こんばんは!
学習塾STRUX塾長で、ストマガを監修している、橋本拓磨です。
前回の連載記事で、理科・社会の「予習」について話しました。
予習をやんないといけない、ということはわかったけど、もっと具体的にどう対策すればいいのか教えてほしい……という人向けに、今回は社会、特に入試で使う人が多い日本史・世界史の勉強法をお伝えしていきます!
予習のより詳しい進め方から、入試までどういう手順で勉強を進めていくか、勉強をやる上での注意点など細かく話していきますので、参考にしてください!
そもそも日本史・世界史ってどういう科目?
まずは簡単に日本史・世界史の科目の性質を話しておきましょう。英語や国語とも、まして数学とも全く違う性質の問題なので注意が必要です。歴史科目がどんな科目なのか理解した上で勉強に取り組むようにしましょう。
「暗記科目」ではあるが「丸暗記」だと点数はもらえない
歴史科目に関するよくある勘違いが「歴史なんて出来事を暗記すればいいんでしょ?」ということ。もちろん暗記をする必要があることは間違いないのですが、覚えれば良い、というのは全くの誤りです。単語を覚えるだけでは全く点数がもらえない、なんてことにつながるので注意しましょう。
簡単に説明していきましょう。
このあとにも話すのですが、歴史は「時代の流れや出来事の移り変わりを理解していく」科目です。この「歴史の流れの理解」がメインであり、出来事の名前や人物名はあくまでそれを構成する一つの要素でしかないわけです。
例えば世界史で言うと、有名なリンカーンの「奴隷解放宣言」やゲティスバーグの演説での「人民の人民による人民のための政治」という話はよく聞きますよね。
このときにどうしても「リンカーンは南北戦争のときの大統領」「奴隷解放宣言をした人」ということだけ覚えてしまうということが起こってしまうのですが、これだと問題は解けません。
なぜなら、試験では「南北戦争のときのアメリカの大統領はだれですか?」という聞かれ方も、「リンカーンが行った宣言の名前はなんですか?」という聞かれ方もほとんどされないからです。
例えば、少し古いですが1998年の東大の問題。
アメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国は、ともにヨーロッパ諸国の植民地として出発した。しかし、独立後は、イギリスの産業革命などの影響の下で対照的な道を歩むことになった。たとえば、アメリカ合衆国の場合には、急速な工業化を実現していったのに対して、ラテンアメリカ諸国の場合には、長く原材料の輸出国の地位にとどまってきた。そしてラテンアメリカ諸国は、政治的にも経済的にもアメリカ合衆国の強い影響下におかれることになったが、その特徴は、現在のラテンアメリカ諸国のあり方にも大きな影響を及ぼしている。
そこで、18世紀から19世紀末までのアメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国の歴史について、その対照的な性格に留意しつつ、ヨーロッパ諸国との関係や、合衆国とラテンアメリカ諸国との相互関係のあり方の変化を中心に、下に示した語句を一度は用いて、解答欄(イ)に15行以内で記せ。なお、使用した語句に必ず下線を付せ。プランテーション、パン・アメリカ会議、南北戦争、ウィーン体制、自由貿易主義、モンロー宣言、クリオーリョ、米英戦争
この語群に「南北戦争」とあるから、なんとなくそのことについて書かないといけないな……ということはわかりますが、この問題はそもそも「アメリカ南部と北部の”工業””貿易””奴隷制”などでの対立」がわかっていないと書けないですし、「南北戦争」というキーワードがあっても「リンカーン」という単語を書く必要は逆にないんですね。聞かれていることはあくまで「アメリカ合衆国とラテンアメリカ諸国の歴史」ですから、出来事の説明よりも流れを重視すべきなのです。
東大の問題だし難しくて当然じゃん!と思うかもしれませんが、これは共通テストのレベルでもじつは変わりません。歴史の順番を問う問題であったり、地図を元に答えなければならない問題であったりと多様な出題がなされるため、これを解くためにはもちろん単語を覚えておく必要はありますが、丸覚えではなくきちんと場所・他国との関係などまで理解して紐付けておく必要があるのです。
歴史の流れを知ることで覚えやすくなる
