- 2025年度入試から学習指導要領の変更に伴い、各大学の入試配点や出題範囲の変更が予定されています。順次更新していますが、一部古い情報が含まれている可能性もあるので、記事の更新日を必ずご確認ください。
京都大学の物理は、東大と並ぶ最難関国立大学にふさわしく、物理への深い理解・高度な思考力・数学力が総合的に問われる難関試験。だからこそ、きちんと傾向をつかんで対策しておかないと、攻略は難しいでしょう。
この記事では、京都大学物理の出題傾向からレベル別勉強法まで、攻略に必要な情報をまとめて解説します。
京都大学の物理出題傾向
力学と電磁気はほぼ毎年出題されています。次いで熱力学・波動・原子の順に出題されやすい傾向にあります。
京都大学は出題方針として「できるだけ分野的な偏りがないように出題する」と表明しているため、受験生としても全範囲に対応できる実力を身につけておかなければなりません。
※京都大学のHPより
また京大の特徴として微分方程式(あるいは微小量)を使う誘導が多いため、過去問を活用して十分に慣れておきましょう。
力学では「糸やばねでつながった2物体の運動」、「レールに沿った円運動」、「2物体の衝突」、「抵抗を受けながらの落下運動」といった市販の問題集でもよく見られる典型的な状況が題材になることもあれば、「人工衛星と宇宙船」といった見慣れない条件設定が扱われることもあります。いずれにしろ物理現象を丁寧に把握する理解力と、煩雑な計算を行う力が要求されます。
電磁気では、「磁場中を運動する導体棒」や「コンデンサー」に関する問題が頻出です。テーマ自体は他大学でも頻出ですが、3次元で一様でない磁場が時間変化したり、コンデンサーの極板間を電子が移動したりといった複雑な現象の理解が問われます。
熱力学・波動・原子分野は、力学や電磁気ほど出題頻度は高くありませんが、どの分野から出題されてもおかしくないので、穴がないようにしっかり対策しておきましょう。近年は熱力学と波動が交互に出題されていましたが、2021年度試験では6年ぶりに原子分野が出題されています。力学・電磁気に比べいずれも対策が手薄になりがちなため、市販の問題集で標準レベルの問題を一通り網羅した上で、「京大の物理27カ年」などの過去問を活用し対策しておきましょう。
京都大学物理の各問題の特徴
大問構成はこのようになっています。
- 第1問 力学記述式設問
- 第2問 電磁気記述式設問
- 第3問 熱力学・波動・原子いずれかの記述式設問
大問3題構成で、答えのみを記入する空欄補充問題が多く、導出過程を含む記述式問題も一部出題されます。空欄補充では問題文に沿って誘導がなされるため、うまく誘導に乗って解いていきましょう。
問題文は非常に長いので、条件などの見落としがないよう注意して読み込み、自分なりに図や数式をメモしていくなどしてうまく状況を整理すると良いでしょう。
解答用紙には「下書き用」として考え方や計算を記入するスペースがあるため、過程をしっかり残しながら丁寧に解き進めていきましょう。
京都大学物理の時間配分の例
試験時間は理科2科目で180分のため、物理にかけられる時間は単純計算で90分。全問解き切るには厳しい時間設定と言えるでしょう。解ける問題を見極めてすばやく解き切り、難問にどこまで食らいつけるかが勝負の分かれ目になります。具体的には大問3題のうち2題はほぼ解き切って、残り1題は前半の基礎的な設問だけでも確実に解くことを目指しましょう。
時間配分の例
00:00 | 第1問 力学記述式設問(30) |
00:30 | 第2問 電磁気記述式設問(30) |
01:00 | 第3問 熱力学・波動・原子いずれかの記述式設問(30) |
単純計算で1題あたり30分。まず各大問の条件設定・問題文を斜め読みし、うまく誘導に乗って解けそうな問題から着手しましょう。ただし途中で手が止まってしまったら、時間をかけすぎず、潔く諦めて他の大問・他の科目へ素早く移ることも必要です。満点を取る必要はないため、時間内に自分の実力で解ける問題を確実に解くことを意識しましょう。
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京大物理で必要な学力レベル
京大物理では、すべての分野において高い完成度が求められます。丁寧な誘導があるため全く手が付けられないということはありませんが、物理現象を根本的に理解できていなければ、問題文の論理展開に付いていけません。解法パターンを暗記するだけの勉強では、太刀打ちできないでしょう。さらに京大物理ではやや面倒な計算が必要になることが多いので、過去問などを活用し、物理現象を数学を使って処理することに慣れておく必要があります。
レーダーチャート
ここでは、学習塾STRUXが使用しているレーダーチャート分析をもとに、京大の物理に必要な参考書・レベルをチェックしていきます。
京都大学のレーダーチャートはこのようになります。
すべての分野で高いレベルが求められます。京大特有の長い問題文を読み解いていくためには、物理への深い理解が要求され、解法パターンや公式を丸暗記する勉強では太刀打ちできません。
ほぼ確実に出題される力学・電磁気に最優先で取り組みつつ、熱力学・波動・原子分野も穴がないようにしておきましょう。
力学
