こんばんは!
学習塾STRUX塾長で、ストマガを監修している、橋本拓磨です。
GW真っ只中ですが、Stay homeの進捗はどうでしょうか?
緊急事態宣言も延長されそうで、しっかり勉強進められているかどうか?というところは他の人の状況も気になるところかなと思います。
そんな中、僕がやっている学習塾STRUXでは、休校期間、自宅学習で悩んでいる受験生向けに相談会を実施することにしました!
詳しくは以下のページを参考にしてください!
そして長期休みだからこそ、ついつい単語などの暗記科目もダラダラとやってしまいがちだと思いますが、今回はそんな単語についてもう一つ質問がきていたので、それに回答します。
古文単語が覚えられません。英単語は覚えられるのに。正しい覚え方をおしえてください。あとどこまで覚えればいいんですか?全部の意味を覚えないといけないですんか?
この悩み、よくわかります。僕もそうでした。英単語はぼちぼち覚えられるのに、なんで古文単語は覚えられないんだろう……と思うこともしばしばあり、古文単語の意味を英語で覚えるとかいうわけわからないことをしていたこともあります(にはかなり→suddenlyみたいに)。我ながら効果があるのか全くわからなかったのですが。
塾講師をこれだけやってきて(かれこれ6年)、古文単語はこういうもんだ!というのがわかってきたので、今回はそれをお伝えできればと思います。
古文単語の覚え方については以下の動画でも解説しています!
なぜ古文単語は覚えにくいのか?
そもそも、どうして古文単語ってあんなに覚えにくいのでしょうか。英語だとすんなりいくのに、古文単語はなぜか全然覚えられない……なんてことも多いですよね。
これは、古文が「日本語」であることに大きく関係しています。
英語はぜんぜん違う言語なので、「そういう意味なんだ」と割り切って一対一で覚えることが出来ますが、古文はなかなかそうもいきません。そもそも今の言葉の元になっているわけなので、どうしても「今の日本語の意味」が邪魔してしまいます。現代語に近い意味になると、「あれ、現代語だとこういう意味だけど、古文だとこんな意味なんだ」という感情が入ってしまい、意味がぼやけてしまうので、シンプルに割り切って覚えることが難しくなります。
たとえば「ためらふ」は、現代語だと迷うとか躊躇するというような意味ですが、古文だと「気持ちを落ち着かせる」という意味のほうがよく出ます。現代語の「ためらう」と同じ意味は鎌倉時代以降似できたもので、多くの単語でこうした現代語と同じ意味は鎌倉時代以降や江戸時代などに生まれた意味なので、もちろんそうした近代の文章であれば現代っぽい意味で問われることもあります。しかし基本的には平安以前の文章が多いため、現代語以外の意味をメインで覚えておくにこしたことはないでしょう。
このように、古文単語は現代語がちらつくし、どうしても現代語と同じ言語のように考えてしまうので、どうしても覚えにくさを感じてしまうんですね。
もちろんこれだけではなく、意味がたくさんありどれも重要だとして扱われていることも多いので、これも覚えにくくなっている一つの要因です。
そうなると、「英単語と同じように覚えていってほんとうに身につくの?」という疑問があるでしょう。
英単語を覚えるときの原則を思い出してみましょう。
- Step.1
- 1ページ分の見出し語を見て、最重要意味を覚える。
- Step.2
- 完璧に覚えたら赤シートで意味をおもいだせるかチェックする。
- Step.3
- 思い出せなかった単語に関しては再度覚え直す。
- Step.4
- 完璧になったとおもったら、再度赤シートでテストをする。
- Step.5
- Step3〜4を繰り返す。
このように、基本的には「何度も繰り返しテストをする」というのが鉄則になるわけです。ただ、古文単語でこれをやると……
となってしまいがちです。
覚えるべきことには変わりがないのですから、英単語と「基本的には」同じ覚え方をしてほしいです。とはいえ、それだと意味も多く、かつそのほとんどの意味が結構重要なため、それらを一気に覚えようとするとなかなか覚えづらくなってしまいます。
さらに、古文の場合は単語の意味でそのまま訳しても「意味があまり通らない」ということも起こってしまいます。英単語と違い、わざわざ古文で出されている単語は日本語にしたとしても意味が通じづらかったり、なんとなくのニュアンスで日本語をうまく訳してあげないといけない場合が多いからで、これを解消するには意味を1対1で一言一句覚えていてもなかなか訳がうまく行かないため、なんとなくのニュアンスで覚えておく事が大事になるのです。
だからこそ、ただ単に赤シートで意味を隠して覚えたり語呂合わせでたくさん覚えたりするのではなく、その単語がもともとどういう意味なのかを「イメージ」で掴むことも重要になるのです。
古文単語の覚え方のコツ!