このように、「歴史の流れを知っておく」ことが世界史・日本史の試験では重要になります。
一見面倒なように思えますが、これは勉強する上でも生かされることです。
なぜなら、はじめに歴史の流れを理解しておけば、あとはそれに合わせて単語を紐付けていけば済むからです。例えば「リンカーン」「奴隷解放宣言」「アメリカ連合国」などを別々で覚えているより、「もともと南北で対立が有り、南部の州がアメリカ連合国として独立するなどしていて、南北戦争ではそうした対立軸から〜」といった流れの中で覚えていたほうが、ひとつなぎに楽に知識を覚えることができるのです。
歴史の流れが「記憶の軸」として機能するので、覚えやすくなるというわけですね。
必ず「歴史の流れ」という骨組みを先に組み立ててから、それに「歴史用語」を肉付けしていくという意識を持ちましょう。
学校のペースは遅いので、予習が必須
ということで、クイズ形式のように答えを丸覚えしていくのではなく「歴史の流れ」をきちんと理解しながら勉強をしていく必要があるのですが、インプットに適した教材の一つが「学校の授業」です。学校の授業では流れに沿って説明してもらえることが多いため、学校の授業を使って歴史は勉強している、という人が多いのではないでしょうか。
しかし、学校の授業には一つ重大な欠点があります。それは、ほとんどの高校では歴史の授業が全範囲終わるのは冬になってしまうということです。11月や12月まで歴史の流れの理解に費やしてしまっては、受験に間に合いません。そのため、間に合わない範囲は自分で勉強をすすめる必要が出てきます。これは前回の連載記事でもお伝えしたとおりです。
日本史・世界史の具体的な勉強法をチェック
つまり歴史の流れを理解しながらの学習が必要になるのですが、具体的には次の流れが重要になります。
- 通史の理解
- 単語の暗記
- 志望校対策
この流れ通りに勉強を進めていくことで、効率よく、かつ試験に対応した勉強ができるようになります。
歴史科目の勉強法1:通史の理解
まずは「歴史の流れを理解する」ことです。ここでいう「歴史の流れ」とは、「ある国がどうしてできたのか」や「ある国とある国でどういう関係があって、どう移り変わったのか」「ある政府がどうして倒されたのか」といった「理由」「経緯」「関係」などを含むものだと思ってください。共通テストや私大入試の問題文は基本的にこうした「歴史の流れ」が書かれていて、それに当てはまる用語や出来事を答えていくという形式のものですから、この「流れ」をまず先に理解することが必要です。
この「歴史の流れ」を理解するためには、まずはざっと歴史の全体像を掴む必要があります。歴史が苦手であったり完全に知識がない状態から進めたりするような人、また高校1・2年などでまだまだ入試が遠いという人は、歴史のマンガや入門的な参考書を使ってざっとさらうのが良いでしょう。「中高6年間の〇〇が10時間でざっと学べる」シリーズや「マンガゼミナール」シリーズなどがおすすめです。
すでに受験生で一刻も早く歴史の流れをしっかり掴まないとという人は、映像授業を活用していくことをおすすめします。
もちろん「実況中継」や「ナビゲーター」などの参考書、教科書などでも身につけることはできるのですが、映像授業のほうが教科書では行間に省略されているような歴史の流れのうちどこが大事なのか、という点を強調して話してもらえるため印象に残りやすいようになっています。とくに2次試験までしっかり歴史を使うという場合は、なおさら映像授業などで先生の雑談内容や軽く話している歴史の理由的な部分も何かを覚えるきっかけになりますから、ぜひ活用しましょう。
映像授業は世界史であればTryITの高校世界史、日本史であればスタディサプリの「高3スタンダード日本史」あたりがおすすめです。
このときに注意してほしいのが、必ず資料集・テキストを横において授業を受けたり、参考書を読んだりすることです。
歴史の流れをせっかくつかみながら勉強するわけなので、なるべく情報は多く知っておくほうが良いです。入試でも地図問題や資料問題などは多く出ますし、そうしたときに少しでも覚えるきっかけが多いほうが覚えやすく・引き出しやすくなります。覚える必要はまったくないので、該当するページを開いて地図や写真・画像や資料などを確認しておくようにしましょう。
これらの「歴史の流れを掴む」映像授業を、予習として夏休み前までに取り組み終えるようにしましょう。
