こんばんは!
学習塾STRUX塾長で、STRUX大学受験マガジンを監修している、橋本拓磨です。
毎週土曜日は塾長連載コーナー!ということで、YouTubeにアップしている僕の動画だったり、僕の高校生時代や今まで教えてきた生徒の生活だったりから「ここでしか伝えられない」情報をお伝えしています。
今日は、論文をいくつかご紹介しようかなと。
……というまるおくんでも読める、興味深い論文が実は盛りだくさんなんです。
僕は定期的に論文を読んでいます。ただの論文というよりは、脳科学や臨床実験を基にした学習効率に関するものです。
実際に私自身が大学受験の際に使っていた勉強方法は、こうした論文で書かれていることも参考になっていたりします。
なんでそんなことをしているのか?ということを少しお話しておきますね。
どんな論文を読んでるの?どうして読んでるの?
僕が塾長を務める学習塾STRUXでは、合格に必要な要素として「戦略」「時間」「効率」をあげています。
この3つの要素のうち、「時間」はまあみなさん頑張ってもらわないといけないところです。
「戦略」、つまり「どういう方法で、どの順番で勉強したら合格できるか?」についても、このSTRUXマガジンでみっちり伝えていたり、塾でも毎年改善を重ねたりしています。
ただ、「効率」だけは、なかなかこのサイトでもいままで発信していない部分があったり、塾でも講師の経験によって大きく伝える内容が変わってきたりと、まだまだ突き詰めてよいものを見つける余地があるんですね。
そして、なかなかこの部分のノウハウは確立しきっていません。
そしたら、このあたりもきちんと根拠を持ちながらカリキュラムを作っていこう!というふうになりました。
しばらくしたらきちんと論文に依拠したカリキュラムで、より生徒さんの計画達成率や合格率を高めていこう!と考えています。
おもしろかった論文を紹介!
そんなこんなで、かれこれ100本近く論文を読んできたので、なかには「これってこういう意味だったんだ……」なんて論文から、「こんな実験してるんだ〜」なんて論文まであるわけですね。
今回は、塾内の勉強会で紹介したそんな「面白い論文」を3本ほど紹介!
勉強にどれほど役立つのか?というものもありますが(笑)、ぜひ見てみてください!
それではさっそく行きましょう!
1. 「忘却曲線」は「どのくらい忘れるか」ではない?
みなさんは、こんな図を見たことあるはず。
出典:https://www.sumiya-goody.co.jp/shopblog/numazu/2017/02/post-174.php
これはよく「忘却曲線」と言われる図で、ドイツの心理学者エビングハウスさんが発見したもの。
この「忘却曲線」というワードを聞くと、みなさんなんとなく「次の日にはこんなに忘れちゃってるんだ……」というふうに捉えてしまいがちです。
でも、もとの論文をよく読んでみると、実は違うことが書いてあったりするんですね。
出典:Memory; a contribution to experimental psychology
もとの論文では、このグラフは「どのくらい忘れたか?」ではなく、「忘れた単語を覚え直すのに、1回めと比べてどのくらい覚える時間を節約できたか?」、つまり「節約率」を表しているんです。
節約術ではなく節約率です。残念ながら増税には対処できませんが、この「節約率」を出しているということがポイント。
だから、極論いってしまえば、この曲線は「忘却曲線」という名前だと微妙なんですね。
しかもこのエビングハウスさん、このグラフになるようなデータをどうやって取ったかというと、なんと「自分で」実験をしたんですね。
自分で、しかも「まったく意味をもたない」3つのアルファベットの羅列をただただ覚えていって、期間をあけて覚え直した、というわけです。
人間はたいてい、「意味のある」データを覚えていくので、このエビングハウスの実験の結果がいわゆる意味のある単語を長期に渡って覚えておく「長期記憶」にどのくらいあてはまるのかは、正直なんとも言えないところがあります。
そのため、どのくらいこのデータが使えるのかというと怪しいところ。
まあ、とはいえ、この実験でわかった「何回も繰り返すことで覚えるまでの時間が短くなる」つまり「それだけたくさん覚えられるようになる」ということは、普段話している「何度も繰り返して単語などは覚えよう!」というところにつながってきますよね。
ふだんの「何度も繰り返して勉強する」ということは揺らがないので安心してください。
「読書で成績が上がる」ことってあるの?
