくなるのでは?という目論見があるわけですね。
9月入学の「グローバル化」以外のメリットはあるの?
これ以外にもいくつかメリットが言われています。例えば9月入学にすることで入試が夏の実施になり、インフルエンザや大雪に入試を妨げられることがないというものです。
確かに例年の1〜2月の入試ではインフルエンザが流行している時期ですし、その時期に入試があると受けられなくなるリスクが高くなるというのはわからなくもないです。入試日に大雪で交通機関がストップしてしまい、きちんと受けられないということもしばしばあるので、たしかに冬に入試を受ける弊害は多いのかもしれません。
9月入学にすれば入試の時期もずれるため、こうした弊害を避けることはできます。とはいえ、日本の気候上6〜8月も大雨や台風などの災害は多いので、大雪とどっちがマシなのか、どのくらい違うのかと言われると(雪国では大きく違うのかもしれませんが)あまりそこまでのメリットとはいえなさそうです。コロナウイルスが今後もしばらく蔓延するようであれば、夏であろうが感染リスクはあることになり、インフルエンザのためだけに時期をずらすというのも少し違う気がします。
あとは特に今年〜来年に限った話ですが、コロナウイルスによってずれてしまった学事歴や受験への準備について、その期間に余裕をもたせられるというメリットも言われています。ただ、今年のその問題のためだけに9月入学にすべきなのかと言われると、このあとに触れるデメリットと比べる必要があるので、正直なんともいえません。
「グローバルスタンダードに合わせられる」以外のメリットはそこまで大きくないと言えるでしょう。
9月入学のデメリット:社会における年度の区切りとずれ、対応が必要
いっぽう、9月入学に関してはデメリットも大きいです。日本の社会は「4月始まり」で全て動いているため、そことのずれをどうにか合わせないといけないことが、コストが膨大にかかる点で一番のデメリットと言えるでしょう。
例えば就職に関しても、4月に入社するとしたら半年のブランクがありますし、企業の入社時期をずらすとなると一括採用もずれたり、新卒一括採用自体が崩れたりすることになります。更に日本の企業のほとんどは会計システムが4月スタートで動いているため、そことの兼ね合いも難しくなります。
仕組み的な部分もそうですが、日本の文化とも大きく関係してくることになります。みなさんがイメージする「入学式の桜」が「入学式の残暑」「入学式の遅生まれのセミ」みたいになるわけですから、それだけで抵抗を感じてしまう人ももしかしたらいるかも知れません。
子どもを育てる親にとっても、貯金やローン、子育ての計画を「4月始まりの年度」で区切っている事が多く、それがずれるとなると出費が変わってくるなど問題も出てきますね。
このようなさまざまな「いまの社会とのずれ」を調整するコストがものすごくかかると言われています。
「9月入学」でコロナによる教育の問題は是正できない
メリットもデメリットもあるのはわかりましたが、「今」導入すべきなのでしょうか?
基本的にこうした「メリットとデメリットの両方がある政策」については、メリットとデメリットの大きさを比べた上で、メリットが大きくなる時期に変える、もしくはデメリットを極力抑えられるように時間をかけて導入するということが必要になります。
「グローバル化にそもそも9月入学がどのくらいインパクトがあるのか」ということも本来は検討が必要ですが、今回論点となるのはどちらかというと「9月入学でいまコロナによって引き起こされている問題が少しでも解消できるのか」、そして「解消される分が導入のコストやそれによるデメリットを上回るのか」というところです。
「9月入学がグローバル化に寄与するか」という点はいろいろな記事でも言われていることが多いので、調べてみてください。
いまコロナによって学校教育に降り掛かっている問題としては、
- 宣言解除の地域とそれ以外の地域との授業進度の差
- オンライン授業が出来ている学校とそれ以外の学校の授業進度の差
- そもそも単位数をこなせない学校が出てくるという問題
- 受験への準備が不十分なままになってしまう
あたりが挙げられるかと思います。
9月入学にすることで解消できるのはこのうち「そもそも単位数をこなせない学校が出てくるという問題」だけです。
9月入学によってもちろん、どの学校も一斉スタートになるため、ぱっと考えると「足並みが揃う」と思いがちです。もちろん授業時間数は確保できるようになるため学校内での授業の単位数は確保できるようになるのですが、この休校期間にできた差を埋め合わせすることはできないといえます。
よく考えてみると分かるのですが、オンラインで授業を進めていたり、学校を再開して授業を進めていたりすると、すでに授業をしているものを戻すわけには行かないですし、同じ授業をもう一度するということもほとんどありません。そうなると、9月入学になったとしてやることはこれまでの授業の復習になり、結局早くからオンライン授業をしていた・学校を再開していたところのほうが勉強内容は身につくことになってしまいます。すでに差が出来ているものを取り戻すのは至難の業です。
