漢文で得点を稼ぎたいけど、読めない……。そんな人は多いのではないでしょうか。この記事では、その基本である句法を、たとえ知識がなくてもたった1か月でマスターできる勉強法を紹介します。
漢文の文法・句法で覚えるべきことを整理しよう
漢文の勉強で最も重要なのは「句法」です。ここでいう「句法」とは、ある決まった意味を持っていて、よく使われる漢字のセットのことだと思ってください。
英語や古文であれば「単語と文法から覚えましょう!」とアドバイスされることが多いですが、漢文で「単語や文法を覚えましょう!」とはあまり聞きませんよね。
ここではそもそもなぜ「句法」が最重要なのか、そして、漢文の文法事項の勉強手順を簡単にお伝えしていきます。
漢文で「句法」が最も重要な理由
漢文では、他の言語を学ぶときに一番最初に覚える「単語」は後回しで、「句法」という意味の鍵になるルールを覚えることが優先になります。
漢文と、同じく「言語」を学ぶ古文や英語とで異なるのは、「それぞれの文字が意味を持っている」という点。
古文のひらがなや英語のアルファベットは、1文字1文字で意味を持っていません。
そのため、複数の文字を組み合わせて1つの単語を作って、それぞれの単語を覚えていかなければいけません。
しかし、漢文はすべて「漢字」で書かれているため、普段使っているような漢字、見たことがある漢字もたくさん登場します。
何より、漢字は1文字1文字に意味がある「表意文字」なので、単語として覚えずとも漢字を見ればなんとなくの意味がわかるようになっています。
そのため、
- 決まって特殊な訳になる、頻出の漢字
- 現代で使われている漢字と異なる意味のもの
- 当時の官位や身分などの用語
といった特殊な漢字のみ覚えておけば、単語をそこまで覚えずとも意味を理解することができるんですね。
句法はこの漢字の中でも「必ずこういう読み方をして、こういう意味になる」という、文章の意味の鍵になるものを指します。
例えば「使」という漢字が出てきて、後ろに人名、動詞と続いていたらほとんどの場合「誰々に〜させる」という「使役」の意味になります。
「況」という漢字が出てきたら「いわんや」と読み、決まって「ましてや〜はなおさら…」と訳さなければいけません。
このように、一部の漢字は特殊な訳の仕方をする必要があり、かつ文の意味をガラッと変えてしまうものになっています。
これがいわゆる「句法」と呼ばれるもので、この句法をきちんと覚えていることで、正確に、かつスムーズに漢文の意味がつかめるようになります。
漢文は「返り点の読み方」「句法」「単語」の順で覚える
漢文で点数を取るためには、文法を次の順番で勉強していく必要があります。
- Step1
- 返り点の読み方
- Step2
- 句法
- Step3
- 単語・漢字の意味
それぞれ覚えるべき内容と理由を見ていきましょう。
1.返り点の読み方
漢文はもともと中国の古典であった文章を、日本語に合わせて読み直して意味を理解する分野です。そのため、まず最初に漢字の並びを意味の通る日本語で読めるように直す必要があります。
そのための読み方のルール・順序を示すために補助的に入れる記号が「返り点」です。返り点があることで、どの順番で漢字を読むかがわかるようになるので、一番最初にスラスラ読めるように練習しておく必要があります。
返り点は全部で4種類あります。
- レ点
- 一二三点
- 上中下点
- 甲乙丙点
返り点をマスターするコツは音読です。このあとに紹介していく『漢文ヤマのヤマ』でそれぞれの返り点のルールを理解できたら、とにかく例文の音読をしてください。例文を10回ぐらい音読すれば自然と返り点のルールが頭に入ってきます。意識しなくても読めるようになってくると、あなたも漢文の返り点をマスターしたと言えるでしょう。
そして、このときに返り点と合わせて、再読文字や置き字といった漢文のルール、主語と動詞、目的語などの順番がどうなっているかなどの漢文の文章構造も確認しておくのがおすすめです。