みなさん、どうやって現代文の勉強をしていますか?
人によっては何すればいいのかわからないし、とりあえず本や新聞でも読むか……という人もいるのではないでしょうか?(実際無料体験などでもよく耳にします。)
また、「本読むの好きだし現代文なんとかなるでしょ!」という人もいるはず。
そういう人にお知らせしたい論文が、中央大学の先生が書いたこちらの論文。
読書と成績の関係性について軽く触れられています。
こういった実験は被験者の母数が少ないことが多いので、どこまで当てはまるかというのは参考程度に見てほしいのですが、その中でも「読書の冊数」「どういう本を読んでいるか」などで細かく調査しているので比較的参考にはしやすいものかなと思っています。
この論文では、「読書量が多い人のほうが少ない人に比べれば成績は良い傾向にある」としつつも、「量が多いほど成績が良いと必ずしも言えるわけではなく、読む本の質も影響している」と見ています。
実際、小説だけを読む人よりも評論や学術書などを読む人のほうが成績が良いというデータが出ているそう。
まあこれに関しては難しい本を読んだから成績がいいのか、成績がいいから難しい本を読めるのかどちらが先なのかは正直わからないところ。
もちろん読解に対して「本を読む」ことで成績が上がることはありそうですが、とはいえ時間がかかるのも実情。
時間に余裕があるような人は、息抜きがてら読書をしていってもいいかもしれませんね。
漫才を見た後は成績が良くなる!??
最後はなんか面白い実験があったのでご紹介。
近畿大学の実験を今回は引用しますが、いろいろな先行実験もあるらしく。
この実験では、肯定的感情(楽しい、面白い、愉快など)が単語の記憶保持に影響するのか?というものを確かめています。
その実験方法がシュールで、2組にある動画を見せてから単語リストの暗記に取り組ませてどれくらい覚えられるかをテストするというもの。
2組に見せた動画というのが、それぞれ
- 1組目:「横山やすしvs西川きよし モーレツ漫才ワークス」
- 2組目:「不都合な真実」
という正反対のもの。
単語を覚える前にやすしきよしの漫才を見せられるだけで十分シュールなのですが、
選定理由が「被験者がすでに見ている可能性」を考え、あまり見ていないであろう題材を選んでいるというのが面白いです。
比較対象もアメリカの政治家アル・ゴアの「不都合な真実」という、ゴリゴリの環境ドキュメンタリー。
環境問題についての問題提起を動画を交えながらひたすら重ねていく動画なので、とても肯定的感情は芽生えにくいですね。
写真を見るだけで、マイナスな感じの動画であることはわかりそうです。
この2つの動画を見せたあとで単語を覚え、テストをすると、やすしきよしの漫才を見たグループのほうが成績が良かったということなんですね。
肯定的な感情で勉強をしたほうが、記憶定着に効果があるということが少し言えそうです。
さて、いかがでしたでしょうか。
今回いろいろな論文を紹介させてもらいました。興味深い論文から面白い論文まで盛りだくさんだったと思います。
今後も定期的にこういう勉強の効率についての面白い論文があれば紹介していきますね!
参考になる情報があればぜひ!活用して勉強してみてください。
TwitterやYouTubeでもいくつか情報発信をしているので、気になるヒトはチェック!
ライター:橋本拓磨
東京大学法学部卒。学習塾STRUX塾長・STRUX大学受験マガジン監修。日本全国の高校生に、場所によらず正しい勉強を広めて、行きたい大学に行き、将来の選択肢を広げてほしい!という思いからSTRUXマガジンを監修。
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