有機分野は、化学の中で「理論分野・無機分野」と並ぶ3大分野のひとつで、主に炭素Cを含む化合物について学びます。
暗記しなければならない内容自体は無機分野よりは少ないですが、無機と比べると各要素の「組み合わせが多い」ので、論理的な思考が必要になる分野です。特に「構造決定」など複雑な思考力を求められる問題もあるため、決して油断できません。
この有機分野を乗り越えるには、各ジャンルの特徴を掴んで正しい方法で勉強することが大切です。今回の記事では、有機分野の主なジャンルやそれぞれの詳しい勉強方法について解説します!
大学入試や模試ではどんな有機の問題が出題される?
化学の有機の問題は、大きく以下3つのジャンルから出題されます。
- 知識問題(高分子に関連する単元が多い)
- 計算問題
- 構造決定の問題
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
知識問題
知識問題は、覚えていれば解ける問題ばかりです。例えばこんな問題が出題されます。
- 銀鏡反応を示すものを次から選べ
- 「(あ)~(か)に入る語句を書け」
とくに糖やアミノ酸など「高分子の単元」から出題されることが多いです。もちろん、それ以外の単元でも知識の暗記は必要ですが、それはあくまでも計算問題や構造決定問題を解くために必要になります。
計算問題
化学の有機分野では、計算問題も意外と出題されます。例えばこんな計算問題が出題されやすいです。
- AからBを作ると、いくらBができるか?
- 理論値と比べての収率はいくらか?
また、計算問題が単体で出題されるのではなく、「構造決定問題の途中で計算を使う」という場合もあります。
この計算問題に、苦手意識を感じる受験生も多いですが、有機分野において「難易度の高い計算問題」が出題されることはほとんどありません。それにもかかわらず計算問題が苦手と感じる人は、有機分野に限らず「計算問題自体が弱い」可能性があります。なので、理論分野で習う計算系の問題を先に解けるようにしておきましょう。
構造決定問題
構造決定問題は、有機分野における最難関のジャンルです。MARCHレベル以上の大学であれば、ほぼ必ず出題されます。構造決定問題を解けるようになるには、下準備となる以下の勉強が必要です。
- 簡単なmol計算
- 命名法の理解、暗記
- 官能基の性質の理解、暗記
- 化学反応前後の物質と、どういう条件で反応が起こるかの理解、暗記
- 構造決定問題の解き方の手順の理解、暗記
上記のジャンルを見てわかるように、構造決定問題は「簡単な計算」「知識の暗記」「構造決定特有の解き方のコツ」のすべてを身に付けないと解けません。だからこそ、問題のレベルが高くなりやすいのです。
このようにレベルが高いジャンルであるために、構造決定問題で躓いている人も多いのではないでしょうか?
- 有機分野の問題は「知識問題」「計算問題」「構造決定問題」に分かれる!
- 知識問題はただの暗記。
- 計算問題は理論とのつながりが強い!
- 構造決定問題は総合力勝負!
有機分野を得意にするための勉強法を紹介!
有機分野の基本的な勉強法
まずは化学全体に通じる基本的な勉強法を解説します。それが次の通りです。
基本の理解
↓
基本問題の演習
↓
応用問題の演習
↓
過去問演習
最初に基本の内容を理解することが大切です。基礎的な単語などを理解しなければ、問題演習に取り組んでも解けません。基本の理解については、学校の授業をしっかり聞いて身につけたり、映像授業の『スタディサプリ』を使って学習したりしましょう。
ただし、学校の授業は進度が遅いことも多いため注意してください。とくに有機分野は、高校化学の中で最後に習う分野なので、受験直前にならないと学校の授業が終わらないこともあります。あまり授業のペースが遅いようなら、自力で進めましょう。「高3の夏休み前までに全単元を終わらせて教科書の基本的な内容理解は終わっている」という状態が理想です。
化学の基本の勉強については以下の記事を参考にしてください!