歴史科目の勉強法2:単語の暗記
ざっくりと歴史の流れをつかんだら、単語を覚えていきます。
マルオくん、ちょっとまってください。いきなり一問一答でもいいのですが、ぜひやってみてほしいのが「穴埋め形式のノート」を使って歴史用語を覚えることです。
確かに覚えればいいんですが、せっかくステップ1で「歴史の流れ」を掴んだわけですから、なるべくこの「歴史の流れ」に沿うようにして単語を覚えていかないともったいないですし、問題が解けるようになりません。この「流れ」の中で単語を覚えるには、一問一答をいきなり使うより「詳説日本史(世界史)ノート」や「書き込み教科書」のようなものを使うほうがおすすめです。
書き込み教科書や詳説ノートは文章の穴埋め形式になっているので、教科書やテキストのように歴史の流れがそのまま書いてあります。書いてある歴史の流れを復習しながら、ところどころ空欄になっている重要語句をテスト形式で埋めていくことができるので、流れに単語を紐付けて覚えていくのにぴったりなんです。
特にまだ歴史の流れをさらっている段階、映像授業と並行して確認していったり夏休み中に知識を定着させる期間では、こうした穴埋め形式の物を使いましょう。穴埋めの際に間違えやすい漢字・カタカナの順番など意識するため、必ずノートなどに書いて答えていくことを忘れないようにしましょう。
一問一答はそれに比べると、どんどんテストをして何周も繰り返し覚えていくのに向いています。手軽に持ち運びやすいですし、赤シートなどで隠してテストもできるようになっています。だからこそ一通り歴史の流れを掴み終わった9月ごろから、ほかの志望校向けの問題集と並行して進めていくことをおすすめします。
ただその分難易度が高い単語も多いため、必ずはじめは「一番良く出る単語」だけを覚えていくなどの工夫が必要です。
出版社は山川・東進・学研などどこでもOKです。デザイン等使いやすいものを選びましょう。
歴史科目の勉強法3:志望校に合わせた対策
最後は志望校に沿った対策です。世界史や日本史は志望校によって出題形式が大きく異なりますから、志望校の出題形式に合った対策をしていかなければいけません。
形式としては大きく分けると、
- 私立大学の選択肢問題(難易度高め)
- 国公立大学の論述問題
- 共通テストの選択肢問題
のようになります。もちろん私立大学でも一部3行程度の論述を課すこともありますから、自分の志望校の過去問をきちんと見て確認しましょう。
こうした志望校別の対策を早ければ夏休みから初めて、11月〜12月には過去問にも取り組める状態にしていけるようにしましょう。
私立大学:細かい単語まで覚える+選択肢問題の演習
多くの私立大学では、共通テストに近い形式の「正しいものを選びなさい」「誤っているものを選びなさい」といった選択肢問題、または語句の穴埋め問題が出題されます。例えば早稲田大学商学部の日本史だとこのような感じです。
出典:早稲田大学商学部2019年日本史
こうした私立大学を受験する場合は、大きく分けて
- 入試レベルに合わせた細かい語句の確認
- 入試の形式に合わせた問題の演習
の2つが必要になります。
「入試レベルに合わせた細かい語句の確認」は特に早稲田・慶應・上智レベルの大学で必要になります。マーチレベルまでであれば一問一答の頻出のものをしっかり確認しておくだけでも十分対応が可能ですが、この上位校になるとなかなかそうも行かないので注意しましょう。一問一答の星無し(頻度が低い単語)まで覚えたり、問題を解くたびに周辺知識を用語集で確認したりすることも重要です。
とはいえ、早慶レベルの歴史科目であっても半分以上は基本的な語句の問題ですから、歴史科目で差をつけたいという人以外はまずはしっかり基本レベルを解けるようになるように意識してほしいです。
これよりもやり込むべきなのは「同じ形式の問題集」、具体的には「実力をつける100題」や「標準問題精講」などのシリーズ、また「早稲田大学対策世界史」などの大学別の問題シリーズです。
実際の問題に近い問題をいくつも解くことで、穴埋め形式や一問一答では慣れづらい「問題の解き方」や「ヒントの探し方」に注意することが出来ますし、何よりこの形式の問題は解き慣れていないと時間内にスムーズに答えを出すことが難しくなります。
基本的なレベルから少しずつやり込んでいき、志望校のレベルまで底上げをしていきましょう。