正確な構文の説明とは異なりますが、漢字が英語のように「主語→動詞→目的語・その他」のルール通りに並んでいると知っているだけでも、スムーズに読めるようになります。
句法
返り点の読み方がわかり、漢文を「書き下し文」に直して読むことができるようになったら、ようやくここで漢文の「句法」を勉強していきます。
句法には、たとえば以下のような種類があります。
- 否定
- 反語
- 使役
- 疑問
まだまだたくさんの種類があるのですが、全部の句法をあわせても暗記すべき量は100個程度がせいぜいです。英文法に比べれば、圧倒的に覚えるべき量は少ないんですね。
句法をマスターするポイントも、返り点の読み方と同じく「音読」です。多くの句法書には例文がついているので、なんどもなんども例文を音読しましょう。
単語・漢字の意味
最後は単語の勉強です。単語と聞くと「英単語のように大量の単語を覚えないといけないの?」と不安に思うかもしれませんが、漢文で覚えるべき単語や漢字の意味は50個もありません。
逆に、このわずかな単語を覚えてしまえば漢文の読解で困ることはありませんし、単語の読み方や意味を問う問題も簡単に解くことができます。
漢文句法の覚え方・勉強法を具体的に確認しよう
漢文句法の重要性と勉強の手順がわかったら、ここからは具体的な句法の暗記法を見ていきましょう。
ここでは「返り点」や「単語」はいったん置いておいて、最も重要な「句法」の覚え方・勉強法についてお伝えしていきます。
漢文の句法は「短期間で」覚えてしまおう!
これは暗記モノに取り組むときの大原則ですが、漢文の句法は必ず「短い期間で」集中して覚えるようにしてください。
漢文で覚えるべき句法は50〜60個、多く数えても100個程度。
1日1つ覚えれば3ヶ月で覚えられる…と考えてしまいがちですが、このように少しずつ覚えてしまうと、3か月後には最初にやった句法は忘れてしまっている可能性が高くなります。
毎日1つの句法を覚えていくよりも、1日に5つくらい句法を覚えて、10〜20日くらいで1周してしまい、早めに2周めに取り組むほうが、完全に忘れてしまう前に改めて覚えられるため、短い勉強時間で句法をマスターできるようになります。
覚える量も多くないため、ぜひ1ヶ月で8割以上句法を覚えきるつもりで取り組んでください。
漢文句法は『漢文ヤマのヤマ』で覚える!
具体的な勉強法を、こちらの『漢文ヤマのヤマ』を例に紹介していきます。
『漢文ヤマのヤマ』は、漢文の句法で重要なものを一通りまとめているシンプルな問題集。難易度もそこまで高くなく、「右ページで句法・例文と解説、左ページで問題」という取り組みやすい形式になっています。
句法だけでなく文構造や再読文字、返り点などの基礎、また実戦形式の問題やよく出る漢字の読み・意味で重要なものまでまとまっているため、漢文の文法まわりの勉強はこれ1冊完璧にすればOK!というものになっています。
- 共通テストや2次試験で出題される漢文の句法が網羅されている
- 句法だけではなく、よく出題される漢字の”読み方”や”意味”もまとめられている
- 解説がわかりやすくて、漢文初心者でも句法をマスターできる
- 解説だけではなく、演習もできるようになっているから1冊で試験で使えるようにレベルアップできる
- 基礎から解説してくれるから、漢文が苦手な人でも漢文が得意になる
参考書の詳細はこちらの記事でも説明しています。
『漢文ヤマのヤマ』を使った具体的な漢文句法の勉強法
これまででお伝えした通り、漢文の勉強のポイントは次の3つ。
- 句法と例文を何度も唱えて覚える
- 問題を解いて定着させる
- 短い期間で何度も繰り返す
この3つが守れていれば、漢文の句法が覚えられない!という心配はありません。ここでは『漢文ヤマのヤマ』に3周取り組む前提で、勉強法を具体的にお伝えしていきます。
漢文句法1周目の勉強法
1周目は右ページの「句法の解説」と「句法の例文」を活用していきます。
左ページにある問題は2周目以降に活用していくので、1周目は右ページを進めることに集中してください。
- Step1
