








戦略01 理論化学のいろは

理論化学とは何か?
理論化学は、ものすごく簡単に言ってしまえば、「知識を使って、決まった解法に沿って解く計算問題」です。
よって、理論化学を解くには、
①知識を覚え、
かつ
②解法を把握し計算力を鍛える
必要があるのです。
それぞれ説明しますが、1つ問題の例をあげましょう。有名な中和滴定の問題です。
- 水酸化カルシウム、と言葉で言われても、これが化学式でどう表せるのか知らないといけません。答えは、Ca(OH)2 です。Caは2族元素 なので、そのイオンは2価の陽イオンになり、OHは1価の陰イオンなので、Ca2+と組み合わせるにはOH-が2つ必要なわけです。また、Ca(OH)2は塩基性の化合物、塩酸(HCl)は酸性です。
そしてmolは物質量のこと。この問題では直接使いませんが、1mol=6.02×1023個であり、mol/Lは溶液1L中に含まれる物質量を表す溶液の濃度の単位で、「モル濃度」と言います。


ポイントは、今の説明のうち、下線が引かれた部分は覚えるべき単なる知識にすぎないということです。これがわかっていないと問題が解けないわけです。
こういった物質量や元素、化学結合に関する知識は、教科書で言うと「物質の構成」「物質の変化」などと呼ばれる分野に属します。
ほかにも、詳しい説明は省きますが、たとえば電気分解や酸化還元の問題では、陽極と陰極で起こる反応を覚えたり、半反応式と呼ばれる、反応物と生成物の関係も覚えたりしていないとそれを使った計算問題が解けません。
このように、理論化学のマスターには、まずは知識をしっかり覚えておかないといけません。
解法を把握し計算力を鍛える
知識がないと問題が解けない、と言いましたが、知識があってもそれだけでは問題は解けません。そもそも、中和滴定の解法をもとに、計算しないといけないわけですから。
たとえば中和滴定なら、立てるべき式は、
酸の物質量 = 塩基の物質量
です。
酸の物質量と塩基の物質量が等しいとき、中和されて酸性でも塩基性でもない、ちょうど中間の中性になるからです。ただし、今回は塩基が水酸化カルシウムで2価の塩基なので、塩酸の体積をV[mL] として立式すると、
0.10 × V/1000 = 2× 0.37/74
というように右辺に2がかかるところに注意が必要です(ちなみに答えは100mLです)。

ここで使った、「“酸の物質量 = 塩基の物質量” という式を立てる」「2価のときは価数をかけるのを忘れない」というのは、知識というより、問題演習の中で学んでいく解法のパターンです。
そして、最終的に答えを求めるときには、計算力が求められます。
イメージはできましたか?このように、知識を前提にさらに解法を把握し、確固たる計算力をもとにして、解くことができるのです。



戦略02 理論化学のおすすめ勉強法はこれだ!
理論化学の勉強は、大きく2つにわかれます。
1.まずは「物質の構成」「物質の変化」の分野を習得
2.その他の分野を習得
まずは「物質の構成」「物質の変化」の分野を習得
さきほどの中和滴定の問題もそうでしたが、たとえば「molとは?」「分子量って何?」「Caってなんだっけ……」という具合では、理論化学はほとんどできません。
よって、まずは「物質の構成」や「物質の構成」で元素の名前や、結合の種類(共有結合、イオン結合などなど……)、物質量や原子量といった計算に必要な概念を学び、知識をつける必要があります。
その他の分野を習得
「物質の構成」「物質の変化」の2分野が終わったら、そのほかの分野に入っていきます。
酸・塩基、熱化学方程式、酸化還元、電池、平衡、気体……いろいろありますが、要するにさきほどの2分野と、無機化学と有機化学以外の分野、と考えてくれれば大丈夫です。


それぞれの分野の、教科書を読み内容を理解し、問題集で演習をしていきます。問題は、とにかく繰り返し解きなおしましょう。1つの問題につき3回解くことは絶対に必要です。
サイクルとしては、たとえば酸と塩基の教科書を読んだら、問題集の酸と塩基の部分を解きます。そのあとは教科書と問題集を分野ごとに繰り返します。
より詳しい教科書や問題演習の勉強法は、以下の記事で解説しています。こちらも必ず読んでください。
戦略03 理論化学の勉強で注意すべきこと

速く・正確に計算できるように訓練を!
繰り返しになりますが、理論化学は基本的に計算問題です。いくら知識があって解法がわかっても、計算ミスで間違った答えを出せば、丸はきません。
特に化学は小数がからむ計算が多いです。小数のかけ算わり算は当たり前、小数第3位まで出てくる計算も、ざらにあります。さらに、センター化学などを中心に、化学の入試問題はのんびり解いていると時間がなくなってしまうこともしばしばあります。


そうした入試に対応することを考えると、日ごろから理論化学の問題を解くときには、だらだら計算したり、計算機を使ったりするのはNG。速く・正確に計算できるように、ストップウォッチで時間を計るなどして、速さと正確さの両方を伸ばすように心がけましょう。

有効数字に慣れよ!
さきさきもきらいだと言っていた有効数字。化学の問題では「有効数字2桁で答えよ。」などの指示がよくでてきます。
この指示に違反したり、小数点以下が0.01でもずれていたりすると減点、最悪の場合×をくらってしまいます。

よって、日ごろから有効数字には細心の注意を払うべきです。計算のコツとしては、計算途中では指定されている有効数字より1桁多い桁数で計算するといいです。
有効数字2桁を指定されたなら、たとえば計算途中で2.56という数字が出てきたときには勝手に四捨五入せず、2.56のまま、すなわち有効数字3桁のままで計算しておくのです。そして最後に、四捨五入して有効数字2桁にすれば、まず間違えることはありません。
これは、計算力もかかわりますが、どちらかといえば習慣の問題です。日ごろの計算を通して有効数字の扱いに慣れるようにしましょう。


まとめ
・理論化学は「知識を使って、決まった解法に沿って解く計算問題」
・まずは「物質の構成」「物質の変化」の分野を習得し、それからほかの分野(酸と塩基、気体など)に移ろう。
・教科書と問題演習の繰り返しで習得を。問題演習は最低3回解き直す!
・日ごろから計算の速さと正確さを身につけ、有効数字の扱いに慣れるべし!