基本の内容を理解できたら演習に取り組みます。暗記の時間は最低限に抑えて、できるだけ「手を動かして問題を解く時間」を増やしましょう。
『セミナー』や『リードα』といった学校で配られる問題集を使って演習すれば、MARCHや関関同立などのレベルに対応できるようになります。
もっとレベルの高い大学を狙うなら『重要問題集』などで発展レベルの問題を解きましょう。
最後に仕上げとして、過去問演習に取り組みましょう。とくに有機分野は、大学ごとで「構造決定問題が頻出」などの特徴があるので、過去問演習で傾向を掴みながら仕上げることが大切です。
知識問題を勉強する際の注意点
知識問題の勉強では、まず暗記することが重要です。ただし、教科書の暗記事項一覧やプリント、資料集、問題集のまとめページを何時間も漠然と眺めて暗記したり、ノートに全てまとめて暗記したりすることは避けましょう。それよりも、問題を解きながら覚えたほうが効率的です。
具体的には、時間を区切って最低限の暗記をしたら、そのまま問題演習に取り組みましょう。例えば以下のページであれば、「10分以内に覚えられるだけ覚えてすぐに問題演習に取り組む」というイメージです。
このように思う人もいるでしょう。もちろんちゃんと理由があります。
人間が知識を効率的に暗記できるのは「知識を思い出そうとするとき」です。問題演習では「覚えた知識を思い出そうとする作業」が発生するため、漠然と教科書や資料集などを眺めるより、効率的に知識を身に付けられます。
また、問題演習に何度も取り組むと、意外と「細かい知識を覚えていなくても消去法で解ける問題が多い」ということにも気付けます。そうした気付きを蓄積して問題演習のたびに対処できるようになれば、入試本番で細かい知識が抜けても解けるようになるでしょう。
そもそも、いつまでも教科書や資料集で知識だけを覚えても、実際の問題を解けなければ意味がありません。暗記だけに時間を割いて問題演習を疎かにした結果、「勉強したのに成績が伸びない・・・」となると、モチベーションも下がるため気を付けましょう。
計算問題を勉強する際の注意点
計算問題については、有機分野の全単元で出題されます。例えば以下のような問題が出題されます。
- Aを元にBを作ったらどれくらいできる?
- 理論的にできる量と比べたときの収率は?
また、先ほども触れたように、構造決定問題を解く中で必要となることもあります。
しかし有機分野の計算問題は、理論分野と比べればそこまで難しくありません。基本的なmol計算と最低限の知識を身に付けておけば対応できます。
有機分野の暗記も進めつつ、並行して理論分野の計算を解けるようにしておきましょう。
化学の理論分野に関する勉強については以下の記事も参考にしてください!
≫理論の記事
構造決定問題を勉強する際の注意点
最後は、有機分野の最難関ジャンルである、構造決定問題の勉強法です。あらゆる形式の構造決定問題を解けるようになるため、以下の項目を勉強して準備をしましょう。
- 簡単なmol計算
- 命名法の理解、暗記
- 官能基の性質の理解、暗記
- 化学反応前後の物質と、どういう条件で反応が起こるかの理解、暗記
- 構造決定問題の解き方の手順の理解、暗記
まずは簡単なmol計算をできるようにしましょう。mol計算は、理論分野の学習にしっかり取り組んでいれば十分対応できます。
次は命名法や官能基の性質などを「理解して暗記」しましょう。この「理解して」というのは、例えば「プロパノール」という言葉を見て「化学式が書ける状態」「官能基の性質が言える状態」にする必要があるということです。ここでは例としてプロパノールを出しましたが、すべての物質で化学式を書いたり性質を言えたりするレベルまで勉強しましょう。
次は、各種反応についても理解して暗記します。ここでは、例えば「置換反応」「付加反応」という言葉を理解しなければなりません。さらに、以下の一覧表に載っているような「反応の前後の物質」を覚えて、「その反応がどんな反応なのか」まで把握し、その知識をスラスラ使える状態にする必要があります。
この辺りの知識は、問題を解かないと覚えられません。「一覧表を完璧に覚えてから問題を解く」というやり方は非効率なため、必ず問題演習をしながら身に付けましょう。時間を区切って各種反応をある程度覚えたら、問題を解きながら記憶に定着させていってください。
ここで問題を解く際に必要となるのが「構造決定問題の解き方の手順」に関する知識です。以下で要点を簡単に解説します。
構造決定問題の解き方
構造決定問題は解き方の手順が決まっているため、覚えてしまえば入試で効率よく問題を解けるようになります。
具体的な解き方の手順は以下の通りです。
- ステップ1
- 組成式・分子式を決める
- ステップ2
- CとOから作られる異性体を全て書き出す
- ステップ3
- 問題文の条件に合う異性体をピックアップする
まずは組成式を決めます。最初から与えられている場合は、この作業はパスすればOKです。
よくあるのは、調べたい有機物を燃焼させて、そこからできた二酸化炭素と水のmolから組成式を決める方法です。どの問題集にも必ず載っているので、解き方を覚えておきましょう。この段階で分子式まで決まることがほとんどです。
次にやるのがCとOから作られる異性体を全て書き出すこと。与えられた分子式から、どのような骨組みができるかをチェックしていきます。
たとえば$\mathrm{C}_{3}\mathrm{H}_{8}\mathrm{O}$であれば、CとOから作られる骨格は次のようになります。
最後にこの異性体の中から、問題文の他の条件に見合うものを選んで終わりです。
まとめ
化学の有機分野では「知識問題」「計算問題」「構造決定問題」という3つのジャンルが関係し合ってさまざまな問題が出題されます。とくに構造決定問題では、基礎的な知識や計算力が幅広く問われるため、苦手に感じる人も多いでしょう。
とはいえ、過度に苦手意識を感じる必要もありません。最低限の知識を覚えて正しい方法で問題演習を繰り返せば必ず成績は上がります。有機分野に苦手意識を持つ人が多いからこそ、しっかり勉強して周囲と差をつけましょう!
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