- まずは「句法」「読み」「意味」と「ヤマを講義」(解説)を読む
- Step2
- 書き下し文を参考に句法そのものと句法の例文を一度音読する
- Step3
- 現代語訳が書いてあるので、意味を現代語訳で確認する
- Step4
- 意味を理解できたら、句法を10回、句法の例文を10回音読する
漢文の句法を学んでいく上でポイントとなるのが音読です。声に出して句法の例文を何回も音読することが、もっとも効率のいい勉強法です。なぜなら、漢文には独特のリズムがあり、実際に声に出して音のリズムと一緒に覚えるとよく定着するからです。
1周目はどんどん句法を理解して、例文や句法そのものを覚えていく段階です。
例えば『ヤマのヤマ』には、使役形の句法で
A 使 B C
というものがあります。
『ヤマのヤマ』では、この下に「ABをしてCせしむ」という読みと「AはBにCさせる」という意味が書いてあります。
まずはこの「読み」「意味」、そして「ヤマを講義」と書いてある解説部分を読んで理解しましょう。
理解できたら頭に入れる段階。Step1で最初に見た句法を読みのとおりに一度音読してみて、この句法がどこで使われているかを意識しながらその左の例文も音読することがポイントです。
ここまで確認できたら、意味も確認してあとは何度も繰り返し読むだけ。
句法も「ABをしてCせしむ、ABをしてCせしむ……」というふうに繰り返し唱えてほしいですし、例文も繰り返し声に出して暗唱できるレベルにしましょう。
1周目のポイントは次の通り。
- 1周目で暗記する必要はない。まずはどんどん進めることを意識!
- 1周目では、問題を解く必要はない!解説を読むのと音読だけでオッケー!
- 句法の例文は、どの例文も10回以上音読しよう!
なにより、1周目で完璧に覚えきろうとしない事が重要。完璧にしようとして時間をかけるより、どんどん先に進んで早めに2周目で戻ってくるほうが効果的です。
漢文句法2周目の勉強法
2周目からは左ページにある問題にも取り組みます。実際に問題を解くことによって、漢文の句法が定着していきます。
2周目では、1周目で学習した「句法の解説」と「句法の例文」については軽く触れるぐらいでいいので、問題を解いていくことに集中していきましょう。
- Step1
- 「句法の例文」を3回音読する
- Step2
- 音読をして意味が分からない句法があったら、「句法の解説」で確認する
- Step3
- 左ページの問題に取り組む
- Step4
- 答え合わせを行い、間違えた問題の解説を読み理解する
勉強のポイントは次のとおりです。
- 間違えた問題には✕印を付ける
- 正答率は「半分以上」をまず目指そう
ここからは実際に問題を解いていくことになるので、訳が難しい場合もあるかもしれません。
ここでも正答率はあまり気にせずOK。現代語訳はそもそも意外と難易度の高い作業なので、半分以上正解することを目標に取り組むのがおすすめです。
間違えた問題には必ず×印をつけておいて、3周め以降でもう一度取り組めるようにしましょう。
漢文句法3周目の勉強法
3周目は問題を解くことだけに集中しましょう。1〜2周目で漢文の句法の知識は頭のなかに身についているはずなので、その知識を実際に問題の中で活用していく練習を行うが3周目と捉えて、2周目で間違えた問題を中心に解き直してください。
- Step1
- 2周目で×をつけた問題のみ解き直す
- Step2
- 間違えた問題はその問題の漢文を5回音読して、解説を読む
- Step3
- 左ページの問題演習が終わったら、右ページの例文を3回音読する
このときにまた間違えた、という問題は、改めて×をつけておいてください。100%正解できる必要はないですが、1〜2ページにつき1つ間違い、くらいの正答率にはしたいところです。
3周目でこの正答率にならなければ、同様に4周目に取り組みましょう。
漢文句法の勉強法Q&A
最後に、漢文の句法を勉強するにあたって気をつけておきたいことを確認しましょう。
漢文はいつ勉強すればいいですか?
このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
漢文の勉強はどうしても後回しになってしまいがちですが、いつ漢文に取り組むかは「入試でどのくらい漢文を使うか」によって変わってきます。
基本的には、夏休みなどの長期休みをうまく活用して取り組むのがおすすめです。
漢文の句法は覚えることが多いわけではないため、1ヶ月ほどでまとめてやり切ってしまうのが理想です。
文系で個別試験で漢文を使う、という人はもちろん、文理問わず「共通テストでしか漢文を使わない」という場合も、なるべく高1〜高2の長期休みを活かして取り組みたいところです。
「共通テストでしか使わないし、後回しでいいや…」と思ってしまうかもしれませんが、直前期は理科や社会などに時間を取られてしまい、案外漢文の句法を復習する暇はありません。
すでに高3で…という場合はいち早く取り組んでほしいところですが、高1・高2の場合は次の長期休みを早速活かして、1日30分から1時間程度使ってまとめて覚えてしまいましょう。
覚えることが少ない分、早めに覚えておけば模試などでも点を取りやすくなるため、自信にもつながりますね。
学校の授業だけでは漢文句法の勉強は不十分ですか?
あまり漢文を入試で使わないこともあり、「学校で習うから句法は改めて勉強しなくてもいいんじゃないの?」と思っている方もいるかもしれません。
ただ、学校の授業で扱う句法だけではすべてを網羅できない可能性が高く、かつ覚えるのにも苦労する事が多いためおすすめしません。
授業ではすべての句法を扱うことができない上、句法単体で演習したりテストをしたりということはあまりありません。その上、ほとんどの学校の漢文の授業は古文と交互に行われ、一通りの句法をさらうのにも1年以上かかってしまうので、どうしてもすぐに忘れてしまいがちです。
いくら「共通テストでしか漢文を使わない」という場合でも、まとめて時間を取って覚えるようにしましょう。
共通テストでしか漢文を使わないけど、どのくらい勉強すべき?
ここまでも挙げたとおり、共通テストでしか漢文を使わないという場合でも、句法はきちんと勉強しておくべきです。
もちろん、個別試験で漢文を使う人ほど完璧にする必要はありませんが、共通テストで出題される漢文の問題のうち、20点分ほどは句法や漢字を覚えられていれば解ける問題になっています。
中でも「白文に正しく返り点を打って、訳を答える」という問題は必ず出題されます。
(2022年共通テストより)
この手の問題は句法さえ覚えていれば「この漢字はこの句法で使われていたから、こういう読み方で…」と正解にたどり着くことができるわけです。
共通テストの「評論・小説・古文・漢文」のうち、漢文は最も点数を取りやすく、かつ短時間で解くことができる分野。漢文の点数が安定するかどうかが、そのまま共通テストの国語の点数が安定するかどうかにつながります。
「共通テストでしか使わないし…」と甘く見ずに、なるべく早い段階で句法を覚えておくようにしてください。
すでに高3で『漢文ヤマのヤマ』を使って覚えるには時間がかかりすぎる…という場合は、共通テスト向けの『共通テスト漢文満点のコツ』などを活用してもいいですね。
漢文句法の勉強法まとめ
漢文の句法は覚える数も多くなく、かつ身につけるだけで漢文の点数をぐんと安定させることができるものです。長期休みをうまく活用して、早めに「短期間で」覚えてしまうようにしましょう。
- 漢文は「返り点の読み方」「句法」「単語」の順で覚えよう!
- 句法と例文を何度も唱えて覚えるのが効果的!
- 夏休みなどの短期間でまとめて覚えてしまおう!
もっと具体的に「このとおりに勉強すれば漢文の勉強は完璧、という参考書の流れが知りたい!」という方は、ぜひSTRUXの参考書マップを活用してください!
■ 参考書マップとは? ■
STRUXの「参考書マップ」は、受験までにやるべき勉強を「順番通りに」すべて洗い出したもの。「いつまでに」「どの順番で」勉強をすればいいかがひと目で分かるので、あとはこの通りに勉強するだけ!という状態になります。
- 「どの順番で」参考書に取り組めばいいかひと目でわかる!
- 「なぜこの参考書がおすすめなのか?」「かわりに使える参考書」もすべて紹介
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