こんばんは!STRUX塾長の橋本です!
今回の「大学入試の志望校別対策シリーズ」も慶應義塾大学。今回は商学部について見ていきます。他学部とも違う特徴的な小論文の形式と入試方式なので、受験を考えている場合は注意して読んでみてください。
慶應義塾大学商学部(一般選抜)の試験情報
期日 | 2月14日 |
共通テスト | 不要 |
科目 | 独自試験: 英語・地理歴史・選択科目 (A方式:数学/B方式:論文テスト) |
2021年度入試より一般選抜において主体性評価などの自己評価を出願時に提出することになっています。
地理・歴史については、「世界史B」「日本史B」「地理B」の中から1科目選択が可能です。他の学部と違って地理が選べるのは特徴でしょう。
慶應義塾大学の他の学部と多少異なるのは、地理・歴史の受験が必須な反面、国語はほぼ不要でその分「数学」または「論文テスト」が求められるという点です。数学受験のA方式が定員480人、論文テスト受験のB方式が定員120人となり、B方式のほうが倍率も2倍くらいになっています。
よくこのような疑問が出ますから、簡単に説明しておきましょう。
慶応商学部の「論文テスト」とは?
論文テストは要項では「資料を与えて、論理的理解力と表現力を問う」とあり、名前の通り論文や資料を参考にして、与えられた問いに答えていくという形式のものです。
たとえば、以下のような問題が挙げられます。
これは2020年の過去問の例ですが、不法行為における損害賠償という「法学部」で学ぶような内容から始まり、「不運」の処理の仕方について考えさせ、解答ないし記述をさせるというものでした。
別の年度(2018年)では、18世紀の通貨価値を計算するような問題が出題されているなど、年度によって「読解力を中心として、論理的思考力を問う」場合と「数学的思考を求めてその中で論理力を測る」という場合があります。基本的には大問2つ構成で、この2つが1つずつ出されているのが特徴です。特定の科目について対策をするというよりは、広く考える力や基本的な計算力、長い問題文を正確に読み解く読解力を普段から鍛えておきつつ、過去問を使って演習を重ねておくことで得点するものになります。対策は細かく後述しますが、意識をしておかないと得点しづらいでしょう。
併願のパターン
「英語・地歴」がどちらの方式でも必須なため、慶応の他学部やほかの私大を受験しやすい形式になっています。特に数学受験になる人でも、地歴のほうが得意ということであれば地歴を使った受験形式ができますから、自分の得意・不得意に合わせて受験することが可能です。
慶應の他学部で併願するなら
商学部をA方式で受験する、つまり数学を勉強している人であれば、絶対に経済学部とは併願すべきでしょう。経済学部のA方式は「英語・数学・小論文」、B方式は「英語・地歴(歴史のみ)・小論文」であるため、小論文の過去問対策や現代文の勉強をきちんとしておけば、A/B方式のうち得意な方を選ぶことができます。
商学部をB方式で受験する場合も経済学部の併願はおすすめです。この場合はB方式(英語・地歴・小論文)で受験することになります。経済学部であればA/Bともに倍率はあまり変わらないため、そこまで問題にはならないでしょう。B方式の場合商学部の倍率が高いため、併願をしっかり組んでおきたいところですから、戦略的にほかの学部(文学部など)を狙っておくのもありです。
商学部系の私大受験は古文必須
慶應よりレベルを下げて併願校を決める場合、他学部同様「古文」の勉強がさらに必要になります。マーチレベルであれ日東駒専レベルであれ、基本的には国語の入試で古文まで必要になります。「慶応以外に合格しても絶対に行かない!」という場合でない限りは、早めに古文については対策の時間をとっておき、マーチレベルの古文に対応できるようにしておきたいところです。商学部がある明治大学などがおすすめです。
早稲田商学部の併願も可能ではあるが……
早稲田大学の商学部は英語が長文メインということで、比較的特殊な対策は不要なため併願することもあ可能。ただ、国語では(数問とはいえ)漢文が必要になってしまいますからその勉強は必要になりますし、そもそも早稲田と慶応では傾向が大きく異なるため、同じ難易度とはいえ対策する内容が変わってきてしまい、あまり併願には向いていません。時間がたっぷりあれば対策してもいいですが、そこまで効率的に受験ができない、ということは頭に入れておきましょう。
国公立難関校との併願はおすすめ
これも他の学部と同様、慶應義塾大学は国公立大学との併願でシナジーを生みます。国公立大学では何れにせよ数学が必須ですから、最上位国公立を受験する場合に慶応を併願するのは選択肢としてあり。商学部をA方式で受験すれば、倍率的にも比較的ラクに受験することができます。
