古文の助詞。この文法事項は助動詞ほど目立たないものの、意外に入試でよく問われる内容で、対策を怠ると思わぬ失点をくらってしまいます。けれど「助詞ってそもそもどんな時に使うの?」「助詞の何を覚えればいいの?」という悩みは多いはず。この記事では、そんな悩みに答えるべく、0から助詞を理解する解説と勉強法を紹介しています。
活用系の具体的な勉強法などは、以下の動画でも詳しく解説しています!




古文の助詞ってなんですか?
この記事を読んでいるみなさんは、授業や問題集で助詞の項目にあたって、助詞についての理解を深めようと思っている人が多いと思います。
そこで、まずは「助詞って何なの?」というところから解説していきます。
案外、「助詞」という言葉の定義を説明できない人は多いかと思います。
助詞をマスターするためにも、まずは助詞が何なのかを知りましょう!
助詞とは「活用しない付属語」である。
助詞とは「活用しない付属語」のことを言います。
ポイントは
- 活用しない
- 付属語である
の2つ。
「①活用しない」とは?
動詞や助動詞って、使い方によって変化しますよね?「たまふ」という動詞も、「連用形」で「たまひ」になったり、未然形で「たまは」になったり。
一方、「翁」や「姫」といった「名詞」は文脈によって形が変化するということはありませんよね。こういった変化がないことを「活用しない」と言います。
助詞も名詞と同じく、「や」という助詞ならどんな時でも「や」、「ぞ」という助詞ならどんな時でも「ぞ」というように「活用しない品詞」なのです。

「②付属語」について。
付属語とは「その単語単体では文節をつくれない」単語。
※文節は、「言葉の意味のまとまり」と理解しておいて下さい。
(ここら辺の細かい文節の区切り方については、「」を見て下さい)
例えば、
「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり」(竹取物語・かぐや姫の生い立ち)
という文なら
「今は」「昔、」「竹取の」「翁と」「いふ」「者」「ありけり」
という風に文節は分けられます。
ここで「竹取の」「翁と」に注目してみましょう。
ここで使われている「の」と「と」は助詞なのですが、「竹取の」の「の」、「翁と」の「と」は、その助詞単体では意味が伝わりません。
「の!」「と!」とか言っても全く意味が分からないですね。
「竹取」、「翁」という単語がくっついて初めて、「竹取りである~」とか「翁と~」、といった意味ができるわけです。つまりほかの単語に「付属する」ことで初めて意味を持つのが助詞なのです。




どの古典助詞を覚えればいいの?
先ほど見たように、助詞は50種類以上あります。しかも複数意味を持つものも存在しています。

と思ったアナタ。
大丈夫です。助詞には覚えるべきものがあり、それらを押さえれば入試で迷うことはありません。
逆に、「~へ行くなど」の「へ」や「~をして」の「て」など、現代語と同じ意味の助詞は無理に意識して覚える必要はありません。
覚えるべきは以下の3種類の助詞です。
- 現代語には無い意味をもつ助詞
- 現代語には存在しない助詞
- 同音で複数の意味を持つ助詞
この3つの助詞を押さえてもらえれば、「助詞が原因で失点する」、ということはほぼなくなります。
それでは、ひとつずつどんな助詞なのかを見てきましょう。
※助詞の一覧に関してはページの最後に付録としてまとめてあります。記事を読んで「この助詞分からない..」ということがあれば、付録の方をチェックしましょう。
覚えるべき助詞①:現代語には無い意味を持つ助詞について。
例えば、「の」という格助詞があります。
この「の」は、現代語には
- 「僕のノート」というような、所有を表す意味や
- 「人の歩いている様子が見える」というような、主語を表す意味
があります。
しかし、古文の世界では、
「ある荒夷「の」恐ろしげなるが」
(訳:ある荒武者「で」恐ろしそうなのが)
というような「同格」の意味や、
「世になくきよらなる玉「の」男皇子」
(訳:世にめったにない気品のある玉の「ような」男の王子)
というような「比喩」の意味があるのです。
このように古文の世界の助詞には、形こそ現代語と同じですが、異なる意味を持つ助詞があるのです。