勉強している人は勉強しているし、「休校になった=学力が下がる」というわけではないのですから、特に高校生においては、9月入学にしたからといって、休校措置にともなういろいろな問題が解決できるわけではないのです。
そして「受験への準備」でいうと、そもそも休校であろうが「1〜3月に入試がある」という事実は今のところ変わらず存在していたわけなので、その間自分で勉強をすすめることは出来たはずです。これを9月入学によって是正するというのは少しずれた話です。
もちろん、英検など今年から重視される外部試験の受験回数(現に4〜5月の英検は中止になっています)や総合型選抜の実績評価の部分では影響が出そうですが、実績部分の評価に関しては考慮するように通達が出ていますし、個別で対応が可能な問題ではあるためこれも9月入学にしてまで解決するものではないでしょう。
共通テストへの移行においてもバタバタしていたばかりなのに急いで9月入学にしたところで、またいろいろなところで問題が発生するのは目に見えていますし、コロナの対応として9月入学を導入するのはメリットに対してコストが大きすぎます。
そもそも社会の仕組み自体が大きく変わるような問題であるため、これだけメリットが小さいものを莫大なコストを掛けて導入する必要性は薄く、時期尚早でしょう。
受験生・高校生は「普段どおり勉強する」「自学自習の力をつける」が大事
そもそも9月入学は「検討するかもしれない」の段階でしかなく、上記の理由からも少なくともコロナ対策としてのすぐの導入は全く現実的ではないといえます。差を縮めるだけならよほど子どもを持つ全家庭のオンライン環境を整える補助だったり、学校へのオンライン環境の提供だったりを急ぐべきで、「遅い方に足並みをそろえる」のが最善ではありません。検討するのは良いですが、この秋とか次の秋とかに合わせてバタバタと決めるのには反対です。
そして、導入が現実的でない、かつ導入しても差が縮まるわけではないことからも、たまに耳にする「9月入学になるかもしれないから、そしたら受験に間に合うかも……」という考え方はただ勉強を先延ばしにする言い訳にしかならないのです。
たまに「9月入学かも・入試変わるからあまり勉強に身が入らない」的悩みを聞くけど、不安を解消して結果を出すには勉強するしか無いから、そういうのは「いいわけでしか無い」とはっきりいっています。聞いた限りでいちばんやばいのだと「9月入学だから間に合うんじゃないか」という言葉……。
— 橋本塾長@STRUX塾長・高校生向け (@struxhashi) May 10, 2020
先行きが不安なのはどの受験生でも同じです。その中で「自分の志望校のために必要な勉強を、受験があるであろう日程に合わせて調整していく」ことが淡々と出来た受験生が、今年の入試を勝ち抜けるでしょう。むしろ周りが混乱している分、少しでも平常心で勉強を続けられた人には有利ですから、ぜひ「普段どおりの勉強」を心がけてください。
高校1・2年生はぜひ、「少し先取りをする勉強」を意識してみてください。今の時期に本来習うはずだった勉強、夏までに勉強するであろう勉強を予め自分で進めておくだけでも、その後の受験でものすごく有利になります。学校の授業を復習代わりに使いつつ、何度も演習を繰り返すことができるからです。スタディサプリなどの映像授業を使って、ぜひ少しでも予習を進めてみてください。
そして、もう一つ、「自学自習の力をつける」ことも大事な要素です。
この休校期間で「家でなかなか勉強できない……」という人は多かったのではないでしょうか。特に一人でいるとなかなか勉強に集中できないということになってしまいます。今後も自由に外で勉強、ということは少し難しいところもあるでしょうし、すぐに今まで通りとはいかないでしょうから、引き続き「自学自習で勉強をすすめる」力は重要になります。特に学校がまだ始まらないとか、学校の進度が遅れすぎているという場合はなおさらです。
受験生の皆さんは是非動じずに、今まで通り、自分に必要な勉強を見極めて進めてほしいです。
今回は「9月入学」についてのメリット・デメリットと塾長としての意見をまとめました。冒頭でも話したように相談会も実施しているので、こんなことが不安!ということがあればぜひ聞かせてください!
学習塾STRUXはいつでもオンラインでの無料体験&授業も実施しています。無料体験でやるべき参考書についても解説しているので、ぜひお気軽にご相談ください!
それでは!
ライター:橋本拓磨
東京大学法学部卒。学習塾STRUX塾長・STRUX大学受験マガジン監修。日本全国の高校生に、場所によらず正しい勉強を広めて、行きたい大学に行き、将来の選択肢を広げてほしい!という思いからSTRUXマガジンを監修。
詳しいプロフィール・サイトにかける思いはこちらから!
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