1周目に「とにかく読む」ことで「単語のイメージ」を掴む
「単語のイメージ」とは、例えば「ゆかし」だと「〜したい、系の意味」だな、とか、「ゆゆし」だと「なんとなくやばいイメージ」とか。
実際僕はこんな感じで覚えていました。「ゆゆし」は実際には「不吉だ」という意味と「(不吉なほど)すごい」なんて意味が混在しているので、それならまあこのくらいの意味で捉えておけばいいだろう……となんとなーくつかんでいたわけですね。そうすると、実際に読解するときに意味が思い出せなくても、その文脈に合わせて「よくないことがおこった」とか「ひどい」とかで訳し分けることができるというわけです。
イメージだけでなく語源や派生を捉えておくというやり方もあります。例えば「すまふ」という動詞は「相撲」の語源になっている(らしい)ところから「抵抗する」「争う」といった意味になっていたり、「ところせし」という単語は「物理的な狭さ」から「気持ち的に窮屈、余裕がない」というふうに派生している、というふうにです。
他にも「うしろめたし」は「後ろ目痛し」からの変化で、「後ろの方が気になる」→「気がかり」という変化をたどっているというのも有名な話ですね(似たようなのに「かたはらいたし(傍ら痛し→傍らの人から見られて恥ずかしい、バツが悪い→気が引ける)」などもあります)。これらも、単語のイメージの一部と言っていいでしょう。
古文の話で言えば、「あふ」「ちぎる」「すむ」「かよふ」といった「男女が婚約する」たぐいの単語も、当時の具体的な婚約への行為を連想すればわかりやすいですし、病気に関する「わずらふ」「おこたる」などの意味も、現代語の意味だけでなく「病気がおこたる→病気が仕事をしない→治る」といったふうに派生して覚えられるわけです。
このように、古文の単語には基本的に「単語のイメージ」や「語源」があり、こうしたイメージと紐付けて覚えておくことで、実際に文章を読むときも意味が連想されやすくなるわけです。
そして実は、こうした「イメージ」については、世の中の多くの単語帳にかかれています。イラストや言葉で書いてあったり、覚えるイメージのキーワードが載っていたりするので、英単語と違って古文単語帳の1周目はまずしっかり読み込んで、その「イメージ」を理解するようにしましょう。
この1周で「なんとなくの意味」さえわかってしまえば万々歳です。
そう思う人も多いと思いますが、意外となんとなくでもOKです。
古文の実際の入試問題では、英語と比べても「和訳しなさい」といった問題は多くないですし、日本語(現代語)に近いわけですから構文とかをしっかり厳密に取れずとも、なんとなくでも意味がわかることが多いです。
ましてや英語のように「次の日本語を古文に直しなさい」なんて問題は出ませんから、正確なニュアンス・意味を完璧に覚えて置く必要はないのです。
だからこそ、最悪「なんとなく」の意味、単語がプラスの意味かマイナスの意味かどっちもとるのか、だけでも全然有りですから、しっかりイメージを1周目で身につけるようにしておきましょう。
そして2周目以降に、イメージを意識しながら意味を覚えていく
単語のイメージが掴めたら、2周目以降に、英語の単語と同じように何周もしながら覚えていくことになります。
たくさん意味がありますから、もちろん全部覚えられればそれに越したことはないですが、神経質になりすぎる必要はありません。
漢字に直して覚えるのもわかりやすい
とはいえ、正確な意味も一つ一つ覚えておければその分自信を持って答えられます。イメージをつかみやすくする上でもプラスになるのが、「単語を漢字に直して覚える」こと。
先程あげた「うしろめたし」「かたはらいたし」も「後ろ目痛し」「傍ら痛し」のほうがなんとなくイメージが湧きますよね。「けしき」という単語も、音だけ聞くと現代語の『景色』でイメージしてしまいますが、「気色」だよということがわかっていれば、「様子」とかそういった意味になるのも納得がいくのではないでしょうか。
以下のような単語は、漢字に置き換えて覚えておくとすんなり覚えられるので、ぜひ漢字とよみをリンクさせて覚えておきましょう。
- かなし(×悲し、◯愛し)→いとしい
- かたはらいたし(傍ら痛し)→きまり悪い
- けしき(気色)→ようす
- いたづらなり(徒らなり、徒労の「徒」)→むだだ
- あてなり(貴なり)→高貴である
- むげなり(無下なり:これ以上下がない)→ひどい、最悪だ
- びんなし(便なし)→不便だ
- しるし(験:げんかつぎ、の「験」)→効果、ききめ、ご利益
- とぶらふ(訪ふ)→訪れる
- さはる(障る)→差し障る
- さうなし(双なし:「無双」)→並ぶものがない
- さうなし(左右なし:「左右がないので前に進めばいい」or「右往左往」)→簡単だ・決着がつかない
- いぎたなし(寝汚し)→寝坊だ
覚え方はわかった!単語帳はどれがいいの?