この「現代語には無い意味を持つ助詞」は、助詞の「役割」を問う問題でよく出題されるので、しっかり覚えましょう。
問題例)「下線部ア~オの「の」で用法の異なるものはどれか。記号で答えなさい。」
覚えるべき助詞②:現代語には存在しない助詞
特に覚えるべき3つの助詞の中でも、「現代語には存在しない助詞」は覚えづらく、そのうえ試験に出る一番重要な助詞です。
例えば、「ばや」(願望、「~したい」)、「(な)・・・そ」(禁止、「~するな」)といった助詞が該当します。
現代語には存在しない助詞なので、種類・意味をしっかり覚えないと問題を解くことができません。
しかし覚えてしまえば、よく問われるため得点源にもなりやすい助詞でもあるのでちゃんと覚えましょう。
覚えるべき助詞③:同音で違う意味を持つ助詞
この助詞の例は、「や」や「か」が分かりやすいでしょう。
例えば、
①「御子はおはすや。」(徒然草・一四二)
②「はかなしや枕さだめぬ転た寝にほのかにまよふ夢の通ひ路」(千載集、式子内親王)
この二つの文の訳は、それぞれ
①「御子はおはすや。」(徒然草・一四二)
⇒(訳:お子さんはいらっしゃいますか)②「はかなしや枕さだめぬ転た寝にほのかにまよふ夢の通ひ路」(千載集、式子内親王)
⇒(訳:はかないなあ。どちらに枕を置いたかもわからないうたたねにぼんやりと思い悩む夢の中の道)
となり、「や」の意味はそれぞれ
①…「疑問」
②…「詠嘆(~だなあ)」
です。
こういった助詞に関しては、意味を覚えたうえで「見分ける」のがポイント。
同音で違う意味を持つ助詞の見分け方
- ①活用で見分ける。
- まずはこちらで。助詞には、「係り結びの法則」のように後ろの語を変化させるものがあり、文末の語の活用などを注目して見分けましょう。
- ②文脈で見分ける。
- 2つ目は、文の流れから使われている助詞が何かを見抜く方法です。例えば接続助詞の「に」には『単純接続』『逆接確定条件』『順接確定条件』の3つがありますが、この意味を見分けるには文脈から判断するしかありません。
更級日記の「十月つごもりなる(十月(陰暦)の末である)に、紅葉(もみぢ)散らで盛りなり(紅葉が散らないで盛りである)」という一文でいうと、文の前半に対して後半の内容が対立しているので、ここでの「に」は逆説確定条件であると分かります。


受験に必須の古典助詞とその覚え方/勉強法
さて、ここまで読んできて、助詞が何なのか、助詞にはどういった種類があるのか、ということが分かってきたと思います。
ここからは、具体的にどうその助詞を理解して、得点に繋げるかということを解説していきます。
助詞の勉強法は
- Step1.
- 知識をつける。
- Step2.
- 演習をする。
- Step3.
- 知識を補強する。
この3ステップに分かれます。
助詞の覚え方Step1.|知識をつける。
先程も述べたように助詞は50個以上あります。
それらの助詞や、その意味をまず頭に入れないといけません。
そして、知識をつけるための手段は主に二つあります。
- 学校の授業を使う。
- インプット(知識を入れる)用の参考書を使う。
なのですが、ぶっちゃけ学校の授業はあまりおすすめしません。

