

有機化学は「教科書を暗記する」ことがゴール!
有機化学とは、炭素を含む化合物について学ぶ分野のこと。
学ぶ分野が限られているため、

……と思うかもしれません。
しかし、それは間違いです。有機化学でも、炭素の配置が違うだけで多くの化合物が作れてしまうので、無機化学と同じように暗記すべき内容が膨大にあります。
暗記だけでなく「構造決定」など複雑な思考力を求められる問題もあるため、分野が限られているとはいえ楽なわけではありません。
暗記に関しても、有機化学は細かいところまで調べればいくらでも知識が存在するため、油断は禁物です。
とはいえ、あまり恐れすぎる必要もありません。
この記事を読んでいる人は、主に「大学受験レベルの有機化学を身につけたい!」という人がメインでしょう。
その段階であれば、ひとまず暗記のゴールは「教科書に書かれていることをすべてマスターする」でOKです!
「暗記」「構造決定」の具体的な勉強方法
有機化学の勉強は、以下の4ステップに分けられます。
この記事では「暗記」「構造決定の問題演習」に焦点を当て、勉強のポイントを解説します。

有機化学・暗記の勉強法!
有機化学の暗記は、教科書通りに暗記するよりも、以下2つのコツを押さえて暗記することがオススメです!
- 名前と構造式、およびその性質を化合物ごとに覚える
- 反応の流れで覚える

名前と構造式、およびその性質を化合物ごとに覚える
有機化学は覚えるべきことが膨大です。そこで、まずは化合物ごとに暗記しましょう。
たとえば、
「安息香酸は、構造式はベンゼン環にCOOHがくっついたもの。水には溶けにくいが熱水には溶け、水溶液が弱酸性を示す。塩酸などの強酸を加えれば遊離して、白色結晶が出てくる」
…といった感じです。


サキサキのように、安息香酸が何なのかがわからないと、そもそも問題は解けません。
よって、この「当たり前」の暗記はまずやるべきです。
反応の流れで覚える
「当たり前」の暗記に加えて、有機化学ではもう1つ勉強すべきことがあります。
下の図を見たことはありませんか?
(数研出版ホームページより引用)

上記の図は、「ある物質に別の物質を加えたり何らかの化学的操作をしたりすることによって、どのような物質が新たに生成されるか?」を示したものです。
このように、たくさんの矢印同士で結び付いていますよね。
つまり、有機化学で取り扱われる物質はお互いの関わり合いが強いのです。
この「物質同士の関わり合いの強さ」を利用して、反応の流れで覚えていく、というのが必ずやるべきことです。
例えば先ほどの「安息香酸」なら、トルエン(ベンゼン環に$\mathrm{CH}_{3}$がついたもの)という物質を酸化するとベンズアルデヒド(ベンゼン環に$\mathrm{CHO}$がついたもの)が得られ、それをさらに酸化して安息香酸が得られます。
わかりやすく言えば、安息香酸は他の物質の進化形なんですね。他の物質も同様です。
しかも酸化という反応は「$\mathrm{CH}_{3}$が$\mathrm{CHO}$基になって、それが$\mathrm{COOH}$基になる」という法則性もあります。
このような流れで暗記をすれば、一気に記憶に残りやすくなります。


https://daigakujukensenryaku.com/ch-sankousho-recommend/
有機化学・構造決定の勉強法!
さて、有機化学で多くの人が苦手とするのが「構造決定」です。
もう知っている人もいるかもしれませんが、その内容を簡単に説明すると、
「構造決定=与えられた条件から、正体不明の複数の物質が何かを推察して明らかにしていく問題」
です。
つまり構造決定は、「複数ある可能性の中から条件をもとに可能性を一つずつ潰して答えを求める」というパズルのような問題と言えます。
そのため、解けるようになると実は結構楽しいです。
しかし、解けるまでは辛いため、できない人は本当にまったく手が動きません。それゆえ、化学で一番差がつきやすい部分でもあります。
構造決定を得意にするには、3つの要素が必要です。
- 異性体をもれなく、だぶりなく書き出す
- 構造決定の問題で使える形で知識を覚える
- とにかくたくさんの問題を解いて慣れる
①異性体をもれなくだぶりなく書き出す


例えば、$\mathrm{C}_{3}\mathrm{H}_{8}\mathrm{O}$という物質なら、以下のような複数構造が考えられます。
※簡略化のため骨格だけを書いています
これらは全て性質が違います。
この異性体を書き出す作業は、何度も訓練していないと混乱します。
その1つの例として、
は違うものでしょうか?

