数学における過去問演習は、その勉強法次第ではまったく成績が上がらず時間・過去問のムダづかいになりがちな分野です。その一方で、正しい勉強法で進めれば圧倒的に得点率のアップが狙える分野でもあります。
このページでは、過去問演習の正しい勉強法を1からすべてていねいに説明します。このページを熟読し正しい勉強をすることで、他の受験生に圧倒的に差をつける過去問演習にしましょう!

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数学の過去問演習の方法を教えてください!

数学の過去問演習の方法を教えてください!







戦略1:過去問演習で敵を知ろう!




過去問演習と問題演習の違い
そもそも過去問演習と問題演習、皆さんはこの2つの演習の目的の違いを説明できますか?


過去問演習と問題演習、演習の目的はそれぞれ以下の通りです。
問題演習:様々な種類の問題を解き、問題を解く力を身につける
過去問演習:志望校の過去問を解き、出題形式・時間配分・頻出分野に適応する


「問題演習」では、数学ⅠAでは2次関数の問題や整数問題、数学ⅡBではベクトルや軌跡、数Ⅲでは複素数平面や微分積分など、幅広い種類の問題が出てきます。皆さんはその幅広い問題を解きこなすことで、問題を解く力を身につけることができます。

その一方で、「過去問演習」では大学によっては「確率の問題は毎年出てくるのに、整数問題は出てこない」のようなかたよりがあります。さらに決められた制限時間の中で、答案の書き方や一問あたりにかけられる時間の長さなどを身体で経験することができるのです。
このような本番さながらの過去問演習を行うことで、問題演習でつけた実力を発揮することができるようになるのです。

戦略2:過去問演習の具体的な勉強法






ではここからは、数学の過去問演習の具体的な勉強法について説明していきます。
ここからは、
- 1)具体的な勉強方法
- 2)時系列でみた勉強法
の順番で、説明していきたいと思います。
1)具体的な勉強方法

まずは基本的な勉強の流れから確認します。基本的な流れはこちら!
①時間をはかり、本番同様にすべての問題を解いてみる
②答えをみながら、採点をしていく
③間違った問題について、答えをみながら復習する
④間違った問題を、もう一度解く
こちらが、過去問演習の基本的な流れです。ここからは①~④までの詳しい勉強の仕方を見ていきましょう。
①時間をはかり、本番同様にすべての問題を解いてみる
最初にやるべきことは、当たり前ですが過去問を解くことです。ただし過去問を解くといっても注意点がいくつかあります。
演習を始める前に、自分の目標点数を確認する
過去問演習をする前に必ずやるべきことがあります。それは数学の目標点を確認するということです。

目標点数が50/100点であれば、極端な話、半分の問題が解き終わらなくても、残りの問題が正解できれば目標点に達します。ですが、目標点数が70/100点だった場合、最低でも7割の問題は解く必要があります。
あなたがもし、全体のうち6割の問題しか解けなかったとしましょう。ですが50点を目指すのであれば、あなたの問題を解くスピードは十分でしょう。あとは正答率を上げるだけです。ですが70点を目指すのであれば、そもそも問題を解くスピードを上げる必要が出てきます。

ですから、過去問演習をする際にはまず目標点数を確認しましょう。
もしこの中に、「目標点数ってなに?」・「目標点数なんて決めてないよ」・「そもそも配点を知らない」なーんて思っている人いませんか?
非常に危険です!! あなたはやってはいけない勉強法をしています。まずこのページを読んで、今すぐ自分の目標点数を決めましょう。


制限時間をしっかり計り、問題を解くこと
過去問演習は、しっかりと本番と同じ試験時間で解きましょう。
過去問演習の目的の一つに、志望校の問題量から時間配分を考え、身体で慣れる、というものがあります。たとえすべての問題が解き終わらなくても構いません。まずは制限時間の中でできる限り点数を最大化する努力をする訓練を積みましょう。

また中には

という人もいるかもしれません。そんな人も試験と同じ時間を使ってできる限り点数を最大化することを試みてください。
制限時間以内に解き終わらなかった場合は、時間を延長し解き終えること
もし、すべての問題が解き終わらなかったら? その時は、制限時間で解けたところまでに印をつけておき、時間を延長して残っている問題も解きましょう。
過去問演習の目的の中には、志望校の問題形式の傾向を知る、というものがあります。しっかり全ての問題を解くことで、志望校に出てくる問題傾向を知り、さらなる対策を積むようにしましょう。

