数学の終盤で待ちかまえている強大な敵、そうそれが数列。
「何をやっているのかわからない!」
「入試本番までに対策ができなかった…。」
そんな声が多いのもこの分野です。一見複雑で難しそうな数列ですが、実はコツさえつかめば、スラッと理解できてしまうのです!
※この記事では、数学Bにおける数列について解説します。無限級数など数学3の範囲については解説していないので、ご了承ください。
数列とは?どこでつまずく?
数列が苦手な人がどこでつまずいているのか、どんなことに注意しなければいけないかとまずは見ていきましょう。
自分がどこでつまずいているのか理解することが、数列を攻略するための最初のステップです!
数列ってなに?数字の規則を$n$を使って表すもの
まずは「数列」という言葉の定義からです。
- 数列とは?
- 定義:数字が並んでいるもの
「$1,\ -2,\ 301,\ 0.3,\ 92,\ \cdots$」のような何の規則も見つけられない数字の並びも数列ですし、「$1,\ 2,\ 4,\ 8,\ \cdots$」のような何らかの規則が見つけられる数字の並びも数列です。
もちろん高校数学で勉強するのは、並び方に何らかの規則がある数列です。
隣り合った数字の差が一定の「等差数列」や、隣り合った数字の比が一定の「等比数列」など、規則ごとに数列に名前がついていて、これらの規則を$n$を使って表現する問題が出ます。
公式を暗記するだけでは解けない
数列の問題を解けるようになるためには、公式を暗記しているだけでは不十分。
- 問題文の意味を正確に読み取ること
- 数列の規則を見つけられること
- 公式の使い方を間違えないこと
などが全てできるようになる必要があります。
そのためには数学の他の単元と同様に、「公式の理解」から始めて「問題演習で慣れる」ところまで練習をしなければなりません。
数列ができない原因のほとんどは「問題演習不足」です。
公式の暗記だけで止まるのではなく、問題演習をすることで苦手意識はすぐに解消できます。
特につまずきやすいのは?シグマ、群数列、格子点
数列の基本的な公式などを理解するのは難しくありませんが、特につまずきやすいのが以下の3つ。
- シグマ
- 群数列
- 格子点
このうちシグマは慣れればそれほど難しいものではありませんが、群数列や格子点の問題はかなり発展的な内容です。
群数列と格子点以外の部分を全て理解していないと理解することすら難しいので、基礎をしっかり固めてからチャレンジしなければなりません。
これらの内容は、「理解するのが大変」かつ「慣れるのも大変」なので、習得するのに時間がかかるのは当たり前と最初から覚悟して勉強するようにしたいですね!
具体的な解説で数列の基本を理解しよう!
つづいて数列で出てくる基本的な内容を、ここで簡単に見ていきましょう。
より詳しい解説は『青チャート』などの問題集でしっかり勉強してくださいね!
『青チャート』の使い方はこちらから。
等差数列とは?
「等差数列」とは、となり合う数字どうしの差が常に同じになる数字の並びのことです。
たとえば、
$a_{1}=1$
$a_{2}=4$
$a_{3}=7$
$a_{4}=10$
のように並んでいる場合、$a$の添え字が1つ進むたびに$3$ずつ増えていることが分かります。
この$3$のことを「公差」と言い、文字としては$d$を使って表現することが多いです。
これらの関係を$n$を使って表現すると、
- 等差数列の公式1
- $a_{n+1}=a_n+d$
となります。
この関係を満たす等差数列の一般項を求めるためには、公差$d$の情報に合わせて、初項$a$の情報が必要です。
$a_{1}=a$
$a_{2}=a+d$
$a_{3}=a+2d$
$a_{4}=a+3d$
と続けていくと、等差数列の一般項は以下のようになります。
- 等差数列の公式2
- $a_{n}=a+(n-1)d$
等比数列とは?
「等比数列」とは、となり合う数字どうしを割ると、その商(割り算の答え)が常に一定となるような数字の並び方のことです。
たとえば、
$a_{1}=2$
$a_{2}=6$
$a_{3}=18$
$a_{4}=54$
のように並んでいる場合、$a$の添え字が1つ進むたびに$3$倍ずつ増えていることが分かります。
この$3$のことを「公比」と言い、文字としては$r$を使って表現することが多いです。
これらの関係を$n$を使って表現すると、
- 等比数列の公式1
- $a_{n+1}=a_n\times r$
となります。
初項$a$と、公比$r$を知っていれば、以下のように順に等比数列を求めていくことができます。
$a_{1}=a$
$a_{2}=a\times r^{1}$
$a_{3}=a\times r^{2}$
$a_{4}=a\times r^{3}$
これを続けていくことで、次のように一般項を求めることができます。
- 等比数列の公式2
- $a_{n}=a\cdot r^{n-1}$
となります。
階差数列とは?