力学はレベル4。力学は出題のバリエーションが豊富で、典型的な設定が題材になることもあれば、一般的な問題集などでは見慣れない条件設定もたびたび見られます。複雑な物理現象であっても、物体間に成り立つ関係を見抜き、運動方程式・力学的エネルギー保存則といった法則に落とし込めるかが重要になります。
電磁気
電磁気はレベル4。電磁気の分野は力学よりもイメージがしづらいため、「どういった状況のときに、どういう関係式が成り立つか」を丁寧に押さえていく必要があります。市販の問題集と過去問を活用し、あらゆるパターンの問題に触れておきましょう。
熱力学
熱力学はレベル4。熱力学第一法則・状態方程式といった基本的な法則を扱う問題や、「気体の分子運動論」といった典型的な設定での出題が多いです。設定自体は見慣れたものでも、曖昧な理解では問題文の誘導にうまく乗ることができません。問題集を解くだけで満足せず、正解した問題も含めて解説をしっかり読み込み、物理現象への理解を深めておきましょう。
波動
波動はレベル4。電磁気と同様イメージがしづらく、さらに出題回数が少ないため対策が疎かになりがちです。まずはドップラー効果や波の干渉など、基本的な物理現象を丁寧に理解し、うまく問題文の誘導に乗れるようにしておきましょう。原子分野とも一緒に出題されやすいため、過去問でしっかり出題傾向をつかんでおきましょう。
原子
原子はレベル4。出題頻度が低く、対策が手薄になりやすいため注意が必要です。京大物理で出題される問題は難易度が高く、基本問題を表面的に理解している程度では問題文の誘導に付いていけません。「京大の物理27カ年」などを活用し、昔の過去問までたどって解いておくといいでしょう。
京都大学物理が解けるようになるためのレベル別勉強法
ここからは、京都大学の物理で合格点をとれるようになるための勉強内容をご紹介します。「これから勉強を始める!」という人ははじめから進めてほしいですし、「ある程度基礎はできている!これから京都大学に特化していきたい!」という人は途中から読み進めてもOKです。
物理の基本、教科書レベルがきちんと身についているかのチェック
物理の勉強は学校の授業や定期テストに合わせて行うとスムーズです。ただし3年生の履修範囲については、学校の進度が遅いと入試対策が間に合わなくなるため、自ら予習して早めに学習を終えておきましょう。3年生の夏前には全範囲の教科書レベルは網羅できるよう、遅くとも3年生になる頃には予習をスタートさせましょう。
これまで習った範囲の復習も含め、以下の参考書で全範囲の知識の網羅と定着を並行して行います。
まず「スタディサプリ」などの映像授業を活用し、教科書レベルの基本知識を盤石にしていきます。いきなり問題を解くことはできないため、まずは映像授業と付属の問題を解くことで基礎をしっかり身につけていきましょう。
「リードα」「セミナー」などは適宜学校で配布されたもので似たようなものを使っても構いません。学校で配布されない場合、中古のものの購入や市販の「エクセル物理」などを活用しましょう。問題数が多くレベルも幅広いため、知識の定着にも入試レベルへの飛躍にも最適です。
次に進むポイント
- 物理への苦手意識はほぼなくなった
- 物理でどういう範囲があって、どんな問題が出るのか把握している
- 映像授業や学校の授業の内容はすべて理解できた
京大入試を解くための「定石」を把握する問題演習
物理では各分野に頻出の定石問題があり、定石を把握することは入試問題を解く上で非常に強力な武器になります。まずは以下のテキストで定石問題を把握しましょう。
上記2冊は、遅くとも3年生の夏休み中には仕上げておきましょう。
京大物理を攻略するためには、定量的に答えを導き出せるだけでなく、理論の面も深く理解しておく必要があります。正解した問題も解説をしっかり読み込み、物理現象を正しく把握できていたかのチェックを行い、本質的な理解を深めておくことが重要です。
また共通テスト対策として、夏休みのうちにセンター試験・共通テストの過去問を時間を計って解いておくと良いでしょう。定性的な理解を深めることができますし、本番のレベル感を早めに知っておくこともできて一石二鳥です。
次に進むポイント
- 「良問の風」で9割以上は解ける
- センター試験・共通テストの過去問で8~9割くらいは取れる
京大入試レベルまで引き上げる!入試形式の問題演習
定石問題を身につけたら、入試形式の応用問題でどんどん演習していきましょう。入試レベルの難問・複数分野の融合問題であっても、定石の組み合わせで解ける場合がほとんどなので、定石を使いこなす練習をしていきます。
ここまでの参考書をやり終えたら、遅くとも3年生の11月頃からは京大の過去問演習で総仕上げを行います。京大では目新しい設定の問題もよく出題されるため、初見の問題でも冷静に物理現象を把握できる対応力を身につけていきましょう。
共通テストについては配点が非常に低いためそこまで時間をかける必要はありませんが、第一段階選抜(いわゆる足切り)だけは注意が必要です。遅くとも12月には腰を据えて対策に入りましょう。5~10年分程度は過去問を解いておき、安定して9割以上を取れるようにしておけば大丈夫です。
- 過去問京大の物理27カ年
- 過去問赤本(5〜10年分)
赤本や「京大の物理」で、最低でも直近10年ほどの過去問に時間を計って取り組みましょう。時間内に解き切ることよりも、問題に優先順位をつけ、自分の実力で取れる最大の点数を取ることを意識してください。