問題用紙・解答用紙は本番と同じ大きさのものを使うこと
そして問題を解く際には、できる限り試験本番と同じ大きさの問題用紙・解答用紙を使用しましょう。
解答用紙の大きさは、過去問題集に記載されているケースがあります。試験本番と同じ大きさの問題用紙・解答用紙を用いて演習をすることで、文字の大きさや記述量の調整や、計算に使える余白の大きさなどを、身をもって知ることができるのです。

演習する際は、始まったらまずすべての問題に目を通すこと
ここからは、演習をしている間の注意です。まず演習が始まったら全ての問題に目を通しましょう。
試験では、どれくらいの難易度の問題がどれくらいの量出ているのかを把握することが大切です。それをふまえて、どれくらいのスピードで解いていくのかを考えましょう。そうすることで、試験終盤で「時間がない……。」といってあせる心配がぐっと減ります。

皆さんが受験をする年度に限って問題量が変わるケースも考えられます。普段の過去問演習の時から、はじめにすべての問題をみるくせをつけておきましょう。
解ける問題を白紙にしないこと
そして、問題を解き始める時には、解けそうな問題を優先して解いていきましょう。必ずしも最初の問題から解く必要はありません。自分が得意な分野、解けそうな問題から解いていく、というスタンスが重要です。
特に完璧主義の人に多い傾向として、「自分の解けない問題を解こうとして、無駄に時間を使ってしまう」ということがあります。試験では満点を取る必要は全くありません。目標点数を取れればいいのです。自分の解けそうな問題から解いて、点数を最大化しましょう。

本番に試験官に採点してもらう答案と同じレベルで、解答を論述すること
答案をかく際には、試験本番に採点してもらえるレベルのものを書きましょう。読めるレベルの文字で書き、途中式だけでなく日本語による説明も必要であれば書きましょう。

②答えをみながら、採点をしていく
そして演習が終わったら採点をしましょう。採点は自分でやってもかまいませんし、学校や予備校の先生にお願いするのでも良いでしょう。
ここでも注意点をまとめておきます。
最初は自分で採点をしてみよう
学校や予備校の先生に採点をお願いする場合でも、最初は自分で採点をしてみましょう。ただしこの採点は必ずしも厳密にする必要はありません。大体100%・70%・50%・20%・0%のどれか当たるかを考えればOK。これで自分の答案が正解までどれくらい近かったのかを把握することができます。

自分の得点はメモを作っておく
自分の取った点数は、メモを残しておきましょう。そうすれば他の年度の得点と比べて、自分の成長を確認したり、今の自分が平均してどれくらいの得点を取れるのかを推測したりできます。

③間違った問題について、答えをみながら復習する
採点が終わったら次は復習です。間違った問題について、まとめてやるのではなく一問一問分けておこないましょう。
復習のステップは以下の3ステップです。
- step1
- 解答解説をしっかり読みこむ
- step2
- レポート用紙・ノートなどを使い、解答をみずにもう一度解いてみる
- step3
- 解答をみながら、正しい答案を作れているか確認する
こちらも以下に注意点をまとめていきます。
必ず行うこと!
復習は必ず行ってください。復習をしないで他の勉強をするなんて言うのは言語道断。できない問題をできるようにするのが、学力を伸ばす最大の勉強法。
間違った問題は必ず復習してください。


復習した問題は、必ず自力で解けるようにしておくこと
そして復習をするのは、ただ間違った解説を「ふーん」と思いながら眺めているようではいけません。重要なのは、解説を見終えた後に「じゃあもう一回解いてみて!」といわれたらさらさら解けるようになっているかどうか。
入試直前に復習していたつもりの問題が解けないようでは、過去問を復習した、とは言えないでしょう。


逆に言えば、間違った問題が解けるようになっていれば、それだけ力がついたということです。復習した問題がすらすら解けるようになっている、こんな当たり前のことをするだけで成績はあっという間に伸びていきますよ。
解答を見終えた問題は、実際に解きなおしてみる
解答を見終えたら実際に解きなおしてみましょう。すらすらと答案をかければ合格。次の問題に進みます。逆にここで間違っているようであれば、復習はしていないのと同じです。もう一度解答を見直してから、解きなおしをしましょう。