実は同じです。
炭素骨格は、折り曲げたり逆にしたりしたものは、同一のものとして扱います。
このようなルールをふまえつつ、もれなくダブりなく書き出していかないといけません。
多くの問題集に「○○の異性体をかけ」「△△の異性体は何個あるか」などの異性体にまつわる問題が載っているので、それらを解いて練習しましょう。
②構造決定の問題で使える形で知識を覚える
多くの高校生が苦手としている部分です。
構造決定が難しい理由のひとつに、「教科書的な暗記で得られる知識と有機化学で使える知識との間に差がある」ということが挙げられます。
再び安息香酸を例にあげましょう。
安息香酸は、トルエンが変化して得られるものでしたね。
これだけを普通に暗記すると、
トルエン → 安息香酸
という結びつきが頭に残ると思います。
これ自体は問題ありませんが、構造決定を解く上では不十分です。
構造決定で一番大事なのは「トルエンが変化して安息香酸になる」という部分ではないのです。

一番大事なのは、「トルエンは過マンガン酸カリウムなどを触媒にして酸化することで安息香酸になる」という部分です。
なぜなら、例えば安息香酸が絡む構造決定問題には、次のような記述があるからです。
「ある化合物Aを過マンガン酸カリウムで酸化すると、新たに化合物Bが得られた」
このように、肝心の化合物の名前は隠してあるので、その中から手がかりをつかまないといけないのです。
Aがトルエンで、Bは安息香酸だということがわかるためには、構造決定を解く上で大事なのがどの部分かは明らかですね。
しかし、ほとんどの教科書や参考書は、構造決定の問題を解くのに役立つ形での知識の提供はいません。
そこでオススメしたい数少ない有機化学対策の本が「ここで差がつく 有機化合物の構造決定問題の要点・演習」です!
単なる知識ではなく、「構造決定の問題で使える形で」知識が整理されているのが魅力です。
詳しい本の内容は下の記事で解説しているので、ぜひこちらも参考にしてくださいね。
③とにかくたくさんの問題を解いて慣れる
①と②ができても、実際に問題を解いて自ら「構造」を「決定」する経験をしないと、意味がありません。
①と②ができたら、次は問題集に載っている構造決定の問題で演習しましょう。
最初のうちは、「この条件から……えーと、AとBは○○か△△で…。」というように、ゆっくり推察して、ゆっくり答えを出せばOKです。
ただし、模試や入試本番では制限時間があるので、数をこなす中でだんだんスピードと処理力を上げましょう。
①と②が身についた状態で10~15問ほど解けば、だいぶ楽に構造決定できますよ!
おすすめの問題集については以下の記事を参考にしてください。

有機化学の勉強で注意すべきこと

- 暗記量が膨大なので後回しにしない
- キレイなノートを作りすぎない
暗記量が膨大なので後回しにしない
何度も言っている通り、有機化学は暗記量がとんでもなく多いです。よって、後回しにしてはいけません
学校で習ったときに、定期テスト対策をしますね。そこで「教科書の内容は二度と忘れない!」というレベルで繰り返し暗記しましょう。
もちろん一度では忘れてしまいますし、他に勉強すべきこともあります。
なので、有機化学は受験する年の夏休みまでには完璧にしておきましょう。
9月以降に暗記をすると、問題演習に時間を割けません。
特に有機化学は、志望校によっては構造決定まで対策する必要があるので、なおさらです。


キレイなノートを作りすぎない
有機化学は、覚えることが多い分、まとめノートを作る人もいるのではないでしょうか。
しかし「ノートにキレイにまとめる」ということに集中しすぎてしまうと、時間がもったいないです。
キレイにまとまっている参考書はたくさんあるので、キレイさや詳しさを求めるならそうした参考書を使いましょう。

まとめノートは、自分が読んでわかればそれでOKです。
客観的に見れば汚い字でも、あるいは黒一色で書いても、「自分が読めて自分が暗記できれば」それで良いのです。
無駄にカラフルでキレイなノートづくりは時間の無駄です。
色は多くても2色、字は自分が読めれば十分です。
また、先ほどの反応系統図を自分で一から書こうとする人もいますが、あまり意味がありません。
なぜなら、教科書や参考書にキレイな図が載っているからです。
図を苦労して描いたことによる達成感は残りますが、知識はあまり身につきません。
まとめ

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- 有機化学は量が膨大!ゴールはひとまず教科書の内容を理解すること。
- 有機化学暗記のコツ
名前と構造式、およびその性質を化合物ごとに覚える&反応の流れで覚える - 構造決定は問題を解きまくるだけでは意味がない。
- 受験する年の夏休みまでに暗記を終わらせよ!
- きれいすぎるカラフルなノートづくりは時間がもったいない!
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