慶應義塾大学商学部の配点と目標点数
つづいて、慶應義塾大学商学部の配点と目標点数について確認していきましょう。
慶應義塾大学商学部(A方式)の科目・配点
外国語 | 200点 |
地理歴史 | 100点 |
数学 | 100点 |
英語の配点が200点、その他が100点ずつなので、なんだかんだ圧倒的に大事なのは英語になります。
慶應義塾大学商学部(B方式)の科目・配点
外国語 | 200点 |
地理歴史 | 100点 |
論文テスト | 100点 |
B方式でも同様に英語が配点が高くなっています。
目標点数
慶應義塾大学商学部でも得点調整が社会2科目間で「年度によって」行われています。2020、19年度は実施されています。経済学部で行われているような一次選考はありません。
例年の合格最低点(A方式)
- 2020年度:244/400点(61.0%)
- 2019年度:265/400点(64.5%)
例年の合格最低点(B方式)
- 2020年度:309/400点(77.3%)
- 2019年度:288/400点(72.0%)
やはり数学がない分B方式は合格最低点が高くなっています。年によっては77%以上求められるため、非常に難しい試験になっていると言えるでしょう。一方数学受験であれば60〜65%程度なので、しっかり対策していけば合格しやすくなっています。
例年の受験者平均点
受験者平均点はA方式・B方式問わず出されています。科目毎に見ていきましょう。
英語
- 2020年度:124.55/200点(62.3%)
- 2019年度:115.24/200点(57.6%)
地理歴史
- 2020年度:64.92/100点(64.9%)
- 2019年度:65.82/100点(65.8%)
数学
- 2020年度:30.48/100点(30.5%)
- 2019年度:49.76/100点(49.8%)
論文テスト
- 2020年度:70.30/100点(70.3%)
- 2019年度:58.32/100点(58.3%)
参考:2020年度一般選抜得点状況、2019年度一般選抜得点状況
やはり、全体の平均点としては英語・地歴が6割前後で、A方式・B方式の最低点の違いは数学に如実に出ています。特に2020年度入試の「論文テスト」は数学的要素が少なく単純な確率の計算であったため、7割近い平均点になっていると推測できます。一方2019年度は「暗号化」のシステムという数学の中でも捉えづらい思考であったことから、平均点が下がっています。
平均点が7割ほどになれば、この論文テストで差をつけるのは難しいですから、やはり英語・地歴で確実に点をとっておくことが重要です。最低点が8割近い年もあることを考えると、英語・社会は8割を目指すくらいでないと大変そうです。
目標点の例:A方式……280/400点
英語 | 150/200点 |
地歴 | 80/100点 |
数学 | 50/100点 |
数学受験の場合、平均点が低いとはいえ数学で半分はとっておかないと点数が安定しません。数学を50店としても、他の英語・社会で75〜80%獲得する必要があります。
目標点の例:B方式……310/400点
英語 | 160/200点 |
地歴 | 80/100点 |
論文テスト | 70/100点 |
B方式の「論文テスト」は目標点の設定が難しいですが、英語・地歴は8割必達するつもりでいたほうが良さそうです。
慶應義塾大学商学部・科目別の勉強法と問題攻略
最後に、科目別の勉強方針を軽くまとめておきましょう。
時系列・やるべき科目と対策
基本的な方針は文学部などと同様ですが、場合によっては「数学」「地理歴史」を並行して学習する必要があるため注意が必要になります。また「論文テスト」は対策が面倒な部分であるため、基本的な能力が身についていれば後は過去問がメインになるでしょう。
論文テスト
一番テーマに困る「論文テスト」の話題から触れておきましょう。この「論文テスト」ですが、年度によって大きく平均点も変わるほどに内容が大きく異なります。
- 2020年
- 「不法行為に対する損害賠償請求」と「不運」の折り合い/宝くじの確率
- 2019年
- 「感情労働」についての説明文と、空所補充など/暗号システム
- 2018年
- 劇場の照明費用計算(時代ごとの価値換算)/オープンフリーイノベーション
- 2017年
- 「教養人」とは/出来事の因果関係とデータ
商学部のテストとはいえ、商学部的な内容(経済や経営の話)とは直接関係しないようなものも多くなっています。「経営をやる上で想定しうる損害賠償」「労働について」「経費計算の考え方」といった経営と絡めた内容と取れなくもないですが、問題を解く際にはあまり関係はないでしょう。計算・数学的思考が入る場合はやはり確率論や経済学・経営学の視点が必要なものが多い印象です。