というような感じで、「古文単語はこう覚えてみてね!」というものをいくつかお伝えしてきました。
なんとなく単語の覚え方はわかったし、やってみよう!という人が増えるといいかなとおもいます。
確かに、単語帳結局どれ使えばいいんだろう……というところはありますよね。
英単語帳と比べてもあまりピックアップされないので、悩むという人は多いのではないでしょうか。
多くの人は、学校で古文単語帳が配られるのではないでしょうか。結論から言うと、古文単語帳は学校から配られるものを使っていればOKです。
学校から配られる単語帳はいろいろな種類がありますが、多くの人は「古文単語315」とか「古文単語330」とか「365」とか「300」とか「321」とかだと思います。
学校で配布されるような古文単語帳がどれも似通っているのは、それだけ高校レベルで求められる単語数が同じくらいだということです。だいたい300語、派生語や敬語なども含めると400語程度でしょうか。これに志望大学によっては古文常識的なジャンルの単語なども含めて勉強していくことになります。
つまり、よほど使いにくいとかでなければ、学校で配られる単語帳を使って良いということになります。学校で配布されるそういったたぐいの単語帳は、いずれも単語のイメージやイラスト・語源が掲載されていて覚えやすいよう工夫されています。
学校で配られる「315」であればイラストや語源、イメージが載っていますし、「330」だとキーポイントという形で単語の下にイメージが一言で書いてありますね。
英単語と同じで、古文単語帳も基本的には1冊を完璧にするのが大事ですから、この1冊を固めきるつもりでいきましょう。
もし、学校で配られる単語帳が使いにくいとか、そもそも学校で配られない・配られる前に早めに手を付けたいという場合、同じように300単語程度載っている単語帳を選んで使うようにしましょう。この際もなるべくイメージ等が書かれている単語帳を選びましょう。「マドンナ古文単語」などがおすすめです。
これも「230」となっていますので、なんとなく単語数が少ないのかな……と思ってしまいがちですが、1つの項目に複数の単語が載っていたりもするので、実質300語以上の掲載なので安心してください(他の単語帳も300以上になっているものは敬語などを含んだ語数なので、意外と変わらないです)。
ただ先述の通り、難関私大、特に早稲田・上智などでは古文常識などより細かい単語も問われるため、別枠で少し取り組む必要があります。東進のformulaや「マドンナ古文常識」などを使って固めてあげるのがいいでしょう。
こんな感じで、基本的にはどんな単語帳でも使いやすければいいのですが、一つ注意してほしい単語帳があります。それは、語呂合わせで覚える単語帳。
語呂合わせでも同じように単語のイメージや語源などまで載せてくれていればいいのですが、そうでない単語帳はよほど古文にアレルギーが有るという以外は避けたほうがいいです。
なんとなくゴロだと覚えやすいし、関連付けて覚えられるからいいんじゃない?とおもってしまいがちです。これも古文のもともとの意味やイメージに関連したゴロ(すまふ→相撲、とか)ならいいのですが、そうでないゴロでおぼえてしまうと、単語のイメージを掴むことが出来ないんです。
語呂合わせだとどうしても「単語そのもの」と「単語の意味」を1対1もしくは1対多で覚えるようになってしまうため、文脈によって意味を捉え直したりうまく訳しわけたりが必要になる古文ではあまり適していないのです。
古文が苦手な人で「古文単語ゴロゴ」のシリーズを使っている人は結構多いと思いますが、よほど苦手でアレルギー、見ただけで吐き気がする……とか、古文を全くゼロからやります!とか言う人以外は、新しく買うのであれば一般的な単語帳を使うほうが圧倒的におすすめです。
基本的な単語こそ覚えられますが、そこからレベルの高い読解まで持っていくときになかなかレベルアップできないということになってしまうので、気をつけましょう。
まとめ
今回は古文の単語について話しました。あんまり普段触れないジャンルの話だったので、これからもこういう少しニッチな話をしてほしい、この部分を教えてほしい!というのがあれば教えて下さい。
さて、学習塾STRUXはいつでもオンラインでの無料体験&授業も実施しています。無料体験でやるべき参考書についても解説しているので、ぜひお気軽にご相談ください!
それでは!
ライター:橋本拓磨
東京大学法学部卒。学習塾STRUX塾長・STRUX大学受験マガジン監修。日本全国の高校生に、場所によらず正しい勉強を広めて、行きたい大学に行き、将来の選択肢を広げてほしい!という思いからSTRUXマガジンを監修。
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