④間違った問題を、時間をおいてからもう一度解く
さて、①~③をすべて終えたら、しばらく時間をおきます。そして、次の数学の過去問演習をするときになったら、④に入ります。
何をするのか。それは前回間違った問題をもう一度解いてみる、ということです。当たり前のことですが、ここで再び間違ってしまった問題に関しては、試験で類題が出てきても解くことはできません。





確かに、この段階で全て解けるようになっているに越したことはありません。ですがそれができる人はほぼいないでしょう。人間は忘れる生き物なんですから。
その代わり、間違った問題に関しては、「③間違った問題について、答えをみながら復習する」の手順にのっとって、もう一度復習しましょう。繰り返し復習をすることで、類題が出てきても答えられるような応用力がついていきますよ。


コラム:復習ノートって作ったほうがいい?
ここまでを読んだ人の中には、

と思った皆さんもいるのでは? 復習ノートとは間違った問題だけ、その問題文と解答をメモしたノートのことです。その答えとしては

というものになります。ノートを作る時間、それ自体は勉強時間としてはとても非効率的です。中には

と思う人がいるかもしれませんが、それが大きな落とし穴。
確かにノートを作っているうちに、頭は整理されるし、暗記をできるかもしれません。ですが時間をかけてノートを作る時間があれば、次の1問2問を復習できませんか? 時間をかけてノートを作るより、より多くの問題を復習したり、復習の回数を増やしたりするほうが大切です。

ですから、復習ノートを作る際には、時間をできる限り短縮しましょう。具体的なノートの作り方としては、
①間違った問題をコピーしておく
②ノートに張り付ける
くらいで十分です。解答例などを書き込む必要はありません。また問題を解く際に重要となる考え方などに関しては、解答例の脇に書き込むなどすればよいでしょう。

2)時系列でみた勉強法
ここまでで、過去問演習の方法が分かったところで、どれくらいのペースで過去問を解けばいいのか説明していきます。
お悩み相談① 過去問演習、何日に一回すればいい?


時期にもよりますが原則1週間に1回を目安に学習を進めていくと良いでしょう。
※ただし東大京大をはじめとする、過去問が大量に入手できる大学に関しては1週間に2,3回のペースで解いていってもかまいません。
お悩み相談② いつくらいから始めたほうがいい?


また、センター試験の過去問演習が必要な場合は、12月以降から演習を始めても問題ないでしょう。
お悩み相談③ 第一志望校の過去問、何年分解く?


基本的に第一志望校の過去問については、見つかる分はすべて解くのが良いでしょう。解けば解くほど、志望校の傾向を把握することができ、時間配分もうまくなっていくからです。
ただし東大京大をはじめとする一部の難関国公立では、20年分以上の過去問があるケースもあります。その場合には10年分は解ききり、あとの年度は目標点に到達しない場合にこなすようにすると良いでしょう。
お悩み相談④ 過去問を使うタイミング:早めに使い切る?残しておく?


過去問を「まだ実力がついていないから」、「直前に解きたいから」といって残しておく人がいますが、それは典型的な「志望校に落ちる人」の勉強法です。
志望校の過去問演習をこなすことで気づくことがあるはずです。


このように志望校の過去問を早めにこなすことで、今後の学習を効果的にこなすことができ、結果的に数学の力を効率よく伸ばすことができるのです。
お悩み相談⑤ 第二・第三志望校の過去問、いつ解く? 何年分解く?


第2志望校以下の大学に関しては、基本的にあまり過去問を多く解くことはおすすめしません。なぜならばその過去問を解く時間で、第一志望校に特化した学習をする時間が失われてしまうから。
極端な話をすれば、東大が第一志望校ならば、東大にさえ受かれば慶應と早稲田には落ちても何の問題もないのです。
であれば、第一志望校以外の過去問に関してはなるべく解く時間を減らし、第一志望校の対策をしたほうが良い、ということになります。ですので第二志望校以下に関しては2年分の過去問で十分でしょう。
お悩み相談⑥ 第一志望校の過去問がなくなったら、どうする?


まとめ
●解くペース
第一志望校⇒1週間に1回
第二志望校など⇒1週間に2回
●いつから解くか
国立志望⇒9月がベスト。遅くとも12月から。
私大志望⇒11月がベスト。遅くとも1月から。
●解く年数
第一志望校⇒最大10年分(あるだけ解く、10年分以上あるなら時と場合による)
第二志望校など⇒2年分
まとめ

●過去問演習と問題演習は違う!
●間違った問題は、何も見ないで解けるようになることが大切!
●過去問は使い惜しまずに、1週間に1年分解いていく!