「実力をつける100題」でも難しく感じる場合は、旺文社の「全レベル問題集」などでもよいですね。
国公立大学:歴史の流れをより意識した論述の演習
国公立大学の試験は私大のような選択肢問題ではなく、先ほど触れた東大のような論述問題であることがほとんどです。もちろん一部語句問題なども合わせて出されますが、一番対策が必要になるのはこの論述問題です。
論述問題をこなせるようにするためには、志望校の傾向や文字数に合わせた対策はもちろん、より正確に歴史の流れを捉えていくことが必要です。このときに役立つのが教科書で使われているフレーズなどをしっかり読み込んで覚えていくこと。教科書も大学入試と同じく大学の教授らが作っている場合が多いため、教科書で使ったような表現はそのまま問題を解く際にも応用できる場合が多いからです。
9月以降に、こうした教科書や、世界史であれば地域ごとの歴史として捉え直す参考書などを読みつつ、論述の「ツボ」を押さえていきます。これと並行して実際に論述の問題を書いていき力をつけていくことになります。
実際に書く時間がそこまで取れないという場合や2周目以降は「構成を書くだけ」でもOKです。字数に合わせて「だいたいこのくらいの内容を盛り込めば良いな」というふうに書く内容を整理するだけでもよいです。
共通テスト:過去問・予想問題で選択肢問題に慣れる
共通テストの対策も、基本的には私大の対策に近いです。ただ、「実力をつける100題」レベルをやり込むには時間がかかってしまうことも多いので、基本的には「センター試験の過去問」や「模試の過去問題集」などで対策をしていくのが良いでしょう。
国公立志望であれば共通テストの対策は比較的重めにやらなければいけませんが、基本的には個別試験の対策をメインにしつつたまに過去問などで知識を補給していく程度で良いでしょう。
日本史・世界史勉強の注意点
最後に簡単に注意点をまとめておきましょう。
予習をどんどん進めて、夏前には1周しよう
何度も行っていることですが、予習をしっかり進めておきましょう。夏前に1周ということを合言葉にしておいてください。
共通テストだからとあなどるな!意外と細かい問題も問われる
「共通テストでしか使わないからそんなに対策しなくていいでしょ!」と思っている人ももしかしたらいるかもしれません。
少なくとも日本史・世界史においてはこのことは当てはまりません。共通テストレベルとはいえ、細かい問題も意外と問われるのです。例えば歴史事項の並び替え問題であったり、地図における場所を示す問題であったりは、普通に勉強しているだけだとなかなか解くことは出来ません。もちろん70点位が目標点であればそこまで細かく確認する必要はない場合も多いですが、ある程度高得点を狙う場合は一問一答だけでなく資料集なども活用しながらしっかり時間をかけていくこと、そしてこうした共通テスト特有の問題にセンター過去問や予想問題などで慣れておくことが重要です。
社会の勉強にハマりすぎないように
最後、これも重要なことですが、「社会にハマりすぎない」ことも重要です。歴史が好きな人は特に注意です。
歴史が好きな人ほど、ついつい歴史科目ばかり勉強してしまうことがあります。しかも歴史科目は他の英語や数学と比べても点数が上がりやすいため、どんどん歴史にハマってしまうということも珍しくありません。
ただ残念なことに、多くの大学では社会よりも英語や数学・国語の配点のほうが大きいのです。
共通テストでもそうで、いくら世界史でいい点をとっても上限は100点ですが、英語であれば200点までとることが出来ますよね。
もちろん大学によってこのバランスは違いますが、社会にハマりすぎないようには注意しておきましょう。
今回は社会、特に歴史科目の勉強法をお伝えしました!高3生は今すぐ始めましょう!
学習塾STRUXはいつでもオンラインでの無料体験&授業も実施しています。無料体験でやるべき参考書についても解説しているので、ぜひお気軽にご相談ください!
それでは!
ライター:橋本拓磨
東京大学法学部卒。学習塾STRUX塾長・STRUX大学受験マガジン監修。日本全国の高校生に、場所によらず正しい勉強を広めて、行きたい大学に行き、将来の選択肢を広げてほしい!という思いからSTRUXマガジンを監修。
詳しいプロフィール・サイトにかける思いはこちらから!
他の連載記事を見る!
Twitterはこちら
ストマガのYouTubeチャンネルはこちら