「階差数列」は隣り合う数字$a_{n+1}$と$a_{n}$を引き算したものを順に求めると、新しい数列になっている数列です。
具体例を見てみましょう。
$a_{1}=1$
$a_{2}=3$
$a_{3}=7$
$a_{4}=15$
$a_{5}=31$
この数列はパッと見た感じだと規則を見つけられないかもしれないですが、次のような操作をすると見えてくるものがあるのではないでしょうか?
$a_{2}-a_{1}=3-1=2$
$a_{3}-a_{2}=7-3=4$
$a_{4}-a_{3}=15-7=8$
$a_{5}-a_{4}=31-15=16$
この答え(最右辺)が新しい等比数列になっていますよね。
$b_{1}=2$
$b_{2}=4$
$b_{3}=8$
$b_{4}=16$
このように隣り合う数字同士を引き算したもの($a_{n+1}-a_{n}$)が新しい数列($b_{n}$)になっているとき、もとの数列($a_{n}$)を階差数列と言います。
これらの関係を$n$を使って表現すると、
- 階差数列の公式1
- $a_{n+1}-a_{n}=b_{n}$
となります。
この$b_{n}$は上述の例以外にも、等差数列などになることもあります。
階差数列の一般項を求めるためには、上の公式を変形した「$a_{n+1}=a_{n}+b_{n}$」を使います。
$a_{1}=a$
$a_{2}=a_{1}+b_{1}=a+b_{1}$
$a_{3}=a_{2}+b_{2}=a+b_{1}+b_{2}$
$a_{4}=a_{3}+b_{3}=a+b_{1}+b_{2}+b_{3}$
これをくり返していくと、階差数列の一般項は次のように表現できます。
- 階差数列の公式2
- $a_{n}=a+b_{1}+\cdots+b_{n-1}$
$a_{n}$の一般項を具体的に知るためには、$b_{n}$を$n$で表現する($b_{n}$を解いて把握する)ことができた上で、数列の和を計算する必要があります。
「数列の和」も頻出の内容なので見ていきましょう!
数列の和とは?$\sum$(シグマ)とは?
等差数列の和
まずは$\sum$の公式を使わなくても理解できる「等差数列の和」と「等比数列の和」から見ていきましょう。
「数列の和」は「$S_{n}$」を使い、「$a_{1}+a_{2}+\cdots+a_{n}$」のように初項から第$n$項まで足し算したものを指すのが一般的です。
$S_{n}=a_{1}+a_{2}+\cdots+a_{n}$
等差数列では
$S_{n}$
$=a_{1}+a_{2}+a_{3}+\cdots$
$=a+(a+d)+(a+2d)+\cdots$
と続いていき、最終的には次のような公式になります。
- 等差数列の和の公式1
- $S_{n}=\displaystyle\frac{1}{2}n\{2a+(n-1)d\}$
ここでは簡単に触れておきます。まずは$S_{n}$を逆順に2つ並べます。
$S_{n}=a_{1}+\cdots+a_{n}$
$S_{n}=a_{n}+\cdots+a_{1}$
これらの両辺をそれぞれ足すと、
$2S_{n}=(a_{1}+a_{n})+\cdots$
となりますが、じつはこの各項が全て$a_{1}+a_{n}$(初項$+$第$n$項)になり、これらが$n$(項数分)だけあるので、あとは全体を$2$で割るだけで公式が導出できます。
この公式の導出の仕方は教科書や映像授業でも確認して、しっかり理解しておきましょう。
導出の仕方を理解していれば、この公式が次のような日本語に置き換えられることを理解できるはずです。
- 等差数列の和の公式2
- $S_{n}=\frac{1}{2}\times$項数$\times\{$初項+第$n$項$\}$
導出の仕方を覚えておけば、$n$を使うのか$(n-1)$を使うのか迷ったりすることもなくなりますし、「項数$n$のかけ忘れ」などのミスもなくなります。
等比数列の和
次に等比数列の和を見ていきましょう。
等比数列の和も、等差数列の和と同じく、初項から第$n$項までの和を公式として覚えておきたい所です。
$S_{n}=a_{1}+a_{2}+\cdots+a_{n}$
を初項の値$a$と公比$r$で表すと
$S_{n}=a+ar+ar^{2}+\cdots$
となりますが、これを$r$倍した$rS_{n}$と$S_{n}$で引き算をすると
$rS_{n}-S_{n}=ar^{n}-a$
となり、この両辺を$(r-1)$で割り算すると等比数列の和の公式が導出できます。
- 等比数列の和の公式
- $S_{n}=\displaystyle\frac{a(r^{n}-1)}{r-1}$
$\sum$(シグマ)とは?