というのも、古文という教科は、英語の「仮定法」「分詞構文」といったように明確に文法事項ごとに授業を行うことがないのです。
多くの学校では「教科書の例文を訳す⇒文法事項の確認」や「問題演習⇒解説」といった形で授業が行われ、集中的に「助詞」や「助動詞」といった内容を扱うことは少ないのではないでしょうか。
これでは、知識がツギハギになってしまい、暗記・理解があやふやになってしまうのです。
なので、ここでは後者の「インプット(知識を入れる)用の参考書を使う」を推奨します。
そこでおススメする参考書はこの2つ。
おすすめ参考書
「古典文法基礎ドリル」
解説+問題で、知識を定着させやすい参考書です。古文が苦手な人にも分かりやすい解説が特徴!
この参考書について詳しく知りたい人はこちら!
具体的なやり方
(1)解説の部分を読む。
(2)問題を解く。
(3)間違えた問題を確認。
(4)解説で扱っている例文、及び間違えた問題の文を音読。
(特に例文は暗記するぐらいまで繰り返し読むこと)
やることはいたってシンプルです。
特にしっかりやってほしいのが
「(4) 解説で扱っている例文、及び間違えた問題の文を音読。」
解説を読んで、すぐに問題を解けば正答率は当然高くなります。
その正答率を見て、「よーしもう大丈夫!」となってしまうとキケン。
古典文法は、繰り返し見て覚えるのが鉄則です。
その章で扱った内容をしっかり定着させましょう。
3周ほど繰り返せばほぼ身につきます。

助詞の覚え方Step2.|演習をする。
次は頭に入れた知識を「活用する」ために問題を解きましょう。
自分がしっかり文法事項を理解できているのかを確かめるつもりでやりましょう。
オススメ教材はこちら。
おすすめ参考書
「古文教室 古典文法編」
解説が詳しく載っている問題集です。アウトプット用の教材としてはちょうどいいでしょう。
この参考書について詳しく知りたい人はこちらをチェック!
具体的なやり方
(1)問題を解く。
(2)間違えた問題の解説を読む。
(3)間違えた問題の音読。
Step2の目的は、知識がちゃんと問題を解けるレベルまで身についているかを確認するためのもの。
間違えた問題を重点的に復習しましょう。基本的にはやり方は、Step1の「(2)問題を解く。」以降と同じ流れです。
といっても、問題集の解説だけでは、実は不十分。
問題集の解説は、主に「その問題」についての解説を行っており、「文法事項」全般を復習することには向いていないのです。
なので、問題集だけの解説で満足してしまうと、知識のヌケモレが発生したり、その問題を解けるようになるだけ、という状態になってしまいます。
では、文法事項全般を復習するためにはどうするか?というと、それがStep3の「知識を補強する。」なのです。
助詞の覚え方Step3|知識を補強する。
問題集の解説を読み終わったら、その間違えた問題の箇所の知識を補強しましょう。
そこで、活用してほしいのがこの教材。
「荻野文子の 新修 古典文法」
この教材は、英語でいう「Evergreen」(※英文法書「Forest」の後継本)のように辞書的な役割で使いましょう。
例えば、問題集で、終助詞の部分で間違いがあったら、この本の終助詞のページを見ましょう。
かなり詳しく解説が載っているので、改めて文法知識を整理できます。
学校で似たような、文法がたくさんまとまっている参考書が配布されているはずですから、それを活用してももちろんOKです。




まとめ
最後に助詞のポイントをもう一度確認しましょう。
- 助詞とは活用しない「付属語」である。
- 助詞には、「関係を示す助詞」と「意味を添える助詞」がある。
- 押さえるべき助詞は、①現代語には無い意味をもつ助詞、②現代語には存在しない助詞、③同音で違う意味を持つ助詞の3つ。

付録.覚えるべき古文の助詞一覧
この章では、助詞の種類についての解説になります。
記事を読んでいて、「この助詞ってどんな種類の助詞だっけ…?」となったら、ぜひ読んでみましょう。
助詞はこのように
- 関係を示す助詞
- 格助詞 例)「の」、「が」など
- 接続助詞 例)「ば」、「ども」、「して」など
- 意味を添える助詞
- 係助詞 例)「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」「は」「も」
- 副助詞 例)「だに」、「まで」など
- 終助詞 例)「(な)・・・そ」、「ばや」など
- 間投助詞 例)「や」、「よ」など
大きく分けると2種類、細かく分けると6種類に分かれます。
ひとつずつ見ていきましょう。

関係を示す助詞
関係を示す助詞というのは、「ある単語や文章を繋ぐ役割を果たす」助詞のこと。
そして、この関係を示す助詞はさらに、
- ①格助詞
- ②接続助詞
に分かれます。
①格助詞とは
格助詞とは、「上の語に資格を与え、下の語と繋ぐ」助詞のこと。
「資格」とは、「主語」や「述語」などの文章中の役割のことです。
例えば、「が」という助詞があります。
この助詞は、上の語を「主格」にすることができる助詞です。
例えば「水が流る」なら、「水」が文の「主語」になりますよね。
他にも、「(私が)水を流す」なら、「水」は文の「目的語」になります。

そしてもう一つの関係を示す助詞が、②接続助詞。
②接続助詞とは
接続助詞は、文節と文節を繋ぐ役割を持っています。
接続助詞は主に、
- 順接の接続助詞・・・原因・理由などを示す(~ならば、~なので、~ところ、~するといつも)
- 逆接の接続助詞・・・前の事柄と反することを結びつける(~としても、~けれども、~のに)
- 単純接続の接続助詞・・・ことの起こった順番に文節動詞を繋ぐ(~して、~ないで、~ながら)
- ※()内の表現は多々あります。
の3つに分かれます。

例を挙げると、
・順接の接続助詞「ば」
「四日、風吹けば、え出でたたず」(土佐日記 一月四日)
(訳:四日、風が吹くので、出発することができない)
・逆接の接続助詞「ども」
「親のあはすれども、聞かでなむありける」(伊勢物語 二三)
(訳:親が結婚させようとするが、承諾しないのであった。)
・単純接続の接続詞「して」
「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(方丈記・一)
(訳;(流れて)ゆく川の流れは絶えることがなくて、しかももとの水ではない)
意味を添える助詞
もう一つの大きなグループは、意味を添える助詞。
「関係を示す助詞」は、あくまで「単語と単語、文と文を繋ぐ」という役割で文章自体の内容には何も変化をさせるものではありませんでした。
一方、「意味を添える助詞」は、「~なのか?(疑問)」「~だけ(限定)」といったように文章に新しい意味を付け加えます。
そしてこの「意味を添える助詞」は4種類あります。
- ①係助詞
- ②副助詞
- ③終助詞
- ④間投助詞
一つずつどんな種類の助詞なのか見ていきましょう。
①係助詞とは
係助詞とは疑問・反語などの意味を文に加え、文末の活用を変化を起こす助詞です。
特に「ぞ」「なむ」(強意)、「や」「か」(疑問・反語)は文末を連体形に、「こそ」(強意)は、文末を已然形にします。これらの変化を「係り結びの法則」といいます。
(参考)
「その人、かたちよりは心なむまさりたりける」
「生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける」(参考)
「折節のうつりかはるこそ、ものごとにあはれなれ」

②副助詞とは
副助詞は、副助詞の上の語に新しい意味を与え、下の用言を修飾する助詞です。
例)
・類推(~さえ)の副助詞「だに」
「光やあると見るに、蛍ばかりの光だになし」(竹取物語・仏の御石の鉢)
(訳:光があるのかと見ると、蛍ぐらいの光さえない)
・限度・程度の副助詞「まで」
「梅の木などには、かしがましきまでぞ鳴く」(枕草子 鳥は)
(訳:梅の木になどには、(うぐいすが)うるさいくらいなく)
このほかにも、「さへ(~までも)」、「すら(~さえ)」など多くの副助詞があります。
副助詞は、「傍線部を現代語訳せよ」といった類の問題でよく見られるので参考書でよく確認しましょう。

③終助詞とは
終助詞は、文末につくことで意味を加える助詞です。
例)
・(な)・・「そ」は「禁止」を示す終助詞。
「声高に、なのたまいそ」(竹取物語・かぐや姫の昇天)
(訳:大きな声で、おっしゃるな。)
④間投助詞とは
間投助詞は、終助詞と同じく文末につき、詠嘆や強意などを表します。
例)
・詠嘆の間投助詞「や」
「をかしの御髪や。」(源氏物語・若紫)
(訳:美しいお髪だなあ)