設問の形式はほとんどが「穴埋め」形式で、選択肢から適切なものを選ぶもの。年度によっては「下線部の意味と最も近いものを選ばせる」というものもあり、原則としては国語力が求められていると考えて良いです。
2018年のように計算問題が出されると多少厄介ですが、きちんと文章内の説明を読み取ることができ、かつ基本的な計算ができる程度の数学力があれば問題なく解けるようになっていて、このあたりはむしろ経済学部のほうが「数学を知らないと厳しい」という問題が多く出題されるようになっています。そのため、やはり基本は現代文で、様々な文章に読み慣れておくことが大事になります。出てきた単語の定義などをきちんと確認していくことが重要です。
具体的には基本的な現代文の学習方針(「システム現代文」シリーズなど)に沿って勉強をすすめ、時間があれば「ちくま評論選」などで難しめの、かつ幅広いテーマに触れておくこと、また「キーワード読解」を使ったり出てきた単語を辞書で調べたりするなどして、言葉についてきちんと知っておくことは前提になります。
ただ、これらはあくまで前提でしかなく、いちばん大事なのはいかにしっかり過去問をやり込めるか。過去問をしっかりやりこみ、これまでの問題傾向や出題された内容をきちんと把握しておくこと、そして穴埋め形式のものをどう解くか自分なりに考えていくことが大事になります。何度も解いて解き方に慣れておきましょう。
とはいえ、全く数学の要素が出ないというわけではないですから、数学の中でも「確率」「数と式」あたりの領域はきちんと理解をしておくべきです。学校のテストレベルでいいので復習を軽くしておき、計算には慣れておきましょう。
英語
慶應義塾大学商学部の英語は大問が多く、8つ構成になっています。そのうち1つを除いては長文を中心とした出題で、長文の読解や空所補充になっています。1つだけ文法問題が出ますが、長文問題の分量がなんにせよ多いため、時間内でどのくらい正確に解けるかがポイントになります。「ポラリス3」や「やっておきたい1000」レベルの長文問題集を短い時間で解けるように訓練をして、8割程度は取れるようになりたいところです。
社会
歴史科目(日本史・世界史)は、高2の冬〜高3の春くらいには学校のペースより少し早めに「スタディサプリ」などで通史の理解を進めて、高3の夏前には一通り全範囲を終えたいです。難しい単語もでるとはいえ基本単語が押さえられれば8割は取れる問題ですから、まずはそこで絶対に点を落とさないように、通史の流れを優先して押さえ、秋ごろから一問一答で細かい単語も含め完璧にしていきましょう。
地理も基本的なレベルをまず把握することが重要ですから、同様に「スタディサプリ」などで高3の夏前までに一通り系統地理・地誌を入れておきます。ここまでは系統地理を重視しておいてよいですが、慶応の場合歴史的背景と絡めた問題や特定地域の問題が多く出題される傾向が強いため、各国地誌を資料集などで深く知りながら過去問演習を中心に対策していくべきです。私大で地理が必要になるところは多くないですからあまり地理選択はおすすめしませんが、もし選択する場合は過去問をメインに細かい地誌を詰めていくようにしましょう。
数学
慶應義塾大学商学部の数学はすべて空所補充形式なので、部分点がもらえないことは注意しておくべきです。計算の過程が評価されないため、夏休みにはセンター形式の問題集やセンター過去問でこうした誘導に乗りながら解くコツを身につけておき、秋以降より難易度をあげて演習をしておく必要があります。
ほかの学部の数学と同様、「確率+三角比」「ベクトル+関数」といった分野横断的な問題ばかりですから、「良問プラチカ」や慶応の他学部の数学の過去問などをできる限りたくさん解いて、解き方の思考を身につけるようにしましょう。大問4つ構成で2つ完答すればよいので(それ以上解ければアドバンテージになります)、着実に取れる分野を作っておきましょう。
まとめ
慶應義塾大学商学部は英語・地理歴史で高得点を取ることが何よりのポイントです。数学受験も絡むため、志望すると決めたらなるべく早く取り組み始めるようにしましょう。
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それでは!
ライター:橋本拓磨
東京大学法学部卒。学習塾STRUX塾長・STRUX大学受験マガジン監修。日本全国の高校生に、場所によらず正しい勉強を広めて、行きたい大学に行き、将来の選択肢を広げてほしい!という思いからSTRUXマガジンを監修。
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