最後に$\sum$の公式を見ていきましょう。
まずは$\sum$の記号の意味を理解するところからです。
まずはこの式を見てみましょう。
$\displaystyle\sum^{n}_{k=1}a_{k}=a_{1}+a_{2}+\cdots+a_{n}$
$\sum$は「数列の和」を簡略化して書くための記号です。
$\sum$記号の下側に小さく書かれてある$k=1$の「$k$は和を取っていく変数」、「$1$はその変数のスタート地点」です。$\sum$の上側に小さく書かれてある「$n$は変数のゴール地点」です。
なので、「$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}$は、この後にくる$k$を変数とする数列を$k=1$から足し始めて$k=n$になるところまで全て足すよ」ということを表しています。
上の例では$\sum$記号の後に$a_{k}$が続いているので、$a_{1}$から足し始めて$a_{2}$、$a_{3}$と続けていき、最終的に$a_{n}$まで全て足し終えたところまでを表していますね。
$a_{k}$ではない具体的な形が続くこともあり、たとえば
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(3k+1)$
$=(3\cdot1+1)+(3\cdot2+1)+\cdots+(3\cdot n+1)$
のようになることもあります。
覚えておくべき公式は次の5つ。
- $\sum$の公式1
- $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k=\frac{1}{2}n(n+1)$
- $\sum$の公式2
- $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k^{2}=\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$
- $\sum$の公式3
- $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}k^{3}=\frac{1}{4}n^{2}(n+1)^{2}$
- $\sum$の公式4
- $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}a=an$
- $\sum$の公式5
- $\displaystyle\sum_{k=1}^{n}r^{k}=\frac{r(r^{n}-1)}{r-1}$
導出の仕方は少し複雑なので、ここでは省略しますが、公式1は等差数列の和と本質的に同じですし、公式4と5は等比数列の和の公式と本質的に同じなことは理解しておいてほしい所です。
群数列、格子点とは?
群数列や格子点の問題は上で説明した通り、ここまでの内容が全て理解できた上で取り組む必要があります。
群数列とは?
群数列とは、数列の中でグループ(群)を作ると綺麗にまとめられるような構造を持っている数列のことです。
たとえば、
$1,2,2,3,3,3,4,4,4,4,\cdots$
という数列だと、次のようにグループ分けすると規則性が見やすくなりますね。
$\{1\},\{2,2\},\{3,3,3\},\{4,4,4,4\},\cdots$
$\{1\}$は第$1$群、$\{2,2\}$は第$2$群という風に群の番号だけでなく、第$3$群の$2$番目の項は$3$という風に、群の中で何項目にあるのかという情報も加わって来るのでかなりややこしいですね。
頻出なのは「2023などの具体的な数字が、第何群の第何項になるか計算せよ」という問題です。
解き方の手順としては、
- step1
- 与えられた数列を群に分けて第$k$群に入っている項数を$k$で表現する
- step2
- step1で求めたものの和を取って第$(m-1)$群の最後までに全部で何項あるか計算する($m$で表現する)
- step3
- 全体の数列のルールから2023などの具体的な数字が第何項になっているか具体的な数字で計算する
- step4
- step2とstep3の情報を合わせて2023などの数字が第何群に入っているか計算する
- step5
- その群の中で何項目にあたるか計算する
となりますが、ここで詳細を説明すると長くなりすぎるので具体的な例は『青チャート』などの問題集でチェックしてみましょう!
『青チャート』の使い方はこちらから。
格子点とは?
格子点とは「xy平面上(あるいはxyz空間上)で座標が全て整数になる点」のことです。
$(5,5)$や$(-3,1)$などは格子点ですが、$(\displaystyle\frac{1}{2},3)$などは格子点ではありません。
基本的には数2の範囲である「領域」の問題とセットになっていて、
「次の領域内にある格子点の数を$n$を使って表現せよ」という問題が出ます。
例えば、
「$y\leq x$、$y\geq0$、$x\leq n$を満たす領域内の格子点の数を$n$を使って表現せよ」
というような問題ですね。
こういった問題の解き方の手順としては、
- step1
- 与えられた領域をグラフで表現する
- step2
- 適切な切り方($x=k$となる直線など)をし、切り目となる直線や平面上に載っている格子点を数える
- step3
- 切り目を動かし(kに対する和を取る)、領域内の格子点を求める
というのが一般的ですが、これもここで全て説明するには長すぎるので、具体的には『青チャート』などの問題集でチェックしてみてくださいね!
『青チャート』の使い方はこちらから。
どのように学習していけばいい?
数列の勉強の手順は次の4つのステップになります。
- step1
- 公式やその導出を理解する
- step2
- 公式を使って簡単な頻出問題が解けるようになる(基本問題演習)
- step3
- 実践的な問題集を使って発展的な問題が解けるようになる(応用問題演習)
- step4
- 過去問を使って志望校にあった対策をする(過去問演習)
それぞれ見ていきましょう!
公式やその導出を理解する
数列の公式はそれほど多いわけではないですが、導出までセットで覚えるとなると「少し大変だな」と思う人も多いのではないでしょうか?
実は数列は他の単元と比べても特に、公式の導出の仕方まで覚えておいた方が良い単元です。
導出まで覚えていれば
「$n$だっけ?$n-1$だっけ?」
のような細かい部分の暗記不足も「導出の知識」で補えるからですね。
また等比数列の和の公式を導出する方法は「等差×等比数列」の和の問題(やや発展的な内容)を解くのにも役に立ちます。
さらにセンター試験から共通テストに変更したことで、問題文の文量が増え、その中には公式の導出に関係ある文章も増えてきているので、公式の導出を理解する重要性は増してきています。
教科書レベルの公式の理解や導出の理解をするためには、『スタディサプリ』のような映像授業を使うと良いでしょう。
教科書レベルの公式理解のコツはこちらの記事に詳しくまとめています!
公式を使って簡単な頻出問題が解けるようになる(基本問題演習)
公式やその導出を理解したら、次は公式を使って簡単めな問題を解けるようになるための演習をしなければなりません。
上述したように、数列ができない理由の大半は「問題演習不足」です。
学校の定期テストレベルであれば、『青チャート』で演習ができていればほとんど満点が取れるようになるでしょう。
このレベルの演習については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください!
実践的な問題集を使って発展的な問題が解けるようになる(応用問題演習)
『青チャート』レベルが十分わかるようになり、さらにレベルアップしたい場合は、『良問プラチカ』や『上級問題精講』などの発展的な問題集に取り組むと良いでしょう。
『文系数学の良問プラチカ』については以下の記事で詳しく解説しています!
https://daigakujukensenryaku.com/ma-text-bunkeipurachika/
応用レベルの問題演習については、以下の記事で勉強法を詳しく解説しているので参考にしてください!
過去問を使って志望校にあった対策をする(過去問演習)
最後は志望校の過去問を使って、徹底的に過去問演習をしていきます。
制限時間内に合格最低点を超えられるように
- 時間配分に慣れる
- 解答形式に慣れる
などが必要になってきます。
まとめ
この記事では数列の勉強法を解説してきました!
勉強のステップは以下の通りです。
- step1
- 公式やその導出を理解する
- step2
- 公式を使って簡単な頻出問題が解けるようになる(基本問題演習)
- step3
- 実践的な問題集を使って発展的な問題が解けるようになる(応用問題演習)
- step4
- 過去問を使って志望校にあった対策をする(過去問演習)
数列の基本的な用語はこの記事で理解できたはずなので、改めて映像授業などで勉強した上で、問題演習に取り組みましょう!
演習不足さえクリアできれば、数列は得意単元になるはずですよ!
もっと具体的に「このとおりに勉強すれば数学の勉強は完璧、という参考書の流れが知りたい!」という方は、ぜひSTRUXの参考書マップを活用してください!
■ 参考書マップとは? ■
STRUXの「参考書マップ」は、受験までにやるべき勉強を「順番通りに」すべて洗い出したもの。「いつまでに」「どの順番で」勉強をすればいいかがひと目で分かるので、あとはこの通りに勉強するだけ!という状態になります。
- 「どの順番で」参考書に取り組めばいいかひと目でわかる!
- 「なぜこの参考書がおすすめなのか?」「かわりに使える参考書」